37、男子小学生の憧れ
自動車を運転すると性格が変わる。そういう人は、結構多い。
人に問題があるのは、確かだろう。
しかし、それにしては多すぎないだろうか。自動車というモノに、何かニンゲンの狂気を呼び起こす力があるのではなかろうか。
そんなことを思った程、シャシャカは荒っぽい運転で、敵味方関係なしに轢いている。
さらに、シャシャカの車からはミサイルが射出されてもいる。レーザーも放たれている。
「なんか、小学校低学年の男子が喜びそうな車だ」
「ゲギョ!安全運転、しない、奴に、免許だすな」
グィーさんが、土で壁を作りだすも、車が突っ込んで破壊している。
「グィーさん、交渉決裂ですか?」
「奴等ハ、最初カラ地脈ノ破壊ヲ目的ニシテイタ。ヨッテ、我ハ戦ウ」
グィーさんの周りの地面から、先の尖った黒い岩が飛び出す。光沢のあるその岩は、レーザーを散らし、ミサイルを貫いて、シャシャカの車へと飛ぶ。
「ハッハー!俺様の車にゃ、かすりもしないぜ!」
シャシャカは、車を操り岩を避ける。
「当たらねえよ!」
「ナラバ、当テルマデ岩ヲ出スノミ」
グィーさんは、地面を泥に変えてシャシャカの機動力を削いだ上で、より速く岩を放った。
ズバッ!……グチュ
「ピギュ?」
シャシャカは、車ごと押し潰された。
「終わりましたね、グィーさん」
「イヤ、マダダ」
グィーさんがそう言った直後、岩を押し上げロボットが立ち上がる。
どうやら、シャシャカの車が変型したもののようだ。
「ますます、男子小学生が喜びそうだ……。」
ロボットは拳を振り上げた……が、グィーさんの放つ岩に貫かれた。
「……今度こそ、終わりですかね」
「ウム。最早、生命ヲ感ジナイ」
恐るべき敵だった。……僕やグラヨンベスパにとっては。
「はあ。もっと強くならんとなあ」
「うん。わたしも」
一人言に、純野さんから返事があった。
「純野さんなら、楽勝じゃないかね?」
「あれは、きつい。邪龍だから、楽に勝ったように見えるだけ」
「純野さんでも、きついんだ」
「うん。だから、お互いもっと強くなろう、三輪」
「そうだね」
食屍鬼たちに別れを告げ、帰路についた。
「三輪殿、以前より強くなりましたな」
「いやあ、あまり自信はないですね。ガイラルアッヴァーンさんのが強いでしょう」
「左様ですが、冷血人間の能力もありますからな。それに私も、卜部殿や邪龍様のように星を砕いたりは出来ませぬ」
「グィーさんや、卜部さん位に強くなれば、敵無しですよね」
「左様ですな」
「わたしも、そう思う」
「イヤ、我ヨリ強イ者モイル」
「……ああ、羽田淳ですか」
「ウム。闘鬼ニハ、勝テヌ」
羽田淳……闘鬼である。闘うことが好き過ぎて鬼になった男だ。会ったことはない。
「羽田淳って、そんなに強いんですか?」
「強イ。結界ガ無ケレバ戦イノ余波ダケデ、数億ノ異界ガ巻キ込マレテ消エルデアロウ」
「……何ですか、それは」
「闘鬼ダナ」




