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転生したオタクゲーマーは異世界RPGを攻略する。  作者: シュトロム
二章 修行編(仮)
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学校ってこんな感じだっけ?

「……んん、まぶし……」


 朝、魔法学校の寮にて。

 窓から差し込んだ太陽の光に照らされ目が覚める。

 部屋は六畳一間に一人用ベッド、机と椅子が一脚ずつ、簡易的なクローゼットとキャビネット、それに本棚が一台が備え付けられていた。

 これでシャワー室があったら、本当に前世の一人暮らし初心者におあつらえ向きの部屋になるんだが。

 残念ながら、シャワーなんて文明の利器は存在しない。

 代わりと言わんばかりに、桶と厚めの布、それにちっこい石が入っていた。

 今まで見たことなかったが、これが魔法石というものらしい。


 魔法石は、魔物を倒すなどして手に入れた魔石に直接魔法陣を刻み込むことで作られる。

 前世知識だとこういうものは誰にでも使えるもの、という印象を受けるがこの世界では違う。

 魔石はあくまでも『魔力伝導率が極めて高い物質』の一つ。

 魔力操作によって魔法石に自身の魔力を流すことで、刻まれた魔法陣を発動させられる、という代物だそうだ。


 部屋の魔法石は、刻まれた魔法陣から水を出すだけの魔法であることが読み取れる。

 だが、これは俺の魔法に対する理解だと違和感がある。 

 魔法石に刻まれた魔法陣が、俺が独学で発見した魔法陣の構造から抽出した『水』の紋様そのものだったからだ。

 五芒星もなければ外円も内円もない、ただの模様に見えるものを魔法陣というのは無理がある。

 ではなぜ魔法陣であるといわれているのか。

 単純な話、魔法に関する書物の中で一番有名な『魔法使いになるために:上級者用』に書かれていたからだ。

 俺も今まで実物を見たことがなかったからそうだと思っていた、だが実際は見た通りだ。


 あの学長が出版した『魔法使いになるために』シリーズの初級から上級まで読んだ中では、魔法陣の構造に関する記述なんてなかった。

 だから、俺の発見はこの世界の誰も知らないものだと思っていた。

 自分だけが特別だったのに、なんて気落ちするようなことはなかったが。

 学長がこのことを知っているのならなぜ公開しないのだろう。

 昨日初めて話したが、あのイケメンが自分だけが特別なんてことに固執するようなタイプには見えない。

 もしそうなら、そもそも魔法の教本なんてださないだろうし。

 まぁ、依頼を受けている間に聞けばいいか。それくらいの時間はあるだろう。


 なんてことを昨日の夜考えていたなぁ、と思い出しながら着替える。

 今日から従事開始だ。


 準備を整え部屋を出ると、生徒と思しき人達がいた。

 俺のことをちらりと見はするものの、特別不思議がるようなこともない。

 寮生間の関わりは意外とドライみたいだ。


 寮から出ると、すでにイデアがいた。

 昨日のやりとりがフラッシュバックした。

 なんというか、途中まですごい紛らわしいかったなと。

 別におかしなことしていたわけでもなく、特段そう感じるようなことでもないはずなのに、やけに気恥ずかしさがこみあげてくる。


「おはよー!」


 朝の挨拶。

 イデアはいつも通りの様子に見えた。

 俺も取り繕って返した。


「おはよう。今日も元気だな」

「うん!魔法の講義?に参加するの楽しみで、わくわくしてるんだ」

「そんなに興味があったのか」

「魔法はみんな憧れだからね。こうなるのは私だけじゃないよ」


 話しているうちに気恥ずかしさはどこかにいった。


「でも、講義を受けるのはおまけだぞ。まずは依頼の話をしような」

「はーい」


 今日する講演の打ち合わせをしながら、校舎までの林の中を歩いた。

 木漏れ日とたまに吹く風が心地よかった。


 ………………。

「やぁ、二人とも」


 校舎につくとエントランスホール前に昨日見た受付の女性がいた。

 また学長に頼まれて、朝礼を行う場所まで案内してくれた。

 エントランスホールを通り抜け、開かれた扉の先は一面の草原と一本の大きな木だった。

 校舎に囲まれてはいるが、いきなり別の空間に飛ばされたかのように感じてしまう。

 そして、目算十メートル以上はありそうな広葉樹の下に学長はいた。


「寮の部屋はどうだったかな」

「いい部屋だったよ」

「ありがとう。そういってもらえてうれしいよ」


 爽やかな笑顔が憎たらえふんえふん、イケメンってずるい。


「朝礼までもうすぐだ。少し待っていてくれたまえ。」

「私たち以外誰もいないよ?」

「大丈夫。私の優秀な生徒たちだ。遅れてくるなんてことはないよ。見てごらん」


 俺たちが来た方を指さす。

 振り返ると、なんとも異様な光景が見えた。


 あるものは空を飛び、あるものは高く跳び、あるものは爆風で吹き飛んでいる。

 あちらを見れば地面を泳ぎ、そちらを見れば地面を凍らせ滑っている。

 三者三様、十人十色。

 それぞれが全く違った方法で俺たちの方へ向かってくる。


「ほらね」

「すごい!!」

「いや、歩いて来いよ」

「あはは、それは無理な話だ!彼らは魔法が使いたくてこの学校に来た。いつでもどこでも何をするにも、魔法を使わずにはいられないんだ」

「狂人しかいねーじゃん」


 まさか、この学校じゃこれが普通なのだろうか。

 午後の講演のことを考えると、頭を抱えたくなった。

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