第23話
「へぇ、あのガキ、俺達を見据えたまま動かねぇぜ。嬉しい再会に固まっちまったかぁ」
「兄弟、嬉しいじゃなくて恐怖に慄いてんじゃねーか?まあ固まっちまったのは間違いねーがな」
ペラペラと自分達の情報を明かすように喋りながら近づく男達。
まだ距離がある割に聞こえるのは大声で話ているからか。
自分達の会話が私に届いているのが分からないのだろうか?
だけど仕草は普通の会話で、とても大声を張り上げているようには見えない。
もしかしてアリアの、私の聴覚が特別なのかも知れない。
これも私の魔力のせい?
そして会話の内容からすると、あの連中はアリアに面識があるようだ。
それもろくでもない面識だろう。
これでハッキリした。
コイツらはアリアを麻薬中毒にした連中の仲間。
それも直接手を下した奴らに違いない。
アリアを誘拐し麻薬中毒にさせてから隷属化した魔法使いを作りだそうとしたのだろう。
他の使い道もあったのかも知れない。
そこにアリアの親達が彼女の奪還に走り、それは見事に成功したのだ。
そしてこの辺境の地に家族で逃げ延びた。
だがアリアの麻薬中毒は既に深刻なレベルにあって、その事を彼女の親達は奪還してから知ったのだ。
そしてアリアは中毒症状の末に亡くなった。
これがアリアの死の経緯!
「しっかし馬鹿な親達だぜ。わざわざ娘の居場所を教える為に俺達のアジトに踏み込んだんだからな」
「それは違うぜ兄弟。あの親達は娘を麻薬中毒にした俺達が許せず復讐に来たんだ。まあ結果は返り討ちだったわけだがな。おまけに娘の居場所まで教えてくれて、まったく可愛いもんだ」
「復讐?ただの村人が何をとち狂ってんだか。素直に娘を渡せば楽に殺してやったのによ。まったく無駄な拷問で疲れちまったぜ」
「まったくだ。だが母親は殺すには惜しかったな。元貴族の令嬢だったから器量は中々だった。少し楽しんでから奴隷商に売れば結構な金になったはずなんだ」
「兄貴、仕方ねぇよう。親父が決めたんだから」
「その通りだ。親父の命令は絶対だからな」
なんて事を話てるんだ?!
これがこの世界の現実なんだろうか。
つまりアリアの両親は娘の死の原因を作った犯罪者集団のアジトに復讐の為に乗り込み、返り討ちにあって殺されたのだ。
それも惨たらしく拷問をされた挙句の死!
ザクッザクッザクッザクッザクッ
ザッザッザッザッザッ
「よう、嬢ちゃん。また会ったな。感動の再会だぜ。ハンギ兄弟のバンおじちゃんだ。どうした?喋れねぇのか?可哀想に薬が切れて喋れなくなったか。そうだろう、そうだろう。この麻薬は魔法使いの魔力の底上げがすげーんだが副作用で一度服用すると止める事が出来ねぇ。止めるとあまりの禁断症状に大抵は気狂いになり最悪は死だ。だが飲み続けてる限りは高揚感に包まれて気持ちいいだけ。身体も健康にいられて万々歳。おっと、こんな話は不要だな。だけど大丈夫だぜぇ。ほら、ちゃーんとお前の為に新鮮な薬を持ってきてやったんだ。嬉しいだろう?」チャポンッ
ついに目の前まで近づいた男達。
目の前で液体の入った小さい小瓶を振ってみせた。
110センチあまりの私に対し彼らの背丈は180センチ余り。
子供の私が初めて見た異世界人は、凶悪な体がそびえ立つ明らかなゴロツキの姿だった。
そして無精髭男が示した赤い液体の入った小瓶。
どうやらアレがアリアを苦しめた麻薬らしい。
つまりコイツらは最低最悪な悪人なのだ。
ならば、どうしてやろうか。
「しっかし親父もコイツに固執し過ぎじゃないですかい?いったいこのガキが何だっていうんですかね」
「水魔法使いは極めて貴重。数十万人に一人なんだとさ。何が貴重って、女神教会で配るポーションが作れるんだ。当然ながら各教会にも水魔法使いは少ない。だからポーションの存在は秘匿され、一部の権力者の間で高値で取引される。コイツは金の卵を産む大事なお宝なんだよ」
「ポーションって、病気や怪我が治るっていう伝説の薬ですかい?現実に存在したって事ですかい」
「おうよ。だからこの特殊な麻薬で魔力の底上げをして、コイツに大量のポーションを作らせようとしたんだ。麻薬でガキは従順になって一石二鳥。まさに金のなる木になるって寸法よ」
「⋯⋯そんな理由で⋯⋯⋯⋯」
「あ?」
金儲けの為にアリアを監禁して麻薬中毒にした上、大量のポーションを作らせようとした。
そんな下らない理由でアリアと両親が死んだのか。
極悪非道にも程がある。
コイツらは人の皮を被ったモンスターだ!




