34、妖獣たち
人型でない相手との戦いに慣れる。それがテーマなので、妖獣革命党の面々が喚べる妖獣たち全てと、少しずつ戦うことになった。
「じゃあ三輪さん、行きますよ。来い!『とり丸』」
昼顔くんがそう言うと、空に裂け目が出来、全長2メートル以上はあるグリフォンが現れた。
これが、とり丸か。
「よろしく、とり丸くん?さん?」
「くんです、三輪さん」
グリフォンのとり丸くんは、空中からのし掛かってきた。
怖いので、大きく横へ動く……
「三輪、大丈夫?」
気がつくと、地べたに横になっていた。純野さんが、上からこちらを覗き込んでいる。
体があちこち痛い。
「三輪さん、気がつきましたか。とり丸の前足での薙ぎ払い、くらってましたね」
「あー、獣の間合いは分かりにくくて、斜めに避ければ良かったのかなあ」
「そうですね。じゃあ次行きましょう」
少し離れた所に、ナメクルンAがいる。
「次は、ワタクシがお相手イタシマス!」
「よろしく」
グリフォンよりは、ナメクジのが弱いだろう。
……ナメクジは、強かった。いや、ナメクジとは思えない速さで動いていたが……。
接近して右の前蹴りを放ったら、高速で間合いを潰され、体当たりをくらった。
なんとか立ち上がるも、周囲をナメクジのべとべとしたやつで囲まれ、動きが鈍ったところを、再び体当たりで、また意識を飛ばされた。
「三輪、がんばれ」
「けけけけけ!次は私の妖獣『ぶらんどん』よ!」
「ガグラァー!」
妖獣ぶらんどん、二本の足で立つ、目一つの白いサンショウウオ。体高……何メートルかな。2階建ての家位の高さだ。
「ガグラァー!」
「けけけけけ!三輪さん、この子、大きくなったでしょ?」
「……そうだね」
この妖獣ぶらんどんが、まだ体高30センチ位の頃に保護するのを手伝ったのが、妖獣革命党と知り合うきっかけだった。
以来、彼らは僕に好意的だ。
ぶらんどんも、僕になついている。
「さあ、ぶらんどん!三輪さんに、強くなったのを見せるのよ。けけけけけ」
「ガグラァー!ガグラァー!」
当然、ぶらんどんにも負けた。ぶらんどんは、ちょっと心配そうにこちらを見ていたので、大丈夫だと手を振ってみたら、すり寄ってきた。
「三輪、弱い。結構強い筈の、シャシャカには勝てたのに」
「卜部さんが言うように、人型じゃない相手は苦手みたいですね」
「そうだねえ。ただ、さすがにぶらんどんは大きすぎ。とり丸くんも、ちょっときついなあ」
「そうですか。じゃ、叉三郎を喚びましょう」
昼顔くんは、三つのしっぽを持つ猫を喚び出した。
なんか、目がギョロッとした猫だ。
「叉三郎、三輪さんの相手頼むな」
「ギニャニャニャ!」
叉三郎の周りに、黒い火の玉みたいなモノが、数十個浮かんだ。
「ギニャニャニャー!」
「うわあああああ!」
「こら、叉三郎!妖術はやめなさい!」
「……ギニャニャニャ」
また、意識を飛ばされた。
その後、妖術無しで叉三郎と戦うも、触手の様に自在に伸ばす尻尾に翻弄された。
「まあ、ナメクルンAと叉三郎を相手に、もうしばらく練習しましょう」
夕方まで模擬戦をした結果、尻尾の攻撃やナメクルンAの高速機動に、ほんの少しだけ対応出来るようになった。




