70・帰路
風呂飯寝る……ここフラムベルク別邸でキーアリーハが要求したのはそれだけで、問題なく満たされたわけだが、お姫様なのに『らしい』接待は受けてないね。
まあ、前利用した時も今回も食事内容は豪華だったんで、食事だけは……じゃなくて寝床も豪華だけどさ。
飛び込みなので、人を集めるのが大変ってワケじゃなくて、コレが本来の対応なんだろうけどさ。
つまり実家は父ちゃんが喜んで舞い上がっちまった結果か……
そんなわけで、オレは再度『ボク男の子だよ?』と主張し拒絶を示したわけだが同じ寝床に連れ込まれ朝を向かえ、全く清々しくない目覚めである。
ウィル君は別室で……たぶん狭い小部屋だと思うけど個室が与えられてる分、オレより待遇良いよな?
そして、朝飯の後に出発である。
今回はオレじゃなくて、キーアリーハが呼び出したファルコンの背に乗って学園へ戻るわけだ。
……ガチで攻撃喰らっても、即キーアリーハと合体して迎撃に移れるようにって考えで、オレが自分で飛ぶのを拒否したわけだ。
たぶん、合体状態のオレ達なら、あのストーカー御本人が御出座しになっても勝てると思うんだ。
ただ、キーアリーハ自身は合体に乗り気じゃない感じなんで、合体して迎撃ってのは伏せてるよ。
ぶっちゃけ、キーアリーハが無事なら、オレ自身はキーアリーハに取り込まれちまっても構わねぇと思ってるんでね。
自分が何者なのかも未だ判んねぇけど、オレがキーアリーハのオプションだってのは確定なワケで……なら、本体に取り込まれちまうのも構わねぇかと思ってるんだ。
二つに別れた身体が一つに戻るってのとは違う気がするけど、キーアリーハはオレの事を半身って言ってたからね。
「シャドウ……黙っちゃってるけど、何考えてるの?」
「索敵やってるんよ……ご主人様の力を借りてさ」
嘘は言ってない。
色々と考えちゃいるが、ガチで周囲の警戒をやってるよ。キーアリーハの力も借りてさ。
「で、危ない兆候とかありそうかな?」
ウィル君が聞いてくる。
そりゃ空中戦じゃウィル君は出来ること無い上に、デッドウェイトでもあるからね……不安になるのは理解できる。
「大丈夫……危険な気配は感じられない。それに、シャドウのお陰で風の小精霊の力を借りられたから、お昼前には学園に着けるわよ?」
キーアリーハの言葉である……いや、オレも危なそうな気配は感じてないけどさ。
つか、今のオレ達って風の長のネェちゃんの言ってた『我が眷属を誑かす者』になるんじゃねぇぁな? だとすると、あのネェちゃんと鉢合わせしたら撃墜されそうな気ががが……
いや、力は借りてるけど誑かしちゃいないと思ってるけどさ。
って、強力な魔力を持った存在がオレ達に近づいてくるよ……いや、敵意は向けられてないからストーカーじゃないっぽいが。
ちなみに、この気配……オレ知ってるぞ? キーアリーハにも心当たりあるはずで、だからオレ達は慌ててない……いや、ウィル君は何やら緊張してますけどね。
「風の長のネェちゃん……先日は助かったぜ。お陰で、何とかできたよ」
「何とかできたじゃなくて、何とかしたのよ……でも、風の長の力添えが無ければ、それすら怪しいところでした。ありがとうございます」
いや、キーアリーハって、おべっかも使えるんだね……ちぃとばかり見直したよ。
「キーアリーハさん。ボクを抱き締める手に力を込めすぎてませんか?」
息苦しさを感じたオレは抗議の意味を込めて言ってやる。
「シャドウ……なんか失礼なこと考えてなかった?」
全然ソンナコト考エテナイヨー? ……って、考えてたけどさ。
「オレの頭ん中、あんま覗いて欲しくないなぁ……オレのプライベートは、いったい何処に?」
「覗いてないわよ……失礼なことを考えてるときは、シャドウの気配が変わるからわかるの!」
ほう……オレはキーアリーハの気配から考えを察するなんて……出来るようなできないような?
そんなオレ達の事など気にしていないようで、風の長のネェちゃんは言ってくれたよ。
「異界の神が汝等に注目している……件の転生者に更なる力を与えたようだ。心せよ」
風の長のネェちゃんの言葉に、オレは慌てる。
ちいと待ちなさいな。オレ達は特にカミサマ連中から力なんかもらってなさ気なふいんき……じゃなくて雰囲気なんだけど、あのストーカーは更に力を貰ったってかっ!?
「でも、あたし達も強くなってるわ?」
強くなったっつうか、持っていた力を正しく認識、行使できるようになったって感じで……まあ、里帰り前より強くなったってのは正しいか。本人が出来ないと思い込んでて力を発揮できなかったワケだしさ。
「キーアリーハは、最初から強かったよ」
しつこく絡んでいたらしい、あのソーノベンにも屈服してなかたみたいだしさ。
「お世辞は良いわよ……」
そうは言うけど、キーアリーハさん……何やら嬉しそうですね?
お世辞じゃないんだけどなぁ……まあ、良いやね。
風の長のネェちゃんは、そんなオレ達を見て笑うと高度を上げつつ離れて行く。
つまりオレ達って、あのネェちゃんには嫌われてないっぽいな。つか、好かれてそうな雰囲気。
さて、間もなく、キーアリーハが在籍する魔法学園に到着である。




