42、掌
ふよふよと、空を移動する。ナメクジの力は、大したものだ。
最強のデンキパイロットと、何だか凄そうな神の御子とやらに対して、こちらは6名。
僕と純野さん、吉田さんにガイラルアッヴァーン氏、グラヨンベスパとゼッタニードルの夫妻だ。
グラヨンベスパと僕は、戦力としてはあまり役に立たないかも……。
「三輪、空にいる相手は、なるべく早く叩き落とす。三輪は、地上中心に戦って欲しい」
「そうだな。純野ちゃんと、ガイラルアッヴァーンさん、俺が主に空。墜落させたデンキパイロットを三輪や食屍鬼が潰す。で、いいんじゃないか?」
「そうですな。私の血や吉田殿のナイフは、飛び道具として使えるので、空でもある程度役に立つでしょう」
「ギョゲッ!俺たち、それでいい」
そういうことになった。
僕も投石は可能だが、地上の方が戦い易い。
黒い雲が近づいて来た……かのように見えた。黒のデンキパイロットである。 直径3メートルの黒い球体に、電化製品のコンセントに差し込む部分のような頭部がついたデンキパイロットだ。頭部には、発電所を表す地図記号と『黒』の文字が書かれている。
そいつらが、空に浮いた状態で接近して来ている。
「じゃ、叩き落とすね」
純野さんが、空気を操り黒のデンキパイロットをまとめて20体程、地上に落とした。
「それじゃあ、地上は頼むぜ、三輪」
吉田さんとガイラルアッヴァーン氏も、純野さんに続く。
僕は食屍鬼の夫婦と共に、地面の上に降りた。
「ゲギョッ、三輪、あっちのデンキパイロット、まだ動いてる」
「了解」
落下の衝撃で、大半のデンキパイロットは壊れて動きを止めていたが、全てではない。
まだ動くものを、ゼッタニードルさんと手分けして破壊していく。グラヨンベスパは、少し離れた場所からまだ動くデンキパイロットを探して僕らに告げる役目だ。
「まあ、動いてはいても故障はしてるから、楽なんだが……」
高い所から叩き落とされたため、完全な状態なものが無いことに助けられ、ダメージを受けずに戦えていた。
ガション!……ビガッ!
「おっ……と」
まだビームを射てるデンキパイロットがあった。危ない所だった。
本来、黒のデンキパイロットは、浮遊しながら球体ボディーのあちこちにある蓋をスライドさせ、そこからビームを射出する銃口を出して攻撃する。それが落下の衝撃で開かなくなっているのがほとんどだった。
今ビームを射ってきたのも、一ヶ所からだけだったため楽にかわせたが、故障していなければ、球体の全体からビームを射たれて危なかった。
「よっ……と」
べちゃっ!
ウィィイン
「あっ、効かないか。ふっ!」
グッパァン!
ウィィ……
よし。破壊した。
掌の打ち方は、何種類かある。最初は、人体によく効く打ち方をしてみたが、いまいち効かなかった。
次に、生物への殺傷力は劣るものの、硬さと衝撃の両方がある程度の打ち方をしたら、黒のデンキパイロットを破壊出来た。最も多く練習した打ち方だから効いただけ……かもしれないが。
「ギョゲッ!?三輪、ほとんど壊れていない、デンキパイロットだ!」
グラヨンベスパから、声がかけられた。




