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夜には背ものばしてみるよ、つまんないよ






 似た花をくすねるだろう、そうそうインクを切らしたこともない二人だから。


 彼と彼は、そうして九月の空の薄明、ベッドの上で身を起こしただけの姿勢、ある方向を向いている顔を同時に持ってもいて、自覚的に、そうして少年が少年でいること、悪夢から醒めた後のはっきりしない頭 、開けられないカーテン、身じろぎすらせず、何も希釈をすることなく、何のメロディもそこにはなく、ただみている、それらを、何ら決めつけることなく、明け方、二人とも。







 とんでもなく開くのが遅い自動扉の前で野宿したことも、願いすぎて固くなった体も、プールサイドで一方は掃除をしていて、一方はこんぐらがったイヤフォンのコードをきれいに元通りにしているというような時間、訊ねるミスは冒さないのに訪ねているミステリー、落ちながらページをめくること、保護指定されている何かを殴りつけて泣いた一回、いっぱい、いっぱい見上げた頃だって、投げている日、投げている人、ブーメランと友達づきあいをしていた時が彼にあったのを彼も知っていること、忘れられないイリュージョニストへ手紙を出そうとしていた時が彼にあったのを彼も知っていること、罫線しか味方は存在しないような町、目は秩序を常に得ようとしているのだと考えてみようと互いに話し合ったこと、ちゃんとばいばいはいえたかどうか常に気にするだけだった彼の父親、団地住まいの彼のうちにいたトースターの悪ふざけの多さだって、小さなダストボックスを焼いてしまおうか、二人だけがそれを使っていた、そのためにそれすらいとおしいみたいにならないようにって、なぜだかなったあの場所、三つの目が最も乾くことになったあの場所だって二人、共有したのに、謝りもしなかったんだ。発声練習できなかったんだ。

 朝日みたいなものを握りしめ相手の体も自身の体も憎むのなら似合いだすんだ。でも、守りたくもあるんだ。壁を叩いて、まだ手の内にあるこの声は響くんだ。







 彼はいえなくなる前にいえるだろうか、夜には背ものばしてみるよ、と。

 彼としてはもうずっとこうだったからいうしかない、つまんないよ。

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