40、汚鬼や冷血人間は、空を飛べない
「あ、結構いる」
信濃妖人大学の講堂には、思ったより多くの『戦える者』がいた。
「む、汚鬼の三輪にエアリアルか。お前達も来たのか」
「こんにちは、室賀さん」
「来た。室賀、こんにちは」
風乱党の室賀さん、女騎士といった雰囲気の土使いだ。
「……で、吉田さんは一緒ではないのか?」
室賀さんは、キョロキョロと周りを見ながら言った。先ほどまでと違い、女学生っぽい雰囲気である。
「おう、三輪。お前らも来てたか。……ん?室賀ちゃんもいたのか」
「はい。吉田のお兄さん、こんにちは」
吉田さんも来た。室賀さんの口調が変わる。
「カンラカンラ!」
「けけけけけ!」
「こんにちは」
妖獣革命党の三人も、近くに来た。
「こんばんは、三輪殿」
「こんばんは。ガイラルアッヴァーンさんも、お久しぶり」
知ってる顔が多い。……が、知らない顔もいる。
「あの辺にいるのは、何者だろう?」
「なんだ、三輪は知らないのか。風乱党の仲間だ」
疑問を口に出すと、室賀さんが答えてくれた。
「真ん中にいるのが、3代目の泉小太郎、風乱党の党首だ」
「ああ、湖を沃野に変えた……泉小太郎の3代目ですか」
「隣の筋骨隆々なじいさんが、雷公と呼ばれる望月一馬。異名の通り雷使いだな」
「あいつ、苦手なんだよな」
「吉田のお兄さんは、望月さんと仲が良かったと思ってましたが……」
「その反動か、風乱党辞めたらいちいち突っ掛かってくるんだよ」
そう言うと、吉田さんは目立たない場所へ行ってしまった。
「あ、吉田のお兄さん……。ええと、それから目付きの悪い男が、炎帝こと真田昌信。学生服が、雨師の諏訪文士。009が着てるような服の奴が、風伯と呼ばれる仁科征治だ」
「まとめて流しましたね、室賀さん」
「む。三輪、それを言うな。一応あいつらと私が、風乱党の幹部だ。まあ、党首を除いて変な異名がついてるが、気にするな」
「室賀さんは、后土でしたか?」
目の前に、石の刃があった。
……いつ出されたか、わからなかった。
「……気にするな、と言った」
「スミマセン」
そんな話をしていると、ステージにブタが登ってきた。チャシューさんだ。
「皆様、お集まりいただき、ありがとうございやす」
そして、スクリーンに信濃の地図が映し出された。
「信濃に侵入しつつある軍のルートを調べてきやした。東、南東、南、南西の4つのルートから来る計画でやす」
地図に4つの矢印が表示される。
「南東と南西は、飛行部隊が、うち南西からの部隊は迷利権軍でやす。この部隊は、核を搭載した飛行機なので、妖獣革命党にあたってもらいやす」
「けけけけけ!任されたわ!妖獣に現代兵器は、無効。我々が適任ね」
しかし、更に遠くからミサイルを撃ち込まれたら、どうするのだろうか。
「なお、迷利権本土には卜部翠隼さんが行っているので、そちらからの遠距離攻撃はありやせん。また、台風神サブロー様と眷族神たちは、海上からの攻撃を封殺しやした」
「奴等ハ、神ノ会議ヲさぼッテオッタガ、今回ハソレガ良イ方ニ転ンダナ」
「あ、グィグィラゲヴァーン様。建物の外から解説ありがとうございやす」
グィーさんは、体が大きすぎて建物に入れなかったため、外から話していた。
「えー、話を続けやす。地上部隊は、皆さんが分担すれば何とでもなりやす」
まあ、龍族最強クラスの邪龍であるグィーさんと、退魔士集団の風乱党が、それぞれ一方面ずつ片付けそうではある。
「で、残ってるのが、南東でやす。空飛べる方、いないでやすか?」
手を挙げたのは、純野さんだけだった。




