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最強ギルドを追放された俺はガチの最弱なので。  作者: 真宵 にちよ
第二章、新たな出会いと冒険と
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EPISODE19、遠い理想

 ラクネアは鍛錬の段階を上げ、レヴィンの動きにさらなる磨きをかける。


「受けるだけでは無意味です。反撃のための隙を見つけて下さい」

「分かってはいるんだけど…ッ!?」


 ラクネアは【受ける】構えから一転し、流れるように木剣を打ち込んで来る。

 瞬きを忘れるほどの速さで、ラクネアが繰り出す木剣は空気を切り裂き、レヴィンの周囲を縦横無尽に舞う。

 今までならばその一撃を避けることさえ敵わなかったが防御の技を磨き、回避に転じているレヴィン。

 木剣の絶え間ない打ち込みに、どうにか隙を捉えようと腐心しているが、それを機に攻勢に転じる勇気にはまだ恐怖が伴っていた。


 そんな中、見えた一瞬だけの隙を突いてレヴィンは木剣を後方に引き低く身を構えた。

 動きにすかさず反応したラクネアは足を払われぬよう、軽やかに宙を舞うように跳躍。

 そのとき、穏やかに翻った木剣が閃光のごとく顎を狙う。


「ぐっ…!」


 レヴィンは無防備な顎に衝撃を受け、続く攻撃を阻むために咄嗟に腕を交差させたが、気付けばラクネアは既に背後に立ち、目もくらむような速さで斬り払われると、上体が揺れる足元が崩れ、その結果、目の前には鋭く突きつけられた木剣があった。


「晒した隙は4回。そのうち一度でも反応できたことを良しとしておきましょう」


 ラクネアの声には、及第点をつける優しい響きが含まれていた。

 最弱と謳われしレヴィンがここまで成長できた事実は、教え導く者としてのラクネアにも喜びを感じさせる。


「まだ一回か…」


 レヴィンは悔しさに唇を噛むが、1回。

 その1回が、大きな一歩であり、確実に成長させていた。


「ラクネアが本気を出したら、到底敵わないんだろうな…」


 だからこそ、そう呟く。


「本気を見せてもらったら、どんな感じになるんだ?」


 興味と恐れの入り混じる問い掛けに、リルアが反応し笑みを浮かべる。


「たまには見て学ぶのもいいんじゃない?」


 リルアは無造作に首を鳴らした。

 二人の様子を見守る目には退屈の色が滲み、彼女自身戦いの刺激に飢えている様子だ。


「でも、お嬢様…」

「いや、結界を壊すってわけじゃないよ〜」


 リルアの軽い調子に対し、ラクネアの表情は仮面の下でより硬く重くなっていた。

 いざ主に刃を向けるという心の葛藤を如実に表している。


「これは殺し合いじゃないし…ただの遊びだから!」


「は、はぁ…」


 気が乗らないことは明々白々だが、【遊び】というなら致し方ない。

 それを眺めるレヴィンの胸は高鳴り、これから巻き起こるであろう激戦への期待が膨らんで仕方なかった。


「では参りますよ、お嬢様」

「そう来なくっちゃ!」


 二人は一足飛びに距離を取り、ラクネアは木剣を構え、リルアは素手で臨戦の態勢に入った。


 だが、そんな期待に満ちたレヴィンも、すぐ驚愕に打ちひしがれることとなる。


 二人が踏み出したのは、同時だった。木剣と拳が激突し、衝撃で空気が震えた。

 見る者の目には、手元さえ捉えられぬ速度の連撃が次々と繰り出される。

 砂塵がたちまち舞い散り、地面を揺るがすその壮絶なる力の応酬が辺りを襲う。


 ラクネアの木剣が鋭き突きの軌道に変じ、止めどなくリルアを後退させる。

 突きの連続を前にしても、リルアはにっこりと微笑み難なく首を傾げ、剣先をかわし、半身で体を捻りながら悠々と避けていた。


 リルアの拳は軽やかで、左手の甲で剣先をいなすなり、空気を裂くほどに鋭い回し蹴りを浴びせた。


 ラクネアはその先を肘で受け止め、わずかにリルアの眉が動いた。

 その様子からも肘打ちは痛烈であったことが窺えるが、たちまち二連蹴りを放ち、自身に迫る木剣を次々と防ぎ、跳び上がった。


炎雨(フレイム・シャワー)!」


 リルアが右拳に魔力を込め高らかに叫ぶと、その周囲に体を包むまでの巨大な炎の玉が瞬く間に形成され爆裂した。

 歯車を巻くごとく真下に落下する炎の破片は、容赦なくラクネアの位置を狙って降りかる。


 一方で、レヴィンは初めて見るラクネアの魔法に心躍る思いでいたが、彼女が選択したのは木剣を投げ捨てるという意表を突く行動だった。

 ラクネアの十指から魔力の糸が天の如く舞い上がり、炎との戦いを繰り広げる。

 それはただの糸ではない。

 魔力が形作る【魔力糸】だ。

 これが触れる瞬間、炎は寸断されて霧消した。


 リルアはさらなる魔法を繰り出そうとした。

 しかし、その意識を覆うのは魔力糸。

 炎を裂いたと同時に彼女の四肢を絡め取り、不動の束縛を与えた。


 これで【遊び】は終わりかと察したのも束の間、その場に充満する膨大な魔力により、リルアの魔力が限界を超えて溢れた。


 魔力糸を破裂せしめるほどのその力、右手に込められた魔力は空間をねじ曲げる。

 本気を出し始めたリルアに相対するラクネアは深く息を吐きだした。


「遊びと言われたではないですか…」


 リルアが浮かべる表情は狂気に変貌している。

 その瞬間、ラクネアは仮面を手に、改めて受け止める体勢を整えた。


「魔力技…烈殺波(れっさつは)っ!!」


 リルアの拳が勢いよく振り下ろされ、圧力を帯びた衝撃波が解き放たれた。

 それは【魔力技】、自身の魔力を操る必殺技で、その威力は想像力に比例する。

 目の前で起きる現象を想像し、その想像力が強ければ強いほど威力増すが魔力を大幅に消費する。


 他人の魔力技を真似する事もできるが、本質を理解していなければ不発に終わり、最悪の場合は内側から魔力が暴発し負傷する危険性もある。


 放たれる衝撃波は空間を歪ませるほどで、恐らくレヴィンが巻き込まれることも否めないほどであった。


 ラクネアは仮面を取ると、この猛烈なる烈殺波(れっさつは)に向かって飛び込み、冷静に左手で受け止める。


 その瞬間、爆炎がごうごうと彼女を包み、周囲は激烈なエネルギーの渦中に陥ったが、ラクネアの持ち前の魔力によって被害なく炎が収束し、静かに相殺された。


 その際の熱と衝撃によりラクネアの左腕は痛々しく焼けただれるが、その冷静は打つことなく、仮面を再び着け、リルアへと静かに向き直る。


「遊びは程々にしませんと」


 ラクネアが向けた厳しい視線の先で、リルアもまた、冷や汗を浮かべていた。

 レヴィンが失神している。


 ――大変だ。


 リルアは焦りを滲ませ、悔いをにじませた表情で青ざめた。


思いつく限りの描写で書き込んだので、見にくいかもしれません(´;ω;`)

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