囚われの身
乾いた水槽の中に入れておくことにしたその約束からは、はっきりと異臭が感じられたが、それは手の届かない上のほうに行くわけではなく、縮むでもなく、光も虫眼鏡もいらないわけで、余計に少年はそれが愛しくなった。
つめたいコーヒーといっしょに、彼は数日をこの部屋で過ごしていた。
部屋も、とてもつめたかった。
歯に優しいものを求めるけれど、そんなものつめたい部屋にはない。どの隅を囓っても苦みが不足している。
意味のない電車が走っている。
部屋に伝わるその意味のなさの意味のなさ。
「上手に並べられた、僕の残骸」
少年の声が久しぶりに響き、そして分かりやすく消えた。
鼠一匹いない家で。
今年はきっとサマーウォーズ、指で色々と押し潰していく梅雨の頃。
虹だと少年が思っていたものは、もうとっくに違う名前に変化した。
ようやく独楽が止まった。
するともう、回るものは部屋の中にはない。
身勝手な、割れたカボチャ。そいつをひょいと跨いで、彼は久しぶりに窓際に寄っていった。
ただただ体を揺らしたい草みたいに窓ガラスに額を押しつけ、彼は外の世界を見つめる。
「意味が、泊まってくれないね」
彼は貰える限り鼓膜は貰っておく主義の学生だった。彼は知りすぎたのだ。独りごとにすらならない発声と、触るというよりは三角なことしかここでは起きない。
ぐらぐらふざけてる椅子、目。
もう一度、はない。
今年はきっとサマーウォーズじゃない。
いま彼は、壁にもたれぎみになって、思い返している。治す前に喰ってしまった痛みのことを。もう見せられない、見せる人もいないけれど。でもきれいだったのに、それは甘い痛みだったのに。
少年は自分を手に持って振ってみる。オートマティック・ラヴレターのアルバムを彼は返しに行きたかった。持ち主はどこの誰だったか、もう思い出すことはできないけれど。




