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滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


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真里谷信興の苦悩と里見成義の野心

■真里谷城 真里谷信興(まりやつ のぶおき)


里見成義の配下となり、里見家を監視するよう豊嶋宗泰に命じられ、かつての居城であった真里谷城を里見成義さとみ しげよしより返還された事で、真里谷信興は居城を真里谷城に移していた。真里谷城の主殿にある一室にて信興は豊嶋宗泰の近習として仕える嫡男、真里谷信勝より送られて来た書状を何度も読み返していた。


「はぁ~、甲斐は豊嶋が治める事になったか…。 所詮、甲斐源氏である武田宗家としてなど…」


信興は書状をたたみ、これで何度目かの深いため息をつく。


書状には甲斐の疫病、飢饉には目を覆うばかりで、ひとたび大雨が降れば川の水が溢れて田畑が流されるとある。この対応のため豊嶋家が甲斐を統治すると宣言し、飢餓対策として、米と穀物を対価に甲斐の領民を人夫として雇い、堤の建設や道の整備、用水路の整備に加え農地開発を行っていると書かれていた。


信興は、豊嶋家が甲斐を攻め取ったら自分達が甲斐へ移り、そこで真里谷から武田に名を改めて甲斐を統治出来るものと思っていた。


だが現実は、甲斐を攻め取った豊嶋宗泰は、甲斐の統治を豊嶋家が行うと宣言し、領民を人夫として大量に雇い、領内の整備とともに、飢饉対策を行っている。


これまで甲斐の者達は、守護の武田家を始めとする国人衆達のような簒奪者によって年貢を取り立てられるのみならず、合戦となれば農民達を駆り集め兵として戦わられるばかりであった。しかし豊嶋家の統治を受けたことで今では豊島家を神仏のように思っているはずであり、そんな地に自分が行き新たな守護だと言っても、領民が従うとは思えない。


ワシは、豊嶋宗泰に謀られたか…。

嫡男を近習にとは言うが、実際は体のいい人質同然。 信勝よりの書状では、人質のような扱いはされず、それどころか、文武両道の将になれるようにと、月の半分は豊嶋の学問所で様々な事を学んでいるとあったが。


「手柄か…。 ワシに与えられた役目である里見成義の監視だが…。 そうか!!」


部屋に置かれたを火鉢の炭を眺めながら、独り言を呟いていた信興は、はっとした表情となる。


里見だ!!

何故、豊嶋宗泰は、豊嶋家への臣従を申し出たワシを里見成義の家臣とした?

何故ワシに、豊嶋宗泰は、甲斐武田家を継がせるなどと言った?

何故ワシに、豊嶋宗泰は、里見成義の監視を命じた?


何故ワシは気が付かなかったのだ!

いや甲斐を与えられ、甲斐武田宗家とすると言われ、舞い上がってその事が頭を占めて完全に豊嶋宗泰の真意を見落としていた!


甲斐の統治に武田の名が必要ならまだしも、今の甲斐を統治するのに武田の名は必要ないのだ。

それならば、手柄の無い者を取り立てる理由などどこにもないではないか。


「ふっ、ふっふははははは!!!! そうか! そういう事か!! 何でもいい! 豊嶋宗泰の意を汲み事を成せばいいのだ!! 何故そのような簡単な事に気が付かぬとは!! ふっ、ふっふははははは!!!!」


火鉢の中で赤く光る炭に、信勝から送られた書状を近づけると、書状に火が付き燃え始める。

紙を侵食するかのように燃える火を眺めながら、真里谷信興は狂気の笑みを浮かべていた。


■安房国 館山城 里見成義(さとみ しげよし)


「そうか、真里谷信興が動き出したか…」


「我らの調略に応じた者、そして真里谷に調略された風を装っておる者よりの報告によれば、殿の周辺を念入りに嗅ぎまわっているとの事。 どうやら豊嶋家と里見家を争わせようとしている様子…」


「ふん、豊嶋と争わせようとか…。 確固たる証拠があれば、それを口実に真里谷を攻め滅ぼす事も出来るが…、流石にこれだけでは攻める口実にはならんな」


館山城の一室で、家臣の中里実次より真里谷の動向に関する報告を受けていた成義は、そう呟くと脇息に身体を預けため息をつく。


成義は、豊嶋宗泰より真里谷信興を家臣にしろと言われた際、宗泰はこれ以上所領を広げる事の出来ない里見への配慮として、真里谷を里見の家臣とし、監視下に置く事で、謀略をもって真里谷を攻める口実を作ったうえで攻め滅ぼし、その所領を里見の物として良いと言っていると思っていた。


だが実際には、真里谷信興はこれまで所領の安定化を図るだけであり、怪しい動きと言っても里見に従う国人衆の一部に調略をかけた程度で、それ以外に主だった動きは無かった。


反対に成義も、真里谷の家臣などを調略し、真里谷家内部の情報を入手していたが、そこから得られた情報程度では、攻め込む口実にならず悶々としており、最近では、調略した真里谷の家臣が、実は調略に応じた振りをしているのではないのかと疑心を抱き始めていたのだ。


「多少強引でも構わぬ。 なにか真里谷を焚きつける方法は無いか?」


「強引にと言うことでなら真里谷を焚きつける策はございますが、豊嶋家に確認をしてからでないと、反対にその事を口実に真里谷領を豊嶋家に取り上げられませぬか?」


「ワシは豊嶋宗泰の家臣ではない!! 確かに一国人衆であったワシが安房と上総の一部を治める大身となったのは豊嶋の支援があったからではあるが、今までの働きで借りを返しておる。 今の里見は豊嶋と対等ぞ!」


「されど豊嶋家がそのように思っているかどうか…。 実際に豊嶋家は真里谷を家臣にするよう殿に命じておりまする。 それに甲斐を手に入れたら真里谷を甲斐に転封すると聞いておりましたが、全くその気配はございませぬ」


中里実次の言葉に、成義の顔が歪む。


安房と上総の一部を領するようになった里見成義は、豊嶋家とは対等な立場であると思っており、豊嶋家の手を借り手に入れた領地ではあるが、相応に豊嶋家の苦境を助けて来たという自負がある。

にもかかわらず家臣扱いされているなど、成義の矜持がそれを許せないのだ。


「ワシは…、いや里見は豊嶋の家臣ではない!!」


「なれど、殿がこの先手に入れる事が出来るのは、真里谷が治める地のみ、それ以上の地を望むとなれば、豊嶋に従い兵を出し手柄を挙げるか、それとも豊嶋家と…」


「くっ!! ワシに豊嶋の家臣となり顎で使われろと申すか!!」


「それにつきまして、駿河の伊勢より書状が届いておりまする」


そう言って中里実次は懐から一通の書状を取り出して成義に手渡す。


「伊勢盛時か…。 駿河を乗っ取り今川を滅ぼした幕臣であろう。 確か豊嶋と争っておるであろう。 その伊勢がワシに…」


書状を手に取り読み進めるうちに成義の顔から険しさが消えてゆき、次第に歪んだ笑みを浮かべだす。


「実次! 真里谷の監視は続け、動きがあればすぐに知らせろ! ワシは暫く大人しくしていようぞ!」


「ははっ」


成義の命を受け、平伏するとその場を辞す。


「ふっ…。 ふっはぁははははは!!!!」


一人になった成義は、歪んだ笑みを浮かべながら、再度書状を読み返す。


「ふっ! 伊勢盛時。 面白い男だ! だが思い通りに事を運ぶ事が出来るか、手並みを確と見させてもらうぞ…」




稚拙な文章ではございますがお読頂き誠にありがとうございます。

また誤字報告ありがとうございます。

本当に、誤字脱字、言い回し等、稚拙で申し訳ございません。


また、評価、ブックマークありがとうございます。

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