4.
クランデミアに到着した怜は、レドーたちに連れられて冒険者ギルドへ足を運んでいた。
扉を開けると、中には溢れんばかりの人。装備を身に付けた冒険者だけでなく、普通の格好をした依頼人の姿も見てとれる。
「すごい賑わい様ですね」
「当然だ。ここには大陸中の依頼と冒険者が集まるからな。これからお前の冒険者登録を済ませるが、その前に俺たちの依頼の達成報告だけさせてくれ」
「分かりました」
レドーさんは小さく頷くと、報告窓口と書かれた方へと行ってしまった。俺も迷子になりそうだし着いていくか。
「あっ、アンさーん!愛しのメリルくんが戻ったっすよーー!」
「うるさいわよメリル。ポーノ、達成証明の品は?」
「はい。これで証明になりますかね」
アンと呼ばれた受付嬢に促され、ポーノさんは背負っていたリュックサックから何かの角や尻尾などを大量に取り出す。
「フォレストワイバーンの角が26本。尻尾が状態の良い物が9本、微妙なのが4本。魔石が13個ね。これだけあれば大丈夫、フォレストワイバーンの群れは討伐完了よ。みんなお疲れ様」
「やったーーーー!!!と言っても俺の出番ほとんどなかったっす………」
「仕方ないさ、あれはメリルとは相性が悪かった。囮役になってくれただけでも十分だ」
荒鷲の皆さんはフォレストワイバーンなるものの群れを討伐しに行ったらしい。ワイバーンってあれだよな、ドラゴン擬きみたいなやつ。
それを恐らく13体………Aランクとか言ってたし、この人たちもしかしてめちゃくちゃ強いのでは?
レドーさんたちは入手した素材を買い取りに出し、ようやく俺にとっての本題に入る。
「それでアンさん。こいつ、ちょいと道端で拾ったんだが、適性検査と冒険者登録だけしてやってくれねえか?詳しい話はここじゃ出来ないが、ワケありみたいでな」
「ふーん、アンタが肩入れするのも珍しいわね。余程の事情があると見た。いいよ、全員検査室まで着いてきて」
そうして案内されたのは、中くらいの大きさの水晶が置かれた部屋。これアニメで見たことあるぞ、手をかざしたらステータスとか見えるやつだ。この世界は自力で見れるからあまり関係ないとは思うけど。
「自己紹介がまだだったわね。アタシはアン。ここでしがない受付嬢をやってるわ」
「レイです。大陸の外から来ました。まだまだ分からないことだらけなので、よろしくお願いします」
「なるほど…大陸の外ね………。大体の事情は理解した。冒険者ギルドはアンタみたいなのも歓迎してるから、気軽に声をかけていいからね」
「ありがとうございます。これからお世話になります」
「ところでレイ。レムリの街で門番を吹っ飛ばした、見慣れない格好の青年ってのはアンタだね。早速お尋ね者になってたよ」
な、なぜその事を………。もうこっちに情報が伝わってたのか。なんて速さだ………………。
お察しの通り、レムリは最初にトイレを借りた街だ。マップを開いた時に、街の上にレムリと表示されていたので一応覚えていた。
「多分そうです、すみません。あの時は体調が悪くて急ぎで、この大陸の常識も知らなかったので。まさか入場料が要るとは知らず……しかも無一文ですし」
「なら仕方ない…とはいかないけど、罰則の取り消しくらいはやっておいてあげる。その代わり、いつか出世払いで美味しいお酒でも奢ってね」
「もちろんですよ、ここまでしてもらったんですから。まだまだ先の話になりそうですけど」
割と苦しい条件を付けられたし、冒険者でどこまで稼げるのか分からないけど、それで指名手配が解けるなら安いものだ。
その冒険者になるために、水晶の前に立つ。
「あら、これの使い方知ってるの?」
「いや知らないですけど、水晶に触れるとかそういう感じですよね?」
「それで合ってるわ。そうしたらステータスボードと同じように自分の適性が表示されるの。その適性はスキルツリーの基盤になってくるから、より強くなるためにも絶対に必要なことよ」
なるほど………確かにスキルツリーには何も表示されなかったな。この水晶を使わない限り解放されない仕様だったのか。
少しワクワクしながら右手で水晶に触れてみる。すると目の前にメニュー画面と同じものが現れ、スキルツリーの中心のみが表示される。それも2つ。
「レイ、アンタやっぱり才能あるわよ。レドーが推薦してきただけのことはあるわね」
「それってこの基盤が2個あることですか?」
「物分かりが良いわね。これは二重属性と言って、世界でも希少な才能よ。普通の人は武器適性と魔法適性が一つずつ。だけど貴方はそれが二つずつあるの」
「ちなみに僕も二重属性です。弓と槍、水魔法と風魔法にそれぞれ適性があります」
純粋に手札が2倍になるのか。これは大きなアドバンテージだな。荒鷲の皆さんにお世話になるのも忍びないし、俺1人の旅になるならとても有利に働くはずだ。
パッと思い浮かんだ使い道は2つ。
一つは、傭兵としての生き方。例えば、人数の足りないパーティに臨時で入って、空いた穴を埋める役割をこなしたりすることができる。
もう一つは、合体魔法とか同時発動みたいな使い方。なんか響きがかっこいい。威力も2倍とかになってくれたら嬉しい。
しかし、その魔法が予想外のものだった。
「えーっとレイの魔法適性は、土魔法と………何これ、呪印魔法?」
「響きが物騒ですね………………」
「いや、呪印魔法なんて聞いたことないわよ。荒鷲の面々は何か知ってる?」
「俺たちも初耳です。レイ、何か使える魔法はあるか」
何かって言われても………………《身体強化の呪印》。
急にその文字が頭に浮かんでくる。それと同時に使い方もインストールされる。他には何も無さそうだし、やるだけやってみよう。
「フィジカルバースト!」
魔法名を口に出し、自らの両足に手をかざす。
「どうだ、変化はあったか?」
「身体…というか足に力がみなぎってきます。ここじゃ狭いのでどこか広い所があると良いんですけど」
「それなら訓練所を使って。あそこなら軽く走るくらいは問題ないと思うわ」
俺たちは検査室を出て訓練所に向かう。ちなみに武器適性の方は片手剣と弓だった。弓が使えるなら遠距離から敵を仕留められそうだし悪くないはずだ。
訓練所はギルドの地下にあり、かなりの広さを誇っていた。ただ、スペースは余らせているようだったが。
「今日は誰もいないみたいだね。歩いてる時は何か感じた?」
「うーん…正直よく分かんないですね。身体が軽くなったような気もしますし、違和感も感じますし………」
「ま、やってみりゃ分かんだろ。とりあえず反対側の壁まで走ったらどうだ?」
「そうしてみます。それじゃあ、いきますよ………」
いざ走ろうと、足に力を込めて一歩踏み出した瞬間。
「どわぁっ!?」
「うえぇ………今見えたっすか?」
「辛うじてな。だがとてもじゃないが信じられん。あれが一歩だと?。
怜の魔法は、少々常識から外れているようだった。




