乱の始まり
朝廷の対応が終わり、数日後、権中納言である鷹司政平が夜密かに本能寺を訪れ、今回の顛末を教えてくれた。
どうやら今回、朝廷内で豊嶋家からの恩恵を何も受けていない公家衆が、下向から戻った下級の公家から豊嶋家の事を聞き、大事にしたうえで仲立ちをするとの名目で自分達も甘い汁を吸おうとする者達が騒ぎだした事に端を発していたらしい。
鷹司政平が詰問に来た後、朝廷内で俺が即座に対応をし、帝に5000貫文を献上すると言った事で、一部の公家は、これで事を収めようとしたようだが、豊嶋家から何の利益供与を受けていない公家達が反対し、若干紛糾したものの、鷹司政平を始め、大物の公家が強引に反対派を抑えつけてくれたようだ。
もっとも鷹司政平から、大物の公家に根回しをする為の銭は請求されたが…。
これにより朝廷から、今回は不問にすると使者が来たが、話によると、朝廷内で親豊嶋派の公家、親豊嶋派になりたい公家、反豊嶋派の公家の3勢力が出来上がってしまったらしい。
もっとも反豊嶋派は親豊嶋派より少ないのだが、今後も何かにつけて因縁をつけてくる可能性があるので、朝廷を刺激するような事はするなと釘を刺されたのだが。
そして、数日後、大内政弘、義興親子が8000の兵を率い上洛したが、日野富子と親交があるというか、多額の金を借りている大内政弘は、中立を保つ姿勢を見せた。
日野富子がまだ亀王丸を将軍に擁立するか、足利義材を将軍に擁立するか迷っている状況なので、呼ばれて上洛したものの、どちらに付けば良いのか分からず戸惑っているらしい。
うん、借金を踏み倒す覚悟で自分の思うように動けば良いんだろうけど、流石に日野富子からの借金を踏み倒したとなると外聞が悪くなるので守護として出来ないようだ。
大内親子が上洛して数日後、日野富子から俺の元に亀王丸を将軍に擁立する為の支援をおこなうとの使者がやって来たのだが、予想通り、細川政元と共に政に関われるようにする事が条件だった。
日野富子も足利政知と面会し、これなら足利政知が将軍の後見役となっても問題なく自身が政に関われると判断したようだ。
うん、正しい判断だ!!
だが、その日野富子の決断が、夫の足利義政を始めとした足利義材擁立派の怒りを買う事になる。
そして日野富子が次期将軍に亀王丸を擁立すべく、細川政元と共に動き出した直後、事件が起こった。
日野富子が住んでいる小河御所に大内政弘の嫡男である大内義興が500の兵を率い乱入し、日野富子を討ち取り御所に火を放ったのだ。
火は折から吹いていた西風に煽られ、小河御所の隣地に建つ宝鏡寺を、更には上京の家屋へと延焼し大火となり、一時は小河御所より北西500メートル程にある帝が住まう御所近くまで迫り、公家達が帝を御所から避難させようとしたほどであった。
幸いな事に、御所にまでは火の手がまわらなかったものの公家達の怒りは、小河御所を襲撃し火を放った大内軍へと向けられた。
嫡男の大内義興が、小河御所を襲撃し日野富子を討ち取り火を放った事を知らされた大内政弘は、率いて来た手勢に、即座に火を消すよう命じ、兵達が一気に京の町に雪崩れ込んだことで、京に兵を置いていた関東の諸将達は、大内軍が攻めかかって来たと、手勢を率いて消火活動をおこなう大内軍に攻めかかる。
これに対し、京の町を火の手から守ろうとしていた大内軍は、突如襲って来た関東勢の猛攻に混乱の極みに達する。
その頃、大内政弘が本陣としている寺では、大内政弘とその側近が、嫡男である大内義興を叱責し凶事に及んだ理由を問い質していた。
「父上! これをご覧くだされ!! 足利義視様より某に遣わされた書状でございまする。 恐れ多くも日野富子と細川政元は、関東公方の足利政知と図り、将軍家を乗っ取ろうとしておったのでございまする。 坂東の東夷を従える足利政知の子が将軍となれば、逆らう者を討伐し、その土地を坂東の者に与える。 と公言していると書かれてございまする!」
「愚か者が!!! 其の方、そのような世迷言に踊らされおって恥を知れ!!!」
「父上! 世迷言などではございませぬ! この書状は足利義視様より直々に…」
「黙れ! 小童!!!!」
嫡男である大内義興の言葉を遮るように大内政弘が一喝する。
「其の方、その書状が足利義視殿よりの書状とあるが、誠に足利義視殿の書状であると言い切れるのか!? 書状を持って来たのは足利義視殿の直臣で名の知れた者が届けたのか!? 何故、当主であるワシではなく其の方に届けた!? そもそもワシに一言の相談も無く何故兵を動かした!!!!」
「そ、それは…」
「愚か者が!! 仮にその書状を送ったのが足利義視殿であったとしても、京で火を放つなど狼藉をおこなえば、書状なぞ送っていないと白を切られるであろうぞ!」
「白を切るなど…、ここに足利義視様の花押が!! それに父上に相談をしても、日野富子より多額の銭を借りている大内家が、借財を踏み倒す為に日野富子を討ったと言われることを…」
「もうよい! 黙れ! この愚か者が!! 下がって謹慎せよ!!」
怒る大内政弘に対し、なおも食い下がろうとする大内義興に謹慎を命じた直後、息を切らした伝令が駆け込んで来る。
「申し上げます!!! 火を消す為に京の町へ向かったわが軍の兵達に、坂東勢が攻めかかり、お味方壊走!!! 坂東勢はお味方を攻めた後、京の町の火消しにあたっておりまする!!」
駆け込んで来た伝令よりの報を聞き、大内政弘は浮かしかけた腰を落とし脱力する。
「これでは我らが完全に謀反人ではないか…」
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