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【醒睡笑】  作者: ヒデキ
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【巻之一・十二~十九 ―ぬかるな秀忠―】

十二:「奈良漬」という名

 瓜の“糟”漬けを「奈良漬」というのは。「“春”日のあれはよい」というからである。

【一言】知っとるか、瓜を漬け物にした「奈良漬」。旨い。“奈良”で生まれて、天下の橋渡しをした「完子」みたいや。「あれは良い(良い娘や)」と、みんな喜んどる。


十三:「ぬかる」という訳

 何事も「油断」と言うように。取組みが遅いのを「ぬかる」と言う。藤原俊成卿の歌に。

―せき入るる、苗代水や、こぼるらん、ぬかりて道の、乾く間もなし―

【一言】何事も「油断」はいかん。急ぐのもいかんが、遅いのも、「ぬかる」もとである。奈良漬は旨いけど、「おごうの娘達」を護ることを「ぬかる」のはいかん。ここからは、上方と関八州。万事呼吸を合わせ、進めなあかん。戦乱は、もうこりごりや。


十四:「湯入り」とは何故

「水に入れた物」を、「湯入り」と言う。何でそういうのだろうか。「沖中でそこねた(「おき」、すなわち、“温めた”湯の中で、ぐつぐついわせる)」からだろうか。

【一言】「完子と和子」は、“粗略”はならぬ娘や。大事に「温めれ」ば、天下はよういく。


十五:「こぼれざいわい」の起り

「こぼれざい」とは、どうして言う。昔、娘が三人、一つの枕で眠っておった。

長姉が夢を見て、「私の身に、富士山が転がってくるのを見た」と語ったので。夢合せをしたところ、「これこそ、富をもたらす童が生まれる吉夢ですな」と祝いを受けた。次姉は言った。「これほど大きな富士の山が、姉上お一人の身に転がってくるということもないでしょう。わたくし達、妹二人の上にも、掛かってきますわ」と嬉しそうにした。

 果たして三人とも、めでたく富貴の夫を得た。以来、「こぼれざいわい」と言うのである。

【一言】知っとるやろ、「浅井三姉妹」は、茶々(淀殿、豊臣秀吉の室)・初(若狭小浜藩祖・京極高次の正室)・お江(おごう、徳川秀忠の正室)。三姉妹が見た夢は、正夢やったんや。三人の姉妹に、大きな「幸」が転がってきた。これほど大きな幸ならば、天下やって幸福になる。三姉妹の育てた、「完子」と「和子」こそ、吉夢のあかしや。


十六:「よしにする」という言葉

 物事は、「無用とする代わりに、良しとせよ」と言うのは。

「あら垣も、戸ざしもよしや、駿河なる、清見が関は、三保の松原」

この和歌の意味こそ肝要。「三保の松原」の面白い光景を詠んだのは、「関所など必要ない」、「行く必要もない」。「清見が関は良しにせよ」と詠んでいるのだ。

【一言】そこで。皆の衆、“本題”に入るで。家康公は、「駿河」で大御所をやりはったな。秀忠公に、そんな真似は「無用」や。江戸に居なはれ。「隙間だらけの石垣」の中から、「戸の後ろに隠れて」、息子の新将軍・家光公を育てはったらええ。それが「良い」。駿河に移るなんて、ややこしいことは「無し」や。江戸に鎮座して、天下が小揺るぎもせぬよう、目を光らすのが、あんさんのお仕事。その方が、「清い」。

ワシら町民も、「あんたら親子」を応援したると決めたんや。

秀忠:「わはは。これは頼もしいな」

(策伝め、これが狙いか)

天海ら:「西国の大名らも、首をすくめましょう」


十七:「八瀬法師」の酢好み

「痩法師の酢ごのみ」とは、八瀬寺では、昔から「禁酒」が行われ、酒を入れなかった。僧の中に、酒を好んで、我慢できない者がいた。常に、「とっくり」を携えて、動き回っていた。人に聞き咎められると、「(中身は)酢に候」と答えた。日を置かず、とっくり携え、また闊歩した。また聞いたところ、同じ返事をしたので。諺に、「やせの法師はすごのみや(痩せた坊さんは、すごい酒呑みや)」と言うのだ。

【一言】比叡山で“梵天王の妙薬”をもらいはった慈覚大師とちごうて。痩せたまんまの法師は、「濁り酒」が好みやった。「濁り酒」なんか好むから、痩せたままなんや。「酢」を好みなはれ。「清い酢」を好んだら、あんさんは今の世の“慈覚大師”や。

 意味は分かるな。駿府と江戸の二つで政治なんて。もうこりごりなんや。間で、大久保長安が、いろいろ錬金術をけつかって。果ては、本多正信・正純親子と大久保家の政治闘争。しまいにゃ、「江戸の徳川」と「大阪の豊臣」の大いくさや。あれは、こりごりや。誰も、喜ばん。秀忠公も、本音はそうや。だから、「酒呑み」はなし。「駿河」はいらん。

秀忠『ふむ。策伝め、“本当に誰から伝言をもらってきた”まあワシも、駿府は嫌だが』

天海ら『察するに、大御所が“さっさと(十三)”江戸に留まるなら、“上方”も応援する(ここまでの暗号が解けたと判断する)”ということですな(どんだけ、豊臣びいきなんだ)』


十八:「こぬか」とまちかね

 なべて、上臈(江戸大奥)は(小豆を使う洗濯用粉)“さくぢ”と言うが。内裏では“まちかね”と言う。「もてあつかうこと(扱うこと)」を、“こぬか(小糠)”というからだ。

【一言】こちらの本音も言うたる。上方も、“小豆(おごうの娘)”が手柄を上げるのを「待ってた」んや。“おごうの娘”が懸け橋になるのが、一番ええ。これが上方の総意や。「おごうの娘が身籠った」、そしたら「あんたら親子」を上洛させれた。これで天下も安泰や。


十九:童は風の子

 「童は“風”の子」と世間ではいう。「夫婦の間で生まれた」からだ。

【一言】子供は風の子。“和子の童”は意地でも育てる。上方と関東の間で生まれた子や。


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