第24話
「は?おいガキ。その手は何のつもりだ?」
「兄貴、コイツ一丁前に俺達に歯向かうつもりみたいですぜ」
無意識だった。
もしかしたらアリアの身体が行ったのかも知れない。
気付けば私は二人の男に手のひらを向けていた。
怒りと腹立しさで意識がどうかなりそうだ。
「おい、まさか攻撃魔法を使おうとしてるのか?よせやい。何をとち狂ってるかは知らねーが魔法が使える夢でも見やがったか。まあヤク中だから気狂いにもなるか。いいかガキ、よく聞け。お前は確かに水魔法使いの素質はあるが元々魔法を使えるだけの魔力は無かったんだ。だから親父は親切にもこの貴重な赤い液体をお前に飲ませた。コイツは麻薬だが、魔力持ちの潜在魔力を倍増できる力がある。それでやっとお前は一人前にポーションを作れるようになったんだ。まあ、それで魔力底上げしても作れたのは精々一日に数個だったがな。しかもポーション作りの後は未動き出来ないくらいに倒れる有様。そんなお粗末なお前がどうやって攻撃魔法を使えるっていうんだ?だいたい攻撃魔法を放てる魔法使いは魔力量が《宮廷魔法使い級》じゃなきゃなんねぇ。つまり国家に一人いるか居ないかだ。お前如きに扱える魔法じゃねーんだよ」
「兄貴、生意気なガキは躾け直さないと駄目じゃないか?」
「そうだな兄弟。親父からは無傷で連れ帰れって云われてるが反発の意思があるなら話は別だ。コイツを飲ませる前に少しのお仕置きは必要かもしれねぇな」
「くくっ、なら俺にやらしてくれ。あの時みたいにやらねーとな。アジトに連れてきた時は涙が枯れるまで鞭で叩いたんだ。逃げ出して親達に会ってその時の事を忘れたのかも知んねーが、もう一度味合わせてやるぜ」
ニヤニヤとゲスな笑いを浮かべ私に迫る二人。
私が魔法を使えないと高を括っている。
だけどそれは大きな過ち。
私には巨鳥を倒した強力な魔法があるからだ。
ズガンッ
「は?」
「ふぇあ??」
収束した水をイメージ通りに弾き出す。
今回は意識的にやってみたけど上手くいった。
いわゆるウォータージェットというやつだ。
男達は固まって口を開けたまま呆けている。
まだ状況が理解出来てないようだ。
「な、何だ今のは?」
「あ、兄貴、顔から血が出てる⋯⋯ぜ?」
「ああ?顔から血が出てるだと?何も感じねーし、あり得な⋯⋯⋯⋯は?」
無精髭は顔にやった手に血が付いているのを見て、目を見開いて驚いている。
私の放ったウォータージェットは無精髭の頬を僅かに切り裂き、尚も威力は落ちずに背後の岩に風穴を開けた。
超高圧水の生成。
つまり大気圧約3000倍に圧縮した水流を一気に放ったのだ。
その時の水流は音速にも達するものとなり、高密度な水は強靭なドリルにも匹敵するような力を発揮する。
それは岩石のような硬質体でも簡単に貫くのだ。
無精髭はまだ事実を認識出来ないようだが、スキンヘッドは状況を理解したらしい。
先ほどから少しづつ私から遠ざかっている。
その顔は恐怖で歪み、得体のしれないものでも見たかのような振る舞いだ。
「あ、兄貴、こりゃ相手が悪りぃや。化け物だ、ぜ、コイツはよぅ」
「ああ?お前、何を言ってんだ!?」
「あ、兄貴はアレが、見えねぇのかよぅ」
「アレ?アレって何だ?!おい兄弟、確かに変な事が起きたが、こりゃあ何かの間違いだ。さっさとガキを捕まえるんだ!」
「岩に穴を開けやがったんだぜ?!コイツは化け物なんだ!」
「おい兄弟、親父の命令は絶対だ。だからあのガキは必ず連れて帰らなきゃならねぇ。なに、たまたま分からねー事が起きたが気にするな。そう何度も放てるもんじゃねぇ」
「あ、兄貴!?」
これは⋯⋯意外だ。
スキンヘッドは私の魔法に萎縮して引いてさえいるが、無精髭は一時は驚き固まったものの、逆に私に対しての執着を深めたように見える。
もしかすると魔法に対する対処方法への心得がある?!
「ガキ、その顔は意外か?ああ、俺は攻撃魔法に対して対処方法を知っているぜ。しっかしこりゃどういう事だ?金の卵を産むだけだったガキが、黄金の鷹に化けやがった。とんでもねぇ誤算だぜぇ」
魔法に対して対処方法がある。
つまり無精髭はこの状況を過去に体験した事があると言う訳だ。
だけどとう対応するつもりだろう?
「対魔法使いへの戦いは対処方法は三つ。一つは詠唱中に叩く事。もう一つは的を絞らせない事。そして最後は魔力切れまで魔法を使わせる事だ。そしてお前は今ので魔力が尽きた筈。どうだ、図星だろう?だからお前がいくら強力な魔法を使えたとしても俺はちっとも怖くないんだ」
そういう事か。
魔力切れは⋯⋯実感が無いから大丈夫だろう。
あとは《的を絞らなければいい》。




