74・ストーカーの正体
キーアリーハさん。手加減なしでオレの首を締め上げてくれますね?
いやまあ、オレって呼吸もしてねぇし、どうやら血も通って無いっぽいんで全然、平気なんだが……
「さて、ご主人様。段階的に高度を上げていこうかと思ってんだけど構わねぇかい?」
ガッツリ首を締め上げられてんのに普通に声が出るじゃんか?
「構わないわよ……」
腕の力を緩めつつ、なんか諦めたように言ってくれますね、キーアリーハさん。
ちなみにオレが高度を上げることに関し、キーアリーハに確認取ったのには理由がある。
「高度を上げると、寒くなるぜい? 寒くなったら言ってくれ。地面に降りるからさ」
「シャドウは、暖めてくれないんだ?」
できるかね?
キーアリーハの言葉にオレは思ったりする。
とりあえず、影法師でキーアリーハの身体を包み防寒着を作ってみる……オレとは直接繋がってないんで、キーアリーハに取り込まれてもオレには影響は無いはず。いや、影法師の分だけオレの魔力は減るけどさ。
オレの身体も変幻自在なんで、後頭部に目玉を作って目視で出来を確認する。
キーアリーハは、真っ黒な毛皮を纏ってますね……真っ黒な毛皮でできたボディスーツって言った方が正しいか。ガチな毛皮だったら、脱げないわね……影使いのキーアリーハなら取り込むなり光で掻き消すなりで、特に困らんだろうけどさ。
「シャドウ……変なところに目玉を作らない!」
えー? 別に良いじゃんかよ?
そう思うが、キーアリーハは、お気に召さないようだ。オレの作った後頭部の目玉を手で覆ってくれる。
まあ、あんまり化け物じみたことは、やってくれるなって言いたいんだろう。
「そう、化け物じみたことは、シャドウにはやって欲しくないの!」
いや、キーアリーハさん。オレの頭ん中を覗かないでくださいよ?
つか、今のオレの翼大猫状態も十分、化け物じみた状態だと思うんだけどね?
あと、キーアリーハ自身も、十分すぎるぐらい化け物なふいんきが……って、殴られた。
「何やら、お楽しみのようだな……?」
いや、別段オレは楽しんでないぜい?
不意に掛けられた声に、オレはそう思っちまう。
「にゃるほどね……アンタ、ここのセンセだったんだ」
もちっと探りを入れてみないと断定できないけど……たぶん、このストーカーの正体、キーアリーハが怖いとか言ってたセンセな気がする。
いや、ラッペトスの名前って、作った魔法使いが気まぐれで付けたモンみたいなふいんきだったしさ。
その気まぐれで付けた名前を知ってる魔法使いってなると、命名者……ラッペトスの産みの親か、ソレに極めて近い存在って事になるわけだ。
で、ソレに該当するのが、あのセンセになるわけだな。
でも、ご本人直々のお出ましじゃ無いっぽいな……一体、いくつ使い魔を持ってるのよ?
無いっぽいとオレが断定を避けた理由は、飛竜に乗った甲冑が喋ってたからだな。ひょっとこして、甲冑を着込んでの御出座しって事もあり得るかなと……
……うん、気配から察し、甲冑の中身はガランドウだわ。
「ここの先生が、あんな事やってたのっ!?」
つかキーアリーハさん、アンタ気づいてなかったんですかい?
「オレがファミリアだと見抜いた、あのセンセだよ……オレにだけ興味を持ってるのかと思いきや、キーアリーハにも興味を持ったようなふいんきを感じてる」
まあ、実際のところキーアリーハって普通に優秀な魔法使いなワケだしさ。
「アタシが、シャドウの召喚者だから?」
初期のストーカーの言動から察し、そうじゃないと思うけどな?
「たぶん、キーアリーハが脅威になりそうなぐらい優秀だからじゃねぇか?」
とはいえ、キーアリーハの性格から察し敵対関係にって事にはならないと思うけどな……ストーカーも度の過ぎた悪戯レベルの悪さしか学園ではやってなかったっぽいしさ。
ただ、監視が届かない場所じゃ、オレ達が死にかねないレベルの悪さを何度もやってくれたけどさ。
「脅威となるかも知れんが、それより私が『欲しい』と思ったからだ」
ほう?
キーアリーハを自分の部下にしたいってか?
「公爵令嬢……つうか公国のお姫様をアンタの軍門にってのは、ど~考えても無理だろうに?」
つかアンタ、使い魔連中以外に部下なんて居ないんと違う?
「その高い魔力と影使いの能力を秘めた血統が欲しい……その後の立ち回り次第では、次期『公王』の座も狙えるかもな?」
どうも、オレやキーアリーハの使う影魔法ってのは想像力に左右されるトコロがあるみたいだな……
キーアリーハの影触手は、サンド・ゴーレムの砂槍を影法師で再現したって言ってたしさ。
だからオレは、自分の口から腹の中にかけてバネ仕掛けで弾丸を撃ち出すような仕掛けをイメージし作り上げる。そして影魔法で作った弾丸を、飛竜に跨がる甲冑に向かって打ち出してやったよ。
見事直撃……甲冑はひしゃげ変形するが、特にストーカーは気にしたような気配はない。
「ひょっとこして、シャドウって怒った?」
何やら嬉しそうに聞いてくれますね、キーアリーハさん?
……いや、実はオレ、ちょっとじゃないぐらい怒っちゃったわけなんだけどね。




