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棒付き飴






 町にはこの春になり一つだけバスケットコートができたが一人の男がどこか遠くの町からやって来て住み着いてしまい近隣の中高生は皆激しく息巻き反対に町の大人は皆静観の構えを見せるので中高生たちはそれにも息巻き、早朝の練習時ゴールのネットに相も変わらず引っかかっている男のことを少年跳躍の発売日と少年進撃の発売日と少年日曜の発売日が来るごとに引き千切っていくことに決め近隣の子持ち女たちがこれを問題視する中、少年漫画家が採用するような棒付き飴をいつも右手に持っている園児がそこへ通ってくるようになり男に贈り物をしたいと考えるようになり、他にも黒髪ばかりの優等生グループもそこへ通ってくるようになると男とバンドを組みたいと考えるようになり、他にも棒付き飴の男の子の姉でエミリーという筆名を持つ少女は二階の窓から男の子が飴を空高く放る練習をしている庭を連日眺めおろしているうちに数年ぶりに外に出てみようかと考えるようになる。

 土曜の朝に姉弟は手を繋いで件のバスケットコートに向かうと男と優等生たちがずっと同じ一曲を演奏していて狂ったようにジャンプをくり返す大量の中高生たちもいて姉も弟も土曜日なんて大嫌いだと思うが男の姿を見れば次の土曜日などないのは明らかで、男に近づこうとしながら小さな弟を守りながらふいにエミリーはまるで自分たちは彼を愛しているのだと伝えようとしているみたいに見えると思い男は最後に姉弟のために残してあった声で自分が知る雨上がりはどういうものなのかという歌を二人に降らせる。

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