細川政元
京 細川館
まだ昼前だと言うのに、俺の前には豪華な料理が置かれ、何処から連れて来たのか、中々綺麗な女性がお酌をしようと俺の斜め前に控えて居る。
う~~~ん、書状のやり取りは頻繁にしていたので大体どのような話をするのか分かりきってはいるのだが、俺は試されているのか?
「豊嶋殿、楽にされてくだされ。 そう構えておられては、腹を割って話す事も出来まいて」
「これは失礼いたしました。 このように豪華な膳と美女を前に些か戸惑っておりました。 無作法をお詫び申し上げまする」
「いやいや、なんとも嬉しい事を申される。 関東の大半を治める豊嶋殿にそう申して頂けると、例え世辞だとしても気分がよい」
「世辞など、とんでもない。 某は坂東の田舎者、京の雅やかな料理と女人を前に些か怯んでおりまする」
既に細川政元と、腹の探り合いは始まっている感じだ。
今朝、朝一で足利政知の元へ向かい、昨晩、細川政元とどのような話をしたのかを一応聞きだしはしたのだが、それによると、亀王丸を次期将軍にする事に関しては両者の見解が一致したらしいが、足利政知が将軍の後見となる事に関しては、難色を示されたと言っていた。
「細川様、せっかくでございますので、我ら2人、手酌で如何でございましょう。 京で指折りの美女に酌をして貰うのは嬉しい事なれど、どうも緊張してしまいまする」
「ほう。 数万の大軍を寡兵で打ち破った豊嶋殿とも思えぬお言葉だが、ゆっくり語るには女人は不要か…。 其の方、下がってよいぞ」
細川政元がそう言うと、酌をしていた女性が、一礼した後、出て行き、部屋には細川政元と俺の2人だけになる。
さてさて、これからが本番だ。
それにしても、まさか女性を使った色仕掛けを仕掛けて来るとは…。
細川政元って確か、女人を近づけないから実子がいないから、養子を3人も迎えた事で、死後の家督争いで細川家が力を失う事になるんだけど…。
その女人を近づけない細川政元が色仕掛けを仕掛けて来るとは思っていなかった。
うん、確実に足利政知は引っ掛かっていいようにされたんだろうな…。
「さて、豊嶋殿。 ここには某と其方しかおらぬ故、飾らずに申すが、亀王丸殿を将軍にするつもりではあるが、足利政知殿を将軍の後見とする事は出来ぬ」
「その訳をお教えいただけまするか?」
「訳か…。 訳は其方も分かっておろう。 あれは駄目だ。 少し持ち上げれば有頂天になるだけでなく、地に足が付いておらぬ。 そのような者が将軍の後見など出来まい!」
「確かにその通りではございますが、それ故に細川様からしたら都合が宜しいのではございませぬか? なんせ自尊心をくすぐりその気にさせれば、細川様なら容易に御せるかと。 いや、亀王丸様と共に傀儡とすれば、細川様が幕府の実権を盤石にする役に立つかと」
「そう上手くいくわけがあるまい…」
そう言い、足利政知を否定をする細川政元だが、一応は傀儡とし幕府の実権を盤石にする絵を描いているのか、若干歯切れが悪い。
「では、細川様に面白い話を一つ…。 関東公方様は亀王丸様よりも、三男の潤童子様を溺愛しておりまする。 故に、亀王丸様が将軍になった後、何かにつけて、潤童子様を将軍にする為と囁けば思い通りなるかと…」
「ほう、某も諸国の事情には詳しいが、それは初耳だ。 そうか…、亀王丸殿ではなく、潤童子殿か…。 して? 其方がそうまでして関東公方を将軍の後見にし関東から遠ざけようとする理由は何じゃ?」
う~~ん。
やっぱり見抜かれていた…。
そう、俺からしたら、関東公方である足利政知は神輿でしかなく、関東が落ち着いた事で最早用済みと言った感じだから将軍の後見役として京に残して行きたいんだよね。
「細川様は全てお見通しのようですので、噓偽り無く申しますが、ハッキリと言って面倒なのでございまする」
「面倒?」
若干思い当たる節があるのか、それでもそこまでして関東から追い出したい理由にはならないだろうと言う顔をする細川政元だが、俺の話を聞き、笑いだす。
「ふっ。 ふははははは!!!! 小さい男だとは思っていたが、そこまで小さいとは!!! それにしても、所領が無いから所領を得るのに必死になる公方など聞いた事が無い!!」
そう、関東公方である足利政知は所領という所領はほぼ持っていない。
そして、何かにつけて俺が手に入れた所領を自分の物にしようと画策するのだが、それをいちいちあしらうのが面倒だと伝えたのだが、細川政元からしたら笑い話でしかなかったようだ。
その後も、足利政知が将軍になった後の関東公方を誰にするかなど話をし理解を求める。
最終的には渋々と言った感じで、亀王丸が将軍になった際に足利政知を後見役とする事を承諾させたが、足利義稙派と争いとなった際は兵を出す事を約束させられた。
まあ予想はしていたから5000の兵を率いて来たんだけどね…。
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