42. 出発
その後の混乱は、ダイアナの安全を確保したクロフォード卿がなんとかしてくれた。
俺が神様だというのは、サラの戯言と処理された。実際そのとおりなので、さほど問題とはならなかった。少々あった問題は、命を取り留めたサラが、神様に申しわけがたたないと、再び死のうとしたことだ。
神に仕えることこそが償いだと、なんとか説得して思い止まらせたが、お陰で、サラが俺の従者になった。俺は神様じゃないと、いくら言っても聞きやしないんだから、困ったものだ。
そして、幽閉された王様の代わりに、ヴィーが女王となった。そう、死んだでなく、幽閉されたである。
首を飛ばされた王様はサラと一緒に転送され、救命措置がされた。そのおかげで一命を取り留めたのであるが、その様子は、首から上を機械装置に入れられた状態であった。ヴィーの世界の科学技術、恐ろしい。
今は、俺が監禁されていた塔の最上階の部屋に幽閉されている。塔の部屋の真ん中に、機械に入れられた生首がひとつ。これはもう、ホラー以外の何ものでもない。
余談になるが、サンタナ宮のガス疑惑は、王様が使っていた媚薬によるものだった。その媚薬が、図らずも指輪の効果を高めていたようだ。
「この指輪で人を操れるなんて、この星の古代文明人はすごいものを作ったわね」
ヴィーは、王様から転送で奪い取った指輪を眺めていた。
「ヴィーの世界でも珍しいか?」
「このサイズで作るのは不可能よ」
「どういう仕組みか、一度分解してみたいにゃ」
イリスも指輪に関心があるようだ。
「分解して、元に戻せるのか?」
「多分無理にゃ」
「それじゃあ駄目だろ」
「使う気はないから、それでもいいわよ」
「本当にゃ!」
「ただし、あのロケットと交換ね」
「それは、駄目にゃ」
「あら残念」
ヴィーは初めからあのロケットに関心を寄せていた。異世界転移の可能性を確かめたいようだ。
その、ヴィーであるが、結局、女王を受けることになった。といっても、当然名前だけである。それでも戴冠式やら、パレードやらあったため、ご機嫌斜めな者が一人、いや、一匹いた。
「お前にゃ、何をさておきケッティアに連れていってくれると約束したにゃろ。この詐欺師にゃ!」
「まあ、まあ、これが終わったら必ず行きますから」
「それが詐欺師の常套手段にゃ」
「そんなこと言わないで、猫ちゃん、もう少し一緒にいましょうよ」
目の前の凶行に、ショックを受けていたダイアナであるが、今はイリスと一緒にいることで、精神の安定を図っていた。アニマルセラピーだ。片時も離れず。完全に二人はセット販売状態だ。イリスを呼べば必ずダイアナも一緒についてくる。
そんなわけで、ケッティアに向けて出発する、アマデウスに乗船することになったのは、ヴィーと俺とイリス、それとダイアナ。だけでなく、おまけにサラまでついてくることになった。
「さすがは神の騎竜、乗り心地抜群だな」
「本当ですね。シートもふかふかで、ドラゴンてすごいですね」
「お前ら、少しは変だと思わないのか? ドラゴンの中に乗れるわけないだろう」
「でも、ドラゴンだからな」
「そうですよね。ドラゴンだから、なんでもありですよね」
駄目だ、こいつら。
「ヴィー、ケッティア星までどれくらいだ」
「百五十光年くらいだから、片道一週間といったところかしら」
「あと一週間で、やっと帰れるにゃ」
「待ちきれない奴もいるようだし、さっさと出発しようぜ」
「わかったわ。アマデウス、進路、ケッティア星、速度最大、出発進行!」
俺たちはケッティア星へ向け出発したのだった。




