表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/190

青銅製の鉄砲

1487年7月


農繁期が終わると、諏訪一帯を治める諏訪家を始めとして信濃の国人衆が、甲斐より落ち延びた大井、今井の所領奪還を大義名分として甲斐に攻込んで来た。


もっとも諏訪を始めとした信濃の国人衆達にとって、本当の目的は豊嶋が堤建設や治水工事の人夫として雇った者達に対価として渡す米や穀物が目当てであり、狙いは、大井、今井の居城ではなく、米や穀物を保管している韮崎にある蔵館だったこともあり、豊嶋に従属した国人衆の城や館を攻めることなく進軍を続ける。


だが、信濃の国人衆や、大井、今井にとって最悪だったのが、丁度兵を進め長坂に至った時、野分が甲斐を通過した事だ。

暴風雨で進軍が出来なくなったことに加え、火を起こす事も出来ず、また干米等も雨により保存食としての体をなさなくなった。


周辺で乱取りをおこなおうにも、飢饉で村々には、僅かばかりの食料しか無く、また甲斐を追われた国人衆達の旧領という事もあり、派手に乱取りを行う事が憚られた事で、長坂まで進軍したところで完全に足が止まった。


その間、躑躅ヶ崎館を出陣した矢野兵庫は、暴風雨の中、長坂まで強引に兵を進めると、野分をやり過ごしたものの、兵糧などを早急に手に入れようと慌てて進軍の支度をしている敵に襲い掛かった。


数では矢野兵庫が2000、諏訪を始めとした信濃勢は4000と倍近い兵力差ではあったが、農民中心の信濃勢は、奇襲をされた格好となり、総崩れとなった。


何故、豊嶋家が統治を始めて間もない甲斐で奇襲が成功したか。

それは、堤建設や治水工事と銘打って行った公共工事で人夫として働けば食べ物が対価として与えられるだけでなく、仕事の内容も長年苦しめられていた水害対策の堤建設や、新たに田畑を開けるようにする治水工事とあって、豊嶋家が甲斐の農民達から新たな統治者、それも善政者として受け入れられていた事による。


信濃に落ち延びた大井や今井を始めとした国人衆は、旧領に人を送り、兵を募ったが、そもそも男手は人夫として出払っているうえ、村に残っている者も、統治者が元に戻ば、また飢えに苦しむ事になると思い、非協力的であった。


因みに矢野兵庫とその兵が一気に兵を進める事が出来たのは背景には、躑躅ヶ崎館を出発点にして道の整備をおこなっており、北杜まで整備が進んでいたからだ。


総崩れとなった信濃勢は、容赦なく追撃をする矢野兵庫とその兵に、信濃の諏訪郡、富士見まで追い立てられ、1000近い死傷者を出す大敗北となった。


うん、甲斐に手を出したら叩き潰すよ!

矢野兵庫が全力で…。



■沼田城 長尾景春


「それにしても、道づくりを優先し、力では無く、調略で越後に至る道筋の国人を配下にせよとは…、何ともまどろっこしいと言うか…」


「宗泰殿、いや殿の命じゃ、恐らく越後に入れば嫌でも合戦となる。 それまでは無駄に兵を損じるなという事であろう。 それに越後との行き来がしやすくなれば商人も商いがしやすかろう」


沼田城の矢倉の上で、上野国旗頭として第五軍団の大将に命じられ、越後攻略を命じられた長尾景春が、副将として付けられた、土屋元親と共に越後の方を眺めながら話している。


因みにもう一人の副将として付けられた肥田氏本は、道の整備の監督と国人衆の調略の為、沼田城を留守にしていた。


「それにしても、越後が米処となるとは誠か? 雪深き地であり、平野も水はけが悪い土地であると聞いておる。 水田は泥沼のようであるともな。 そこに手を加えるとは…」


景春は何度か越後に行ったことがあり、今でいう越後平野が湿地帯であるだけでなく、ひとたび大雨が降れば田畑が水に浸かる事を知っていたので、宗泰が、その地を干拓し米処とすると言う話は夢物語のように思えていた。


「確かに殿の言われる事は奇天烈すぎて某には分からぬことばかりでございますが、意外と事が上手く運びますれば、某は従うのみでございます」


「ふっ! 亡き父も虎千代は虎千代はと申しておった。 今の殿を見せてやりたかった。 武蔵の一国人が今では関東に覇を唱える大身となったのだ。 泣いて喜んだであろうな…」


景春は無き父、長尾景信の面影を思い浮かべながらそう呟く。



■古河城


「今すぐ出陣し、佐竹を攻める岩城常隆(いわきつねたか)を成敗すべきでござる!!」


「お待ちくだされ! 尊成殿! 佐竹を助けるは良いが、陸奥国に兵を進めれば、新たな混乱を生みましょうぞ。 出陣し岩城を追い払ったら兵を引くべきにござる」


「いや、梁田殿! それでは我らが兵を引けばまた岩城が佐竹を攻めようぞ。 ここは岩城常隆の居城である大館城(おおだてじょう)(福島県いわき市内郷御台境町付近)を攻め、屈服させるがよろしかろう。 この野田成朝、先陣を務め見事岩城を打ち破ってご覧にいれまする」


「野田殿! 陸奥を始めとした奥州は血の繋がりが複雑な地、岩城を攻めるとなれば無用な混乱が生じましょうぞ。 それに兵糧を始め、兵を出すとなれば金がかかる。 今の我らに、陸奥の大舘城まで攻め込む余裕などない」


「そ、それは、みしゅ…、いや何でもござらぬ。 なれば、梁田殿は岩城が佐竹を攻める度に兵を出すしかないと申されるのか?」


「そうは申しておらぬ、常陸より岩城を追い払った後、和議を結び常陸を諦めさせるのが良いと申しておる」


事の発端は、岩城常隆が佐竹領へ進攻した事で、佐竹と岩城が争いを始めたのだが、合戦につぐ合戦で佐竹家が疲弊し思うように兵が集まらなかった事で、岩城を押し返す事が出来ず反対に押し込まれ始めた、佐竹義治(さたけ よしはる)が成氏に援軍を要請したのだ。


古河城の広間に集まった者達が、足利尊成を中心に膝を突き合わせ、喧喧囂囂と、古河足利家の重臣達がそれぞれの考えをぶつけ合う。


「このまま話し合っても結論は出まい。 皆がそれぞれ申す事は一理あり、間違ってはおらぬ。 だが余に臣従して間もない佐竹よりの援軍要請を無視するわけにはいくまい。 そのような事をすれば、常陸、下野で余に臣従した者達より信を失う。 なれば出陣し岩城を追い返すしかあるまい」


「恐れながら申し上げます。 岩城を追い返すは容易き事と存じますが…」


「分かっておる。 追い返しても、我らが兵を引けばまた攻めて来ると申すのであろう。 故に岩城が暫く常陸に兵を進められないよう徹底的に叩く!! 幸い数日中に豊嶋宗泰より鉄砲が200程届く事になっておる」


成氏の言葉を聞き、鉄砲の威力を知っている重臣達がどよめくが、野田成朝が難しい顔をしながら成氏に疑問を呈す。


野田成朝の疑問とは、豊嶋と手を組んだからといい、一丁作るだけで金も時間もかかる鉄砲を200丁も送ると言う事は、古河足利家が相応の対価を支払ったか、それとも支払う約束をしたのかという事だった。


「その心配はない。 送られてくる鉄砲は試作の品で10回は安全に放てるが、10回以上は危険、15回以上はどうなっても知らん、と言う代物だ。 何でも敵に奪われてもいいように青銅を鋳造し作ったものらしく、使い終わったら返す事になっておる」


「10回以上は危険とは…、そのような物を送りつけるとは!!」


集まった重臣達が怒りを露わにし、床を叩くが、成氏は落ち着いた様子で、諭すように重臣達に説目を始めた。


そう、今回、豊嶋家が鉄砲を送って来たのは、試作品の実験を古河足利家にさせる訳ではなく、現在豊嶋家で量産している、青銅製の鉄砲を各家に貸し出す事で、戦力を底上げするだけでなく、金をかけて鍛造した鉄砲制作が馬鹿らしくなるように仕向けると言う思惑である。

もっとも古河足利家に関しては、常陸と下野を安定させると共に奥州の国人達に力を見せつける事で、抑止力とする為でもある。


青銅を鋳造して作った鉄砲は、鉄を鍛造した物に比べ重量があり、かつ耐久度が低い。

その代わり、10回放ったら再度溶かして鋳造しなおし再利用が可能となっている。


造りも鍛造の鉄砲に比べ単純化されているので、青銅製の鉄砲を複製するのはそこそこ容易ではあるが、青銅製を見本にして鉄を鍛造して作る鉄砲を作ろうとしたら困難を極めるはずだ。


この鉄砲を安定的なサイクルで供給をし、鍛造製の鉄砲において豊嶋の優位性を保つ。

我ながら考えたものだ。


万が一、敵対する事になっても、使用回数に制限のある青銅製鉄砲が相手なら長期的に見て豊嶋が有利になる。

因みに火薬は各家に売っているので、豊嶋家の収入源の一つにもなる。


秩父郡を風魔衆の者達に与えたので硝石の生産量が飛躍的に増えるうえ、他家に製造方法が漏れる可能性が低くなったのも大きい。


硝石に椎茸、そして秩父の鉱山、豊嶋家の収入が増えるだけでなく、風魔衆の増強にもなるから良い事尽くしだ。


だがそんな俺の思惑を知りもしない古河足利家の面々は、多くの者が鉄砲の一斉射による被害を身に染みて知っている為、青銅製とはいえ200丁の鉄砲が手に入った事で岩城常隆を鎧袖一触に出来るという雰囲気になっていく。


養父上(おちちうえ)某を大将に命じてくだされ。 岩城を足腰が立たなくなる程痛めつけて常陸から追い出してご覧にいれまする!!」


足利尊成がそう願い出ると、成氏は頷き、鉄砲隊200を含めた、1200の兵で佐竹の元に援軍として向かい、岩城勢を蹴散らしてくるよう尊成に命じる。


「尊成!! 岩城常隆を常陸から追い出してまいれ! 岩城に、そして佐竹を始め常陸の国人衆に古河足利家の力を見せつけるのじゃ!!」


「おうっ!! 吉報をお待ちくだされ!!」


成氏の方に向き直り、軽く頭を下げると尊成は、出陣の支度をする為に広間を出て行く。


そして2日後、足利尊成を大将とし副将に野田成朝を据えた1200の兵が佐竹への援軍として古河城を出陣する。


「それにしても…、あの陣羽織はどうにかならんのか…。 いささか歌舞伎過ぎであろう…」


「豊嶋宗泰殿より送られた鎧甲冑と陣羽織を尊成殿はいたく気に入っておりますれば、恐らくどうにもならないかと…」


出陣する尊成を見送る、足利成氏と簗田成助はため息をつく。

若い者の好む物は分からんと言わんばかりに…。




稚拙な文章ではございますがお読頂き誠にありがとうございます。

また誤字報告ありがとうございます。

本当に、誤字脱字、言い回し等、稚拙で申し訳ございません。


また、評価、ブックマークありがとうございます。

評価を頂けると大変励みになります。

是非↓の★★★★★にて評価をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 鉄砲だけ送ってどうするんだ? 鉄砲兵200ならわかるけど。 使えないのでは?と思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ