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滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


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木落し坂の戦い

地元の農民が話した通り、夜半から霧雨が降り出し、日が昇る頃には大粒の雨が打ち付け始める。


諏訪、金刺、高遠軍の陣へ夜襲を仕掛けた者達は、幾つか手榴弾を陣に投げ込んだだけで、後は火矢を撃ち込み、即座にその場を離れると、離れた場所に潜み、時間を置いて再度火矢を撃ち込んでいた。


普通なら雨の中で火矢に火を付けるのは困難な事だが、各隊にライターを持たせ、また火矢の先に巻き付けた麻布には、臭水を染み込ませているので大粒の雨が降り出すまでは難なく火を付けることが出来た。


闇夜に突然、火の光が浮かび、直後火矢が飛んで来る。

見張りの兵は、最初、何事かと思ったが、火矢が飛んで来たことで、味方に伝わるような大声で夜襲を知らせ、その度に、寝ていた兵達が飛び起きて敵襲に備えざるを得なくなるのだ。


おかげで諏訪、金刺、高遠の将兵は火矢が飛んで来る度に夜襲に備えなければならず、日が昇った頃には皆、疲れ果てた顔をしていた。


更に彼らが、干飯を口にしている所に、豊嶋軍が進軍を開始したとの報がもたらされると、即座に迎え撃つ為の支度を始める事となり、慌ただしく干飯を口に詰め込むと、武器を手に取り戦に備える羽目となった。


反対に、豊嶋軍は昨日のうちに作った小屋で炊事を行い、夜明け前に温かい汁と握り飯を兵達に配り、夜が明けると、万全の状態で進軍を開始する。


「相手の数は我らより多いが、殿より以前お聞きしたこの策、練度の高い我が軍ならば必勝は間違いない。 各々、抜かりなく手はず通りに!」


「はっ!!」


進軍を始めた豊嶋軍の各将を集め、矢野兵庫が口頭で策の再確認をおこなうと、諸将は短い返事と共に自身が率いる兵の元へ散って行く。


今回、矢野兵庫は1000の兵を100人一組にし、10の隊に分割した。

木落し坂に陣を敷く敵に対し、鶴翼の陣で下から攻め上がる構えだ。


合戦が始まると、矢野兵庫率いる豊嶋軍1000は、高台に陣を敷く諏訪、金刺、高遠連合軍に対し、攻め登る構えを見せつつ、足軽隊が装備するクロスボウで遠巻きに矢を放ちつつ、盾を前面に押し出しジリジリと前進する。


一方、高台に陣を敷いた諏訪、金刺、高遠軍は、高低差を生かし矢を放ち豊嶋の兵を狙い撃つ。


暫くの間、両軍ともに矢の撃ち合いが続くが、互いに決め手に欠ける戦いが続く。


豊嶋軍の矢は特に訓練も必要としないクロスボウの為、専業足軽の標準装備として殆どの兵が携帯しているが、射程が短く連射が利かない。


反対に諏訪、金刺、高遠軍の矢は、和弓を弓兵が引き絞り放ち続けているものの、足軽、雑兵までもが扱える代物ではない為、弓を扱う兵の数が豊嶋軍に劣っており、豊嶋軍に降り注ぐ矢の数は圧倒的に少ない。


両軍ともに決め手を欠くまま戦が推移している所、豊嶋軍の矢が先に尽き、兵達が盾に隠れながら徐々に後退を始めると、まだ矢の数に余裕のある諏訪、金刺、高遠軍は、弓兵を先頭にしながら後退を始めた豊嶋軍を追うように前進を始める。


絶妙な距離感と速度…。

豊嶋軍の兵は、指揮を執る将が出す指示の元、早すぎず、遅すぎず、それでいて距離が近づきすぎないよう、また離れすぎないように敵に合わせて後退を続ける。


諏訪、金刺、高遠軍の兵、半数程が豊嶋軍を追って木落し坂を下り切ったその時、矢野兵庫の命を受けた兵が太鼓を連打し味方に合図を送ると、先程まで後退していた豊嶋軍が一斉に喊声を上げながら突撃を開始する。


これには諏訪、金刺、高遠軍の兵達も一瞬たじろいだものの、先程まで逃げ腰だった豊嶋軍ごとき何するものぞと将が兵達を叱咤すると、一気に豊嶋軍を蹴散らすべく突撃を始め、たちまち乱戦の様相を呈す。


練度に勝る豊嶋軍400に対し、農兵を中心とした諏訪、金刺、高遠軍700。

一進一退の攻防が繰り広げられる中、矢野兵庫の命で左右から100づつの兵が乱戦に加わるべく突撃をする素振りを見せると、対する諏訪、金刺、高遠軍は一気に畳みかけようと全軍に突撃を命じる。


一進一退だった戦場が大きく傾き、豊嶋軍が支え切れずに崩れ始める様を見た矢野兵庫は、兵に命じ退却の太鼓を鳴らすよう命じると同時に、伝令を走らせ、自身は兵を率い、後退を始めた。


退却の合図を聞いた豊嶋軍の兵達だが、乱戦状態で思うように組織だった退却が出来ず、バラバラになって逃げだし始めると、諏訪、金刺、高遠軍の兵達が手柄を挙げようと我先にと豊嶋の兵に追いすがる。


背を見せて逃げる豊嶋の兵に容赦なく槍の穂先が伸び、転んだ者には雑兵が群がり首を挙げる。


敵の大将である矢野兵庫が本陣を後退させた事で、このまま一気に豊嶋軍を甲斐に追い返すだけでなく、あわよくば甲斐の一部を切り取ろうと諏訪継満(すわつぐみつ)が追い打ちをかけるよう命じると、諏訪だけに良い思いをさせてなるものかと、金刺興春(かなざしおきはる)高遠継宗(たかとうつぐむね)も追い打ちを命じる。


だが諏訪、金指、高遠の兵達の目が算を乱し逃げ出し始めた豊嶋軍400に釘付けとなっている隙に、退却の振りをし密かに、戦場の左に200、右に200の兵が伏せり、追い打ちをかける諏訪、金刺、高遠軍を待ち受ける。


壊走する豊嶋軍に追い打ちをかける兵は手柄を挙げようと獰猛な顔で追いすがる。

最早完全に周囲が見えていない将兵が喊声を上げながら豊嶋の兵に容赦なく刃を振るおうとしたその時、矢野兵庫の命で連打された太鼓の音が戦場に響き渡る。


直後、左右に伏せていた豊嶋軍が喊声を上げながら攻めかかり、先程まで後退をしていた矢野兵庫も突撃を開始する。


追い打ちに夢中になり周囲が見えていなかった諏訪、金刺、高遠の兵達は、突如として左右から現れた豊嶋軍の兵を目にし、冷や水を浴びせられたかの如く、先程までとは打って変わり、右往左往し始める。


「今じゃ!! 懸れぇぇぇ~~~!!!!」


矢野兵庫は自身が指揮する100の兵の先頭に立って突撃をすると、大将に遅れてはならぬと矢野兵庫より前に出ようと兵達が必死になって駆け出していく。


先程まで勝ち戦と思い、逃げる豊嶋勢400を追いかけていた諏訪、金刺、高遠勢は左右両側面からの攻撃に混乱し始め、それに追い打ちをかける様に、正面から大将自らの突撃を受け完全に浮き足立つ。


矢野兵庫の兵が敵軍に突入をかけると、今まで逃げていた豊嶋兵も踵を返し、反転攻勢に出る。


「懸れぇぇぇ~~~!!!! 敵の退路はお味方が絶ったぞ!! 一気に押し包み撫で斬りにせよ!!」


矢野兵庫がそう叫び、物頭達が同様に声を張り上げ兵達を激励しすると、それを聞いた味方は一際大きな喊声を上げながら浮き足立つ敵に襲い掛かる。


何処からともなく諏訪継満を討ち取ったとの勝ち名乗りが戦場に響き渡ると、諏訪の兵達が我先にと逃げ出し始め、それに釣られるようにして金刺、高遠軍も壊走を始めだす。


「追え!!!! 追って追って撫で斬りにせよ!!! 手柄は目の前ぞ!」


「追い首だろうと構わぬ! 手柄を挙げるは今ぞ!!!」


戦場に響き渡る追撃の命。

それを聞いた豊嶋兵は、騎馬隊が逃げる敵の前を縫うようにして突撃しつづけ足を鈍らせると、足軽達が足の鈍った兵達を着実に討ち取っていく。


「勝鬨を挙げよ!!! 我らの勝利ぞ!!!!!」


昼を過ぎた頃、矢野兵庫の命で追撃をしていた兵達が一斉に勝鬨の声を上げ、豊嶋の勝利を諏訪の空に響き渡らせる。


「さて、茶臼山城に籠っておる諏訪頼満(すわよりみつ)に灸を据えに行くか…。 佐久に兵を進めぬといかぬと言う時に無駄な合戦をさせおって…」


矢野兵庫はそう呟くと、副将格の荻原昌勝に合戦の後始末と負傷兵の手当てを命じ、比較的怪我の軽い者100程を連れて茶臼山城へと向かう。


「殿の言っていた釣り野伏…、これは事前に打ち合わせのみでなく調練が必要じゃな…。 聞いていた程成果が出なんだ…」


稚拙な文章ではございますがお読頂き誠にありがとうございます。

また誤字報告ありがとうございます。

本当に、誤字脱字、言い回し等、稚拙で申し訳ございません。


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― 新着の感想 ―
[一言] 釣り野伏は戦闘民族である薩摩隼人や大隅隼人でないと大成果を上げられないのか。
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