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滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


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諏訪の調略

諏訪家…、ややこしいので先に人物紹介等いたします。


・諏訪大社:信濃の国(現在の長野県)諏訪湖周辺4か所にある神社で、全国にある諏訪神社の総本社。

諏訪湖を挟んで上社2宮、下社2宮があり、軍神を祀るとして武将達に崇敬されていた。


大祝おおほうり:諏訪明神の依り代(神霊が宿る対象物)・現人神(生き神様)として、諏訪社(上社・下社)の頂点に位置した神職の呼称になります。


・上諏訪:大祝を中心として武士団化し、上諏訪の祭政の権を握ったが、室町時代に兵馬の惣領家・祭祀の大祝家に分かれたようです。


・下諏訪: 金刺氏を中心に、戦国期には大祝を中心として武士団化したが金刺氏は上社の諏訪家ととの争いに敗れ一部を除き他国へ落ち延びる。


・諏訪頼満:諏訪政満の次男で、諏訪家内の内乱で父と兄を討たれ10歳で家督を継ぐ。 上諏訪家当主

※武田晴信が諏訪家を滅ぼす約2年前まで存命だったそうです。


・諏訪継満:諏訪大社大祝家当主、諏訪家の内乱の際、金刺興春、高遠継宗と共に頼満の父と兄を討つ。


金刺興春:諏訪下社金刺家当主で主に下諏訪に勢力を持つ諏訪家一門。


高遠継宗:諏訪家の一門で伊那高遠を拠点とし高遠を名乗った一族。


※間違っていたらスイマセン(汗)



■信濃国 諏訪郡 某所


上諏訪にある寂れた寺に狩衣姿で現れた諏訪頼満(すわよりみつ)は、みすぼらしい小坊主に案内され、寺の一室に通される。


頼満が部屋に入ると、壮年の男が笑顔を浮かべながら軽く会釈をし、笑顔で頼満を出迎えた。


「お初にお目にかかりまする。 某は、豊嶋家家臣、山口高忠と申しまする」


「お初にお目にかかる。 同じく豊嶋家家臣、荻原昌勝と申しまする」


「私が、諏訪頼満だ。 こちらは守役の守矢頼真だ」


「守矢頼真にござる」


互いに名乗り、簡単な挨拶を終えると、小坊主が持って来た白湯を一口飲んで口を湿らせると、頼満は雑談に興じることなく即本題を切り出す。


「豊嶋家当主、豊嶋宗泰殿は、某と盟を結びたいと申しておると聞いたが、相違ないか?」


「恐れながら、盟を結ぶ事は望んでおりませぬ。 諏訪頼満殿を助け、諏訪家を一つにする事を条件に豊嶋家への臣従を求めておりまする」


「おのれ!! 若を愚弄するか!!!」


山口高忠の供として密談の場にやって来た元武田家家臣の荻原昌勝が何の臆面もなく、豊嶋家の助けで諏訪家を統一させる見返りに諏訪頼満に豊嶋家へ臣従せよと言うと、頼満の守役である守矢頼真が激怒し、太刀に手をかける。


「頼真、やめよ!」


諏訪頼満の一喝で、渋々と言った感じで座りなおす守矢頼真だが、鋭い視線で山口高忠を睨んでいる。


「昌勝殿、上諏訪家の棟梁である私に、諏訪統一の手助けをするから豊嶋家に臣従せよとは、私を馬鹿にしているのか?」


「馬鹿になど致しておりませぬ。 なれど…」


「なれどなんだ!! 無礼であろう!! 武田が滅びたら、途端に豊嶋に尻尾を振る男が…」


「頼真、やめよと申しておろう!!」


荻原昌勝が話し始めた途端、敵意を見せ、暴言を口にする守矢頼真を再度一喝し黙らせた諏訪頼満が続きを話すよう促すと、今度は山口高忠が後を引き継いで口を開く。


山口高忠は、現在、上諏訪家が置かれた状況を的確に指摘する。

上諏訪家は、同じ一族である諏訪継満(すわつぐみつ)(諏訪大社大祝家)、金刺興春(かなざしおきはる)(諏訪下社金刺家)、高遠継宗(たかとうつぐむね)(高遠城、城主)に父と兄を殺された事で、上諏訪家の家督を継いだものの、実際は諏訪継満の傀儡であり、所領の大半を横領されており、頼満自身も諏訪継満が付けた家臣に監視されている状況で、守矢頼真の家臣、数人を供にして鷹狩を装わなければ、密談もろくに出来ない。


それに加え、同族であるが故、上諏訪家を滅ぼさず、諏訪頼満に家督を継がせ傀儡としたものの、もし反抗の兆しが見られれば、即座に討たれ、上諏訪家に諏訪大社大祝家より養子を送り込まれる。


諏訪頼満の父と兄を合戦で討ち取った後、上諏訪家を頼満に継がせたのは、ただ単に、3家がそれぞれ養子を出し上諏訪家の家督を継がせると言い出した事で、収拾が付かなくなるどころか、争いに発展しかねない状態となった。

そこで折衷案として3者は、諏訪継満が後見をし、所領の一部を金刺興春、高遠継宗が管理するとの事で話を纏め、当時、若干10歳だった宮法師丸を元服させ頼満と名乗らせたうえで家督を継がせたと言った経緯があった。


故に、諏訪頼満は形式上、上諏訪家の棟梁だが、実権を諏訪継満に握られ、父と兄の仇の言いなりになっているのだ。


そんな状況に置かれた諏訪頼満を豊嶋家が支援し上諏訪を取り戻すだけでなく、諏訪大社大祝家、諏訪下社金刺家を討伐し諏訪家を一つに纏める。

その上で、諏訪家の行く末を諏訪頼満に決めさせる。


諏訪頼満には、豊嶋家の支援を受けて諏訪家を統一した場合の選択肢は2つに聞こえる。

豊嶋家に臣従し、家臣となって各地を転戦するか。

武家としての諏訪家を廃し、諏訪大社の大祝として上社、下社を統括する家となるかだ。


当然、前者を選べば武家としての諏訪家を保てるが、諏訪大社とは切り離される。

反対に後者を選べば、社領は与えられるが、武家としての諏訪家は無くなり、諏訪大社の運営のみを行う事になる。


豊嶋家の支援を受けず一人で抗うと言う選択肢もあるが、今の諏訪頼満には抗う術がない為、実質、諏訪継満が死ぬか家督を嫡男に譲るまで傀儡とされる。

もっとも、諏訪継満が急死せず、平和的に家督を嫡男に譲って隠居した場合などは、上諏訪家は諏訪大社大祝家の言いなりにされる可能性が高いのだ。


「先の合戦においても、被害を受けたのは、甲斐より落ち延びた国人衆の兵と上諏訪の兵であったと聞いておりまする。 このまま諏訪大社大祝家や諏訪下社金刺家の言いなりとなり上諏訪に住む者の血を流させるおつもりか? いや、いずれ上諏訪家は諏訪大社大祝家や諏訪下社金刺家のどちらかより養子を送り込まれ乗っ取られる。 それでも良いと?」


「山口殿の、いや豊嶋殿の見立ては正しい。 私も今の状況が良いなど微塵も思っておらぬ。 だが豊嶋殿の条件は呑めぬ。 武家として諏訪家を残せば諏訪大社との繋がりを切る事になる。 反対に諏訪大社を取れば、家臣達が納得せぬ」


「そのような事で悩んでおられたので? 我が主は、諏訪を統一した後、混乱を避けるために、一旦、諏訪頼満殿に諏訪大社の大祝になり、武家としての諏訪家と社家の諏訪家、両方を纏めて頂く。 社家は、男児が産まれた際に家督を継がせれば良いと申しておる。 選ぶ道は2つではござらん。 某の伝え方が稚拙故、分かりにくかった事、お詫び申し上げる」


「話は分かった。 だが私が豊嶋殿の力を頼らぬと申せば如何する?」


「その際は、豊嶋の兵が諏訪家を滅ぼしまする。 いや、諏訪の家は滅びませぬな…、我が主には弟君がおられまする故、諏訪を攻めた際に、諏訪家に連なる者を当主に仕立て、養子として弟君を送り込み諏訪家を名乗らせる事になりましょうな…」


「なれば、私が豊嶋殿に従ったとしても、弟君を養子にせよというのではないか?」


「それはございませぬ。 豊嶋家はこれより更に大きくなり申す故、弟君を養子として送り込むお家は多々あり申そう。 あくまでも諏訪家が一丸となって豊嶋と争い滅んだ際に取る選択肢の一つにござる。 まあ、あるとしたら、いずれ頼満殿に嫡男がお産まれになった際、我が主に同年代のご息女がおれば、婚姻を結んで頂くかもしれないと言ったところでござろう」


「そうか…。 一考には値する話だな」


「若!!」


「頼真、安心せよ、私は一考に値するとしか申しておらぬ。 山口殿、しばし時を頂きまする。 聞けば甲斐を手に入れた豊嶋家は、疫病と飢饉に苦しむ甲斐の民を助ける為に色々なされているとか。 信濃に手を出す余裕があるとは思えぬ。 諏訪家を割って力を削ぐ為の甘言とも限らぬ。 しばし見定めさせてもらおう」


「承知いたしました。 我が主もその場で答えが出るような話では無いと申しておりました故、本日はこれにて失礼仕る」


そう言い、山口高忠と荻原昌勝が頭を下げて場を辞すと、諏訪頼満は大きなため息をつき、白湯を口に運ぶ。


諏訪頼満…。

史実では諏訪地方を統一し、諏訪家の最盛期を築く男だが、本人はそのような事はつゆとも知らず、人生で最大の選択肢を迫られていた。


「同族に滅ぼされるか、豊嶋家に滅ぼされるかを選べか…」

稚拙な文章ではございますがお読頂き誠にありがとうございます。

また誤字報告ありがとうございます。

本当に、誤字脱字、言い回し等、稚拙で申し訳ございません。


また、評価、ブックマークありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうせ日和見して徒に時間が過ぎるだけなので、わざと「上諏訪が武田から誘いを受けているらしい」という噂を下諏訪に流してやったらどうでしょうか。 それを知った下諏訪や高遠は、上諏訪をこのまま傀儡…
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