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滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


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諏訪頼満の乱

1488年10月


年始から関東の周辺が静かだった為、今年は調略や謀略を張り巡らせる一年で終るかと思っていたら、秋の刈り入れが終った頃から信濃が騒がしくなり始めた。

今年は雨が少なく、干ばつ気味であったが、ほとんどの地域が凶作にもならず、豊嶋家の財政も一息つけると安堵していたのに…。


事の発端は、北信濃に勢力を持つ、村上政国が、佐久に侵攻した事に始まる。

元々村上政国は近隣の有力国人海野氏幸を討ち取って、小県郡を手中に収めただけでなく、諏訪家や武田家と結んでは何度も佐久へ兵を出し勢力を拡大しており、今回は豊嶋家と伊勢家の調略で佐久に根を張る国人衆達に乱れが生じ、そこに付け込み、佐久に兵を進めたのだ。


恐らく裏で糸を引いているのは伊勢盛時で、伊勢の調略に色よい返事をした志賀城、城主の笠原清景(かさはらきよかげ)などの国人衆が、村上政国の兵を佐久へ引き込み、長窪城、城主の大井玄慶(おおい はるよし)を始めとした豊嶋家と誼を通じる国人衆を攻め、佐久での影響力を手に入れようと画策しているのだろうと思われる。


そして、更に厄介なのが、村上家の佐久侵攻で信濃に戦雲が漂い出した事で、あわよくば佐久の一部をと、諏訪大祝家の諏訪継満(すわつぐみつ)と、下諏訪家の金刺興春(かなざしおきはる)が、兵を集め、村上に同調する動きを見せた所で、上諏訪家当主である諏訪頼満(すわよりみつ)が、大祝家と下諏訪家に反旗を翻して兵を挙げた事だ。


上諏訪家の諏訪頼満の元には、豊嶋家に仕えたいと江戸にやってきた浪人達を昨年末頃より少しずつ送り込み、浪人を集めていることを警戒されないよう、開墾などの作業をさせていたのだが、その数が200近くとなった事で、諏訪頼満の手勢と合わせれば500程になり、大祝家、下諏訪家と対等に戦えると思い兵を挙げたようだ。


当初、不意を突かれた大祝家の諏訪継満だったが、ある程度想定はしていたのか、すぐさま下諏訪の金刺興春と高遠継宗(たかとうつぐむね)に援軍を要請し、諏訪頼満を平野部での合戦で打ち破ると、勢いに任せ追撃し、茶臼山城(後の高島城)へ追い込んだ。


本来であれば、豊嶋家が諏訪に侵攻した際に兵を挙げる事になっていたのだが、自身の力で諏訪を統一し、少しでも豊嶋家から受けるであろう影響力を減らそうと考えたのだろうが、完全に諏訪頼満の失策だ。


佐久、諏訪の動きに、報告を受けた矢野兵庫は、甲斐の国人衆へ陣触れを発すると、自身は即座に専業兵士1000を率い、諏訪に向けて躑躅ヶ崎館を出陣し、諏訪頼満の救援に向かう。


豊嶋の兵が諏訪へと進軍を開始したとの報を聞くと、茶臼山城を包囲していた諏訪継満、金刺興春、高遠継宗は、即座に金刺興春の兵300程を茶臼山城の抑えとして残し諏訪を南下して木落とし坂を中心に布陣し、矢野兵庫率いる1000の兵と対峙した。


「豊嶋の兵は1000程、対して我らは1700、兵の数は我が方が勝っておる。 ここは一気に攻め寄せ豊嶋の兵を蹴散らそうぞ!」


「あいや、待たれよ高遠殿、豊嶋は鉄砲なる物を合戦に用い、その威力は絶大と申す。 武田も穴山も豊嶋の鉄砲を前に敗れたも同然、ここは、一旦様子を伺うがよろしかろう」


「何を申す! 金刺殿! 臆したか!」


「やめられよ! 金刺殿の申す事は最もである。 だが時をかければ甲斐より援軍が続々とやって来て我らが不利となろう。 そこでじゃ、今日は様子見、いや小競り合い程度で終わらせ、明日総攻めを行う」


諏訪継満の策を聞き、金刺興春と高遠継宗が、納得したような顔をしながら頷く。


「確かに雨が降れば鉄砲なる物は使えぬと聞く。 鉄砲が使えねば豊嶋など恐るるにたらぬというわけか」


「そういう事じゃ! 天気を読むのが得意な者数名に天気を読ませたが、今宵より雨が降りだし、明日は一日中雨になると申しておった。 目の前の兵を蹴散らせば、豊嶋も諏訪を諦めよう。 それにしても頼満め! まったくもって忌々しい! 佐久に兵を入れる好機だったと言うに、これでは村上に後れを取るではないか!」


「全くですな。 いっそのこと、頼満の首を刎ね上諏訪家にどこぞより養子を迎えましょうぞ」


「うむ、それが良い。 だがその話は後日に…。 今は豊嶋を叩き潰す事が大事。 明日を逃せば援軍が到着し不利になるのは我ら。 雨天での合戦とは難儀だが、数で勝っている内に豊嶋を叩き、返す刀で茶臼山城の諏訪頼満を討ち取ろうぞ!!」



木落とし坂の本陣で、3者が軍議を開いている頃、諏訪軍と対峙している矢野兵庫も同様に主だった将を集め軍議を開いていた。


「さて、ここは一気に攻め込み、敵を蹴散らしたいところではあるが、無理に攻めれば手負いが増えよう。 大井を助けに佐久へも行かねばならぬ故、あまり兵を損したくないが…」


「なれど、早ければ明日、遅くとも明後日には甲斐の国人衆が兵を率いて参じましょう。 ここは我らだけで諏訪の兵を蹴散らし豊嶋の力を諏訪の者のみならず、甲斐、信濃の者に見せつけるが肝要かと」

 

「確かに…。 兵の数で劣る我らが諏訪の兵を蹴散らし勝利したとなれば、信濃の国人衆で去就が定かでない者共も豊嶋に靡くであろうが…。 急の出陣故、鉄砲隊を連れて来れなかったのが悔やまれるな」


そう言い、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる矢野兵庫に対し、副将格として最近付けられた荻原昌勝が、地図に目を落とし、なにやら駒を動かし続ける。


「矢野殿、恐らく諏訪方は、我らが鉄砲隊の一斉射で敵を怯ませ、その後突撃すると予測しておりましょう。 そして土地の者曰く、明日は雨が降るだろうとの事、諏訪勢は明日の合戦を挑むものと思われまするが…」


「明日か…。 このまま攻め寄せたいが、一気にここまで兵を進めたせいで兵達が疲れておる故、鉄砲隊が居ない以上、今から攻めるは愚策。 ここは明日に備え英気を養うが肝要か」


そう言う、矢野兵庫に、荻原昌勝が夜襲だけでも行うべきと提案すると、本陣に集まった諸将から批判的な声が漏れるが、その声を意に介さず荻原昌勝が策を話し始める。


荻原昌勝のいう夜襲とは、敵に打撃を与えるのを目的とせず、矢野兵庫に付けられている風魔衆20人を2人1組にし足軽10人、10組の先導役とする。

夜襲をかける足軽は、スリングショットと手榴弾のみを持ち、風魔衆の先導で敵陣に近づき、手榴弾を投げ込んだら即座に離脱するを、時差を付けて行い、一晩中夜襲に対する警戒をおこなわせると言うものだ。


結果的に、話を聞いていた諸将の多くが納得したなか、矢野兵庫に雨が降り出せば導火線が濡れ、手榴弾が不発になると指摘をされ、足軽にクロスボウを持たせ雨が降り出したら火矢を敵陣に撃ち込む事になったが、夜襲をかける足軽の選出が即座に行われ、風魔衆へも指示が出される。


「諏訪勢は我らより兵が多い故、明日の合戦は厳しいものになるだろう! だが諏訪勢は寄せ集めの旧態依然の戦い方をするはずだ。 我らは集団戦を得意としておる故、一丸となって戦うのみ!! 諏訪、金刺、高遠、いずれかを崩せば敵は雪崩をうって壊走するは必定。 各々、明日の合戦に勝利し豊嶋の力を信濃の者達に知らしめるのだ!!!」


矢野兵庫がそう檄を飛ばし軍議の場を締めると、集まった諸将は「おうっ!!!」と返し、各自の持ち場に戻っていく。


その後ろ姿を眺めつつ、「今の豊嶋家は鉄砲に頼り過ぎているのも考え物だな…」と呟き、この合戦が終われば豊嶋宗泰にその事を伝えようと心で思う。


「さて、ワシも気合を入れて合戦に臨まねばな! 鉄砲隊なしの合戦は久方ぶりじゃ! 豊嶋は鉄砲が無くても強いと言う所を見せつけねば!!」


8月~、リアルが繁忙期の為、ストックの関係で金曜日の週1回投稿となります。

誠に申し訳ございません。

10月以降には(火)(金)の週2回更新に戻すよう努力致します。


稚拙な文章ではございますがお読頂き誠にありがとうございます。

また誤字報告ありがとうございます。

本当に、誤字脱字、言い回し等、稚拙で申し訳ございません。


また、評価、ブックマークありがとうございます。

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