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人であるゴブリンであるが人を所望する  作者: 頑張るポチ(๑•̀ •́)و✧
第一章 人間化の法
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1.5話(閑話)竜人とクラリネル

書物 ──クラリネルの神秘──より

────あれ?......これ......。私はふと大量に積んである本を凝視した。下から古い順に積んであるのか下の方の冊子はほこりっぽさがあった。その中で1冊、他とは違う吸い込まれるような漆黒を纏う本が挟まれていた。

そこだけ別空間のような気もしてきて不思議に思って私は慎重に本を引っ張り出そうとした。間に挟んでありなかなか取りにくかったけれど落とさないようにして取り出す。題名ははっきりと読み取れた。


『書物──クラリネルの神秘──......?』


題にあるクラリネルというのは、闇魔法が比較的得意な種族が住む島の総称で、中を少し見てみると神秘のような幻想的なものとは違い歴史のようなものだった。竜人とクラリネルとの関係、からの見出しから始まり少し難しい文字がずらっと流れていた。


※※※※※※※※

『クラリネルに保護してもらう!?どういうことなのですか!』


堂々とした声が天幕を揺さぶった。全身が鱗に包まれており物騒な格好をしている竜人の副隊長。サンレイン・ドラクは隊長の意図に不満を漏らす。


『仕方ないことだ。このままだとサクソスに消されかねん』


落ち着いた落胆した声に太陽神を司る国が含まれていることに新たな怒りを生む。

代々竜人族は、サクソスの土地を借り狩猟や木の実などで生計を営んでいた。太陽神の保護下である安心と他種族を差別しない国民に安堵し何不自由のない生活を送っていた。────戦争が開始されるまでは。

戦争の糸口は未だ定かではないが国中で竜人族のせいだと言われていた。その大まかな理由は、罪を被せられたから。国の間違いを、国の犯した罪を。王の血族が異国の使いを殺した罪を......。

国中で騒ぎ立てられた嘘により総攻撃をくらった。

こちらもそれ相応の対応はしたが今まで守ってくれたので殺すまでは至らなかった。その逆、数々の竜人たちが火の藻屑となって消えてしまったが。

人数が減っていくにも関わらずこうして生きながらえているのは我が父フォレス・ドラクが皆を庇ったお陰である。


『私達竜人族から自殺しに行くようなもんですよ!?』


皆を庇ってくれた父を無駄死になんてさせたくない。クラリネルという国は闇魔法を扱う種族が多いと聞く。さらに((魔物の実験を行う))という噂が全国各地で言われてきた。クラリネルにとって竜人は絶好のカモであり希少性の高い生き物。


『......仕方......ないのだ。お主は噂の件を心配して言ってくれとるのだろうがそれを見返りに......保護してもらうしか......ないのだよ......?』


いつもは見せない弱気な隊長を前に言葉を失う。自分も隊長であったならそうするしか手はないのだろう。なんせクラリネルに行けば自殺行為で、そのまま居ればいずれ全滅する。

他に手は残されていない。この状況下では危険が百パーセントではないクラリネルに行くという判断になる。


『......分かりました。では、私が先に言ってまいります。』


『どういうことだ......?』


『一人で行けば......利点は多いのです』


答えを待たず聞き返そうと口を開く隊長の視線が交差する前に自身の持てる最大の力で駆け出した。

────利点というのは二つある。

一つは、保護についての有無。その場で話し合い保護してくれるのならば入る、拒絶するなら襲う、とはっきりする。逆に集団だとクラリネルも迂闊に手は出せない為、保護するにしても襲うにしても一旦中に入れるだろう。

二つ目は、仲間には悪いがクラリネルと竜人の関係を築いた第一人者となること。二、三人と少ない人数で行くとその者(竜人族)の使いと思われる確率が高い。さらに保護してもらえるなら権力的には私が上になることが決定されるからだ。


半ば気は悪くしたものの仕方ないのだ。......少し気持ちを落ち着かせた。


※※※※※※※※


クラリネルの国境まであと少しの所まで行った。硬い地面に凹凸をつけながら、息を切らしながら走る。長時間持続する力を持っていながらの息切れは仮拠点からクラリネルまでの遠い道のりを告げる。


((まさかここまでとは......))


長く続いた道のりによる疲労と一歩手前に聳えるクラリネルの壮大な作りによる驚愕がしみじみと体に染み渡る。

クラリネルの入口には誰もおらずただただ薄暗い闇に包まれている。森のざわめきが一層増し緊張を覚える。

一歩一歩を慎重に進んでいく。忍び込もうとしているような素振りを見せず、かつ何が起きても対処できるように薄く加護膜を展開させる。少しのダメージなら無効化する加護膜。気休めにしかならないが知られないように対策を練るにはこれくらいしかない。入口手前にさしかかり少し気持ちがゆるんだ、その時。


『あのー。なんのようですー?』


突然後ろから子供の声がした。振り返って見るとそこには何か白い物を抱えた紫髪の子供が立っていた。背は小さいのに長年生きているような不思議な感覚を味わい只者でないと身体中が震えた。


『クラリネルの者で間違いないな?』


『うん。そうだよー。クラリネル総指揮官で王様のリネルだよー』


『......!!』


抑揚もなく一定の音程を保ったままの声だった為、あまりに唐突すぎる答えに言葉を失った。王、つまり一番トップに君臨する者。

((しかし、このような子供が王だと......?))

と思うもすぐに消す。相手は王、つまりこれは謁見の場。


『......突然ではあるが竜人を保護していただきたい』


『いーよー』


『......なっ!。そんな簡単に決めて良いのか!?』


『いーのいーのー。りゅーじんのほごー。許可するよー』


すべての物事を適当に決めているように見せているのか。むしろ考えがあるのかもしれないような口調に思わず安堵してしまう。

まだ信じきれるはずもないのにどこからか信頼性が湧いてくる。


『......では、仲間が来ますのでもう暫くお待ちを』


『来ないよ?』


『はっ......?今なんと?』


『君の仲間は来ない』


急に目を細くしてクラリネルの王リネルはことごとく呟いた。

まるでわ分かったような口ぶりで喋る王に少し疑念を抱いた。まだ冷静なのはまだ頭が理解してないからかもしれない。


『......どうゆう意味ですかな?』


『もう死んでるよ。君の仲間』


『そんな不謹慎なことを言わないでください。どうしてそのような事が分かるのですか?』


『────遠隔闇魔法で位置特定。対象にマーク設置。追跡及び生命の確認。』


その魔法の効果を箇条書きを読むようにして話は続く。


『生命が生きていたら光、死んだら闇に還る。ついさっき前にお仲間は死んじゃったよ』


未だに話が理解出来ないまま呆然と立ち尽くす前で平然と目を向ける王は小さな子供とは思えない殺気を放出し思わず畏怖した。


『隠れて。』


急に目を後ろへ向け、王の微かに動いた左手に逆らわず、すぐ横の木の影へと姿を隠した。なんだ...?と思ったその時、煌びやかな衣装や鎧を着た兵士が立ちはだかった。


『なんのようですかー?』


気持ちの切り替えが早く出会った時と同じような面倒臭さを思わせる面構えで王は言った。内心では一刻も残りの竜人族を殺したい兵士達も今は行儀正しい貴族のような振る舞いをしている。


『ここに、竜人族の者は来られませんでしたか?』


『ここには来てませんよー?』


『そんな筈は......。なら、今話していたのは誰です?』


『ただのぎょーむ連絡。あなた方の欲しがる者ではありませんよー』


『嘘はいけませんわお嬢さん。そこに気配を感じますわよ?』


もうすぐで撒くという時に新たな兵士────魔術師と思われる女性が加わってきた。至るところに化粧を施しており口元に歪んだ笑みを浮かべるキラキラと輝く装飾品から魔術師がかなり高位だということが分かる。


『あららー、本当ですかー?まぁ、あなた方も殺気ダダ漏れですけどー。』


『......ちぇっ。まぁいいわ。今すぐ竜人族を渡しなさい。さもなくば......』


『そっちこそまた、大好きな戦争を罪を擦り付けて起こすんですかー?次はどの種族狙うんですー?』


『......ッ!次から次へと調子に乗るなよ!?────お前らこいつを片付けろ!』


短気な魔術師に乗せられて兵士十から十五人ほどがわんさかと出てきた。それぞれ弓や剣、槍などの装備をしている。

暗闇でも仄かに輝く装備にリネルは不機嫌そうな顔をする。


『光は嫌いなんですよねー。さっさとしまってくれません?』


ポロッと打ち出した弱点に魔術師は笑みを浮かべた。


『......ふん。自ら弱点を暴露するなんて馬鹿ね。────やってオシマイ!』


『馬鹿になーぁれ。マインディス(まいんど)・ティイル(すてぃーる)。こっちでおしまいですー。よ?』


聞きなれない語句が唱えられた瞬間、虚無の光が脳天ごと貫く現象に度肝を抜かれた。一直線に貫かれた魔術師たちは少しの間、時が止まったかのように動かなかったが再び動き出すと思ったら精神的なダメージでもおったのか怯え始めた。


『や......やめて......お......お願いだから!!』


魔術師を起点に多くの兵士達が目線が定まらずに口々に喚き怯え始めた。まさに((心を盗む))魔法。魔術師たちは立ち上がることも出来ず地面にもがきながら去っていった。腰に手を当て地を見つめ続ける王にいくつか聞きたいことが増えた。いつまでも地を見つめている王に少し疑問を抱き問いかけてみた。


『......大丈夫なのか......?』


『あー。問題ないっすー。』


押し殺したような声が森にしんしんと響く。木々の囁く風が王に当たり微かに震えた。


『......とゆーのはノーで、この体だとなかなか打てないんだよねー』


なおも視線を感じたのかポロッと内面を打ち出した。がくりと座り込む王を見ながらだろうなと心が呟く。見た目でわかってしまったり直接王からポロッとさらけ出すあたり王も大胆だなと思えてくる。こうして待っていても何も起きないので王の所へ歩き出す。


『あー。そーいえばあなた追跡魔法つけられてますよー。取り外しますのでー後ろ向いてください』


『あ......ああ。これでいいのか?』


『いいですよー』


目の前にはクラリネルの入口、佇む暗闇を見渡す。────そういえば仲間はどうなったんだったか。何故か朦朧としてきた意識の中でふと思った。と同時にふわりと浮いたかのような感触に包まれ冷たい地の温度が感じられた。


『────リ・スリープ(深淵の眠りへ)。ごめんね。若きドラゴンさん』



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