3、冷血人間
焼酎を五合ほど買った。一升詰まらない……だったか。徳利ですらないが、僕には似合いだろう。
岡のような山の、街灯がない辺りに適当に座り込み、暮れていく空を眺めた。
夕焼けの中に消えてしまいたいと、そんなことを思う人がいるのもなるほどと思わせる、見事な夕焼けだった。
「さて、飲むかね」
紙パックの蓋を開け、そのまま口をつけて飲んだ。独りで飲むのに、コップやマスを用意するほどでもないだろう。
「うん。あんまりうまくはないが、まあまあだ」
独り言が、つい口を突く。誰もいないから、まあいいが。
この街は、かつて修行のために数年住んだ街だ。いろいろ思い出もあった。
当時、気になっていた娘から、ガラスの壁にぶつかって死にかけた鳥を渡されて困ったことがあった。
鳥は死に、この丘のような山に埋めた。女の子とは、特に仲良くもならなかった。
そんなことを思い出しつつ、酒を飲む。日は沈み、星がよく見えるようになってきた。
ザザザザザ!
何かが走って来た。
「おお、そこの方、この鳥を助けられませぬか?」
カイゼルひげが立派な、白っぽいマントを着た男だった。
「どうしました?」
「実は、私の血に触れて凍ってしまったのです」
?……冷たっ!
「……完全に凍ってますね。……血に触れてとか言っておられましたが、何が?」
男は、とても悲しい目をしていた。
凍った鳥の死体を埋め、男と話をした。
「ええと、三輪といいます。信濃の国からちょっと旅行のような感じで来てます」
「私の名は、ガイラルアッヴァーン。冷血人間です」
「冷血人間?」
「左様。私の血は、とても冷たく、出血すればその血に触れたモノが凍る程なのです」
……冷たい、どころではないな。
「そして、この鳥は地面に落ちてもがいていたのです。助けようとした際に、ガードレールに手を擦ってしまい、出血してこの様なことに……」
「それは、なんとも……」
「私が、生き物を助けようなどと、冷血人間に似合わぬことをしようとしたばかりに……」
「いや、落ちたら死ぬことが多いでしょう。あなたが気にするべきでは、ないと思いますよ。急ぎでなければ、どうぞ?」
酒屋でおまけとしてもらった、百㎜リットルの酒を渡した。なぜだかは、よくわからない。




