入京
近江の六角家が幕府と争っていた事もあり、近江を抜けるにあたり、何かしらの妨害などがあるかと思い、多くの諸将が身構えていたのだが、流石に俺の率いる豊嶋軍5000、足利政知率いる8000、併せて13000もの大軍にチョッカイを出すほど六角家も愚かではないようで、無事近江を抜けて山城国へと足を踏み入れる。
とはいえ13000もの大軍であり、荷駄を運ぶ小者まで含めると20000近い人間が京の都へと一気に足を踏み入れれば、当然の如く混乱が予測されるうえ、寝泊まりをする場所さえ困るであろうことが予測できる。
その為、山城国に入る前、近江国大津にて3日程を留め、先触れを京の細川政元の元に送り、宿舎となる寺などの斡旋を頼み、その上での入京である。
大津に留まっている間に、足利政知が諸将を集めて、乱暴狼藉の禁止を命じていたが、特に口頭で命を伝えるだけで、罰などの話が無かったため、俺が身分に関わらず、乱暴狼藉、乱取りをおこなった者は斬首と提案したのだが、足利成氏を除く殆どの諸将が、足軽、小者に対してなら良いが、士分の者に対しては厳しすぎると反対された。
うん、理解が出来ない!!!
ていうか、反対した諸将は士分の者を統制出来ないのが分かって反対したのか?
同じ罪を犯しても、足軽や小者など身分の低い者は斬首で、士分の者には命を奪う罰を与えないのはおかしいのだが、この時代、武士…、いや力のある者が正義と言えるうえ、大身の国人衆も、ある意味周辺の盟主に近い存在であり、家臣団化出来ていない為、強気に出れないと言う事情もあるのは分かるのだが…。
既に、幕府の後継者争いに、片足を突っ込み、応仁の乱の再来状態にも関わらず、形だけの禁令を発しても守られるのは最初だけで、争いが始まれば、禁令なんて形骸化し、京に住む民がまた塗炭の苦しみを味わう事になるのが、集まった諸将にはイマイチ理解できていないようだ。
結果的に、乱暴狼藉を禁止する禁令は発せられたものの、禁を犯した際の罰は有耶無耶の状態となった。
大津に留まり、入京後の事などの話を詰めていると、細川政元より、宿舎となる寺等の割り当てが終わったとの事で、軍勢が山科を越えて京へと足を踏み入れると、各自割り当てられた寺へと手勢を引き連れ向かって行く。
因みに俺は、細川政元に頼んで、本能寺を宿舎にして貰っていたりする。
うん、本能寺の変で信長が最後を遂げた本能寺だが、実は1538年に天文法華の乱で延暦寺の僧兵に焼き討ちされていて、信長が宿舎とした本能寺は再建された本能寺だったりする。
それに、明智光秀という家臣は居ないから、謀反を起こされる心配はないはずだ…。
そして率いて来た豊嶋軍5000の内、4000は摂津石山三峯寺を宿舎とするように命を出し、摂津へ向かわせる。
4000の兵を摂津の石山三峯寺に向かわせると、畠山家とかを刺激しないか心配ではあるが、まだ幕府の後継者争いが本格化していないので、大丈夫なはずだ。
4000の兵を使い、寺の増築名目で要塞化するつもりではあるが…。
そして諸将が割り当てられた宿舎となる寺などに入った翌日、足利政知が宿舎としている清水寺へ諸将が集められ、管領である細川政元を呼び謁見をおこなう。
「関東公方様におかれましてはご機嫌麗しく…」
「うむ、大儀である。 此度、我が次男、亀王丸が天龍寺香厳院の後継者にする為に管領殿の骨折りがあったと聞き及んでおる。 改めて礼を申す」
「なんの。 亀王丸殿は関東を統一された公方様のご子息、必ずや立派な僧となりましょうぞ」
足利政知に謁見する細川政元だが、亀王丸を将軍にしようとしているなど、おくびにも出さず、笑顔で終始無難な話をしている。
まあ確かに、この場で亀王丸を次期将軍にしようとしているなどと口が裂けても言えないのは分かるが、幕府の要職である管領ともなると場を弁えているだけでなく、足利政知自体を見極めようとしているように見える。
「公方様、よろしければ、ささやかな宴の場を設けさせて頂きたく。 今宵、某の館にお越し頂き、共に酒でも飲みながら関東の話をお伺いしたく存じまする」
「何と、余の為に宴を開くとあれば、断るのは礼を失する。 是非伺わせてもらおう」
「有難き幸せ。 関東公方様を持て成せた事、末代までの誉れと致しまする」
そう言い、大仰に喜び、平伏する細川政元だが、宴に呼んだのは関東公方である足利政知だけで、密談の為に館にわざわざ宴の場を設け、足利政知を呼び出した感じだ。
足利政知と細川政元が雑談をした後、本来の目的は達したと言う顔で細川政元が場を辞す。
う~ん、明日、俺も細川政元の館に呼ばれているんだよな…。
幕府の後継者争いに巻き込まれるのはご免なんだが、足利政知が巻き込まれる気満々だし。
ここは足利政知に甘言を吹き込んでおくか。
なんせまだ若い亀王丸が将軍となったら、絶対に後見が必要になるし。
流石に関東公方の役目と将軍の後見役を両方するのは無理だから、ここは後見役に専念して頂こう。
さて、どうやってその気にさせようか…。
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