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滅亡回避し栄華を手に! 名門だけど滅び歴史に埋もれた豊嶋家の嫡男に転生したので天下統一を目指します。  作者: 武雅


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柏尾の合戦

1487年4月


関東では農繁期を迎えだす頃、俺は甲斐を攻める為に6000の兵を率い江戸を出陣し、途中相模で矢野兵庫率いる第七軍2000を糾合し8000となった兵で小山田領内を通過していた。


何故急に甲斐攻めをおこなう事になったのか…。

それは小山田信隆(おやまだのぶたか)よりもたらされた報告を聞いた俺が、風魔衆を使い裏取りをさせた所、穴山の裏切りが分かったからだ。


伊勢盛時が、甲斐の武田家と有力な国人衆へ調略の手を伸ばし、駿河攻めの助攻として甲斐の兵を富士郡、駿東郡へ攻め込ませようとしていた事は事前に察知していた。豊嶋家としてはそれを阻止すべく、穴山に対し、小山田家を通じて兵糧を支援し武田信昌(たけだのぶまさ)の所領を荒らし、武田が兵を出せないように手を打っていた。


豊嶋家より届いた兵糧を穴山の元に届けに行った小山田信隆の家臣が違和感を覚え、小山田家に戻ってそれを伝えた。最初は半信半疑だった信隆だが、手の者を使い密かに調べたところ、既に武田信昌と穴山信懸(あなやまのぶとお)は密かに和議を結んでいるらしいことが確認された。穴山の兵が乱取りを行う村に武田が木屑の入った米俵などを運び込み、穴山はそれを奪って兵を引く、そして武田の兵が報復の乱取りを行う予定の村へそれを運び、武田に奪わせる、という馴れ合いのような事を行っていた。


風魔衆が調べたところ、伊勢盛時の調略の手は信濃まで伸びており、諏訪を領する諏訪氏、佐久を領する大井氏に、武田と穴山の和睦を斡旋させていた。


伊勢の入れ知恵か、穴山の悪知恵か、豊嶋家は裏切った穴山にせっせと兵糧を支援していた事になる。


当然、その事が発覚した時点で兵糧の支援を止めたうえで、小山田信隆に対しては、武田、穴山の侵攻に備え所領の防備を固めるよう命じた。


小山田領への侵攻は無かったものの、事が露見したと悟った穴山信懸(おやまだのぶとお)は、開き直って伊勢盛時と頻繁に使者のやり取りを始めたのだ。


怒るよ?

少なからぬ量の兵糧を報酬として送っていたにも関わらず、密かに武田と和議を結び、馴れ合いの乱取りを繰り返していたとか…。

それに気づくのが遅れた俺にも非はあるが、思い出しただけで、沸々と怒りが込み上げてくる。

年が明け、常陸半国と下野を成氏が統一し、先月には呂宋から戻った船が、ゴムの木の苗を持ち帰った事に対し、上機嫌で豊嶋諸島(小笠原諸島)でサトウキビと一緒に栽培をするよう命じた所だったというのに。


この怒りは何処にぶつければ…

そうだ、裏切り者の居る甲斐を攻めよう!!


という事で、農繁期を迎えた4月に甲斐攻めを決行したのだ。


駿河の太田道灌には、富士川を渡河し蒲原城(静岡市清水区蒲原城山)を攻める構えを見せて伊勢が甲斐に援軍を送れないよう牽制するように命じ、伊勢の動きを封じる。


これで甲斐の武田、穴山の元に駿河からの援軍は来ない。

諏訪も、大井も農繁期という事もあり、援軍を出し渋るはずだ。


小山田信隆が1000の兵を率い参陣した事で、甲斐に入った時には9000の兵となった豊嶋軍は穴山信懸を攻める為に、兵を進めた。すると小山田家の動きから、豊嶋の侵攻を知った武田、穴山が中心となり、甲斐各地の国人衆に対し、甲斐へ乱取りに来た豊嶋を討つべし、と声をかけ6000程の兵を集めて柏尾(山梨県甲州市勝沼町勝沼付近)に陣を張ると、迎え撃つ構えを見せる。


■豊嶋軍 本陣


「何卒、某に先陣をお任せくだされ!!」


「いや、我ら第七軍が先陣を務めたく!!」


広げられた地図に、物見より戻った近習の者が、敵軍の配置通りに駒を置いていると、小山田信隆と矢野兵庫が、勢いよく先陣を申し出た。


「この小山田信隆、率いてきた兵は1000と少のうございますが、甲斐の地理にも詳しく、武田、穴山等に遅れを取りませぬ。 是非とも我らに!!」


「待たれよ、小山田殿、確かに貴殿は甲斐の地理にも詳しかろうが、率いてきた兵の半数は農民であろう。 農繁期であるにも関わらず、多くの兵をお出しいただき感謝するが、死傷者が出れば今後に障りが御座ろう。 ここは某に先陣をお譲りくだされ!」



甲斐での合戦という事もあり、先陣を務めて小山田家の武威を示したい、小山田信隆と、農兵が混じっている事で死傷者が出ると小山田家の損失が多くなると心配しつつ、実は今すぐにでも兵を率いて突撃をしたい矢野兵庫が、先陣を巡ってお互いを思いやっての事と言わんばかりの内容を口にしながら争っている。


「先陣は矢野兵庫に命じる。 小山田信隆は右手に見える小山に布陣をし、豊嶋家の戦い方を学んで頂きたい」


「先陣、しかと承りました!!」


嬉々とした表情を浮かべる矢野兵庫だが、反対に山に布陣し戦いを学べと言われた小山田信隆は、自身が…、そして小山田家が合戦を知らないと言われているかのような感覚を覚え、なおも食い下がる。


「信隆。 大田道灌より小山田家の武威は駿河であった合戦の報告と共に聞いておる。 だが豊嶋家の戦い方は、恐らく小山田家を始め、日ノ本全ての者の戦い方と違っておる。 此度の合戦では矢野兵庫の戦いぶりを小山の上から見て学び、小山田家にも採り入れてもらいたいのだ」


「戦い方が違うとは、鉄砲なる物を使う事と、矢野殿の兵が持っている長い槍を使う事に御座いまするか?」


訝しむ小山田信隆に「大筋ではその通りだ」と伝え、この合戦は先陣の矢野兵庫率いる2000と鉄砲隊600だけで終わらせると宣言する。


「なっ、なんと? 矢野殿の兵2000と鉄砲隊600だけでこの合戦を…、敵は6000近くの大軍、流石に矢野殿だけでは…」


流石に6000近い敵を相手に2600の兵で挑むのは無謀であると言わんばかりの表情をする小山田信隆だが、先陣を命じられただけでなく、第七軍と鉄砲隊600のみで勝てと言われた矢野兵庫は、飄々とした様子で「吉報をお待ちくだされ!!」と言い、自身が率いる兵の元へ行く。


「信隆、其方も急ぎ右手にある山に登るのだ、急がねば豊嶋の戦い方を見る間もなく合戦が終わってしまうぞ」


そう言われた小山田信隆は慌てて本陣を後にし、本陣右手に見える小山に兵を進める。


もっとも小山田勢が小山に陣取った事で武田や穴山など甲斐勢は、小山田勢を警戒し、抑えの兵1000を向かわせたことで、矢野兵庫が相手にするのは5000になったのだが…。


昼近くになり、太陽が真上になった頃、先陣の矢野兵庫が兵を前進させる。

矢野兵庫率いる第七軍団の構成は、長柄足軽が1000、足軽が500、騎馬が400、鉄砲が100の合計2000からなっているが、それに加え第一軍団より鉄砲隊600が増員されている。

そして足軽500は、通常の槍に加えてクロスボウとスリングを装備しており、弓隊、投石隊としても活躍できるようになっていた。


鉄砲隊を前面にして前進を開始する第七軍団に対し、豊嶋家が何度も関東で鉄砲を使用した事で、その威力を伝え聞いたのか、甲斐勢は木楯を前面に押し出して前進を開始する。


第七軍団の足が止まり、鉄砲隊が3列になり折敷くと、甲斐勢も足を止めて様子を伺う。

互いの距離は約150メートル程、一列目の鉄砲200が物頭の号令で一斉に火を噴くと、轟音が辺りに響き渡り、黒煙が立ち込める。


「二列目前へ!!!!! 放て~!!!」


一列目の一斉射に続けと物頭が声を張り上げると二列目の鉄砲隊が10メートル程前に走り出て、折敷くと、号令で一斉に火を噴く。


最初の一斉射は甲斐勢の前に並べられた木楯を貫通することなく木片をまき散らすだけであったが、衝撃で複数の楯が割れていた。しかし二回目の斉射で遂にほとんどの楯が割れるか、貫通するかして甲斐勢に死傷者が出始める。


「三列目前へ!!!! 放て~~~!!」


楯を失い慌てる甲斐勢を余所に、三列目の鉄砲隊300が更に10メートル程走り出て、折敷くと、物頭の号令で一斉者を放つ。


楯を失った甲斐勢の前面にいた兵達は、見えない何かに殴られたかのように、後ろに倒れ込み、ある者は、頭部より脳髄をまき散らしながらその場に倒れ込む。


「鉄砲隊下がれ~~!!! 長柄隊前へ出ろ!!! 押し出せ~!!」


指揮を執っていた矢野兵庫の命で鉄砲隊が後方に下がると、替わって長柄足軽1000が2列になって前進を開始する。


槍を持った足軽が前進してきたことで、鉄砲による攻撃はもうないと思い込んだ甲斐勢は、それぞれ主の号令の元、一斉に豊嶋軍に向かって攻めかかる。


「矢を放て~!!! その後は石の雨を降らせよ!!!」


長柄足軽の後方に控えていた足軽隊がクロスボウを斜め上に構えると、一斉に矢を放ち、その後、クロスボウを足元に置いてスリングを使い石の雨を甲斐勢の頭上に降らせる。


矢の雨をすり抜け、石の雨を避けて前進した兵達であったが、二列に並び交互に長柄を上下させる長柄足軽に前進を阻まれ、無理に突っ込んだ者は頭上から振り下ろされる長柄に頭や肩などを強打され、その場に倒れ伏す。


つけ入る隙の無い豊嶋軍を前に、突撃の足が鈍った甲斐勢だが、直後、左右から鉄砲の一斉射を受けた事で、浮足立っていく。


「今じゃ!! 懸かれ~!! 総がかりだ~!!!」


矢野兵庫がそう命じると、待機していた騎馬隊が、長柄足軽の左右から飛び出して敵に襲い掛かり、長柄足軽は長柄を投げ出し太刀を抜き、足軽はスリングをしまうと、足元に置いてあった槍を握り、甲斐勢に向け襲い掛かる。


その光景を山の上から見ていた小山田信隆だが、実際に見る豊島の戦いを前に、身震いをすると、咄嗟に太刀を抜き頭上に掲げると、勢いよく振り下ろしながら絶叫する。


「皆の者! 懸かれ~~~!!! 目の前の敵を粉砕し、一気に敵を蹴散らせ!!! 敵は浮足立ち逃げ始めている弱兵ぞ!!!!」


小山田信隆の号令の元、小山に陣取っていた1000の兵達は一気に山を下り、目の前で浮足立つ敵を粉砕すると、そのまま矢野兵庫の兵と合流し、逃げる甲斐勢に追い打ちをかける。


「追え~~!!! 足軽雑兵には目もくれるな!!! 狙うは兜首ぞ!!!」


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稚拙な文章ではございますがお読み頂き誠にありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。

本当に、誤字脱字、言い回し等、稚拙で申し訳ございません。


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