第九話 ただのメイド
「なんのつもりだ?」
衛兵の後ろから杖を構え、アエニグマに拘束魔法をかけていたのは、フィリアのメイドのリーチアだ。
「旦那様……姫様になんてことを言ってるのですか!?」
彼女の目には涙が溜まっている。
今まで自分を雇ってきてくれた本人に、こうして拘束魔法をかけているという事実と、その動機。
そして何より、自分よりも大切にしてきたフィリアに対しての言葉遣い。
そんな複雑な感情と罪悪感が、ただのメイドを襲っている。
「リーチア、この魔法は?」
アエニグマも自身の魔道具を動かそうとするが、彼女の拘束魔法によって身動きが取れない。
それどころか、魔力操作すらできない。
「昔、私がここに来たばかりの頃に、貴方に教えてもらった魔法ですよ!! 『不審者が来ても自分の身を守れるように』って、貴方が……!!!」
目には涙が溢れかえっている。
「リーチア、勘違いしないでくれ……私は君たち部下に危害を加えるつもりは……」
「じゃあ、姫様の御心はどうなってもいいってことですか!!?」
アエニグマは表情を変えない。
ただ淡々と言葉を並べていくだけだ。
それを見ていると、自然と信之にも怒りが溜まってくる。
「《《これ》》はもう、姫なんかじゃない」
「……っ!!?」
リーチアは下を向いて黙り込んでしまった。
そして、彼女の拘束魔法が徐々に力を失い始めていた。
「な、なんで……!?」
「リーチア、もう一つお前に教えなかったか?」
そして、リーチアの拘束魔法は完全に解かれた。
「拘束魔法は、圧倒的な魔力の圧には敵わないと」
次の瞬間、アエニグマは自身の魔道具を使い、リーチアを激しい突風と共に後ろへ吹き飛ばした。
「リーチアさん!!!」
そして、遠くからドスという鈍い音が聞こえた。
その音が聞こえた瞬間、フィリアは膝から崩れ落ちた。
しばらくの沈黙が流れる。
この空気に触れているだけで、気持ちが悪くなりそうだ。
「お父さん、そういうことだったんだね……私が家出しても探しに来なかったのは……」
次の瞬間、フィリアの雰囲気が変わった。
それまで絶望していたはずなのに、闘気で満ち溢れていくようだ。
彼女は戦う気だ。
信之も、フィリアが実の父親に対して戦おうとしているのに、今まで何もできていないという事実が非常に悔しかった。
今までの自分だったら、
『あ、では……』
と情けなく逃げていただろう。
ただ、今は一人じゃない。
「フィリア、お前と私では実力の差が……」
「それはどうかな? 総帥……」
アエニグマは余裕の表情に、少し雲がかかったような気がした。
二人で戦う。
(まてよ、これ自分の命が狙われてるから、負けたら殺される……?)
絶対に負けられない(当たり前)戦いが、始まろうとしている。
こんにちは、あまないです。
なんかめっちゃ短くなっちゃいました。
戦闘シーンって書くのめっちゃ難しくないですか?
書くコクとかあったら教えてください!




