15、神コップ
なぜか雨やん風やんと共に、純野さんに吹き飛ばされた。空の死神、天翔る精霊エアリアルの名にふさわしい、恐るべき強さだった。ガイラルアッヴァーン氏が止めてくれなかったら、死んでいたかもしれない。
戦いは、僕たち酒の神側が勝ったことになり。台風神サブローの進路は変わった。
「じゃあね。ありがと三人?とも。お礼は、橘さんに渡しておくよ」
酒神・解子姫の元を辞し、帰路についた。純野さんは、なぜか少し機嫌が良さそうだった。もしかしたらだけど、感情を爆発させたのが良かったのだろうか。
「では、我々はここで失礼いたす」
「サラバダ」
ガイラルアッヴァーン氏と、グィーさんこと邪龍グィグィラゲヴァーンは、帰っていった。帰りに皆で、酒を飲みたかったが、グィーさん(全長30メートル)が飲む酒を用意することは、不可能だった。
「三輪、酒」
「純野さん、見た目美少女なのにそれですか」
「うん?とにかく、酒欲しい」
リュックサックから、酒を出す。
「うん、三輪はいつも酒持ってて、感心」
「まあ、金のデンキパイロットに襲われた時に、渡せば見逃してくれるんで」
「それは、良くない。酒は、わたしにくれるべき。デンキパイロットに渡すのは、もったいない」
歩いていた道の近くにあった公園に入り、純野さんに紙コップを渡す。
「これが神コップ……誤変換から生まれた、酒を飲むための神器」
「……紙コップです」
純野さんの持つ紙コップに酒を注ぐ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
自分の分も注ぐ。ふと見ると、純野さんは飲まずに待っていてくれた。
「ありがとうございます」
「ありがとう、でいい。『ございます』とか、そんな丁寧に話さなくていい」
「じゃあ、待っててくれてありがとう。言葉は、たまに忘れるかもしれないけど、こんな感じするよ」
「うん。さあ、飲もう」
それから、純野さんと公園でしばらく飲んだ。つい飲み過ぎてしまう位には、一緒に酒を飲むのは楽しかった。
……頭が痛い。どこかで見たような壁や天井だが、自分がどこにいるかわからない。
「……ぎょえむ。どこだここは?」
「ぎょえむ……じゃないに!この酔っ払いが!だに」
時春さんがいた。
「ああ、時春さんの祠ですか。……酔い潰れて、泊めてもらったと」
「その通りだに。泊めてやったんだから、賽銭でも置いてけだに」
まあ、この祠はみすぼらしいし、賽銭の5円位……と思ってポケットや荷物を探る。
「あれ?財布ないや。……そもそも、家に置いてきたか。時春さん、賽銭の代わりに酒でいいですか?」
「もういいに!三輪に期待したのが、間違いだったに!」
「まあまあ、どうですか時春さんも一杯?」
「うにー!朝から飲むなにー!」




