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75話 討伐大会

 今日は鍛錬のために平原に来ていた。

 一段落着いた俺とシャルは、サリアとプルミエの手合いを観戦している。

 そんな俺に、騎士団の様子を観察に来たロペラが話しかけてきた。


「魔物討伐大会ぃ?」

「はい。年に一度の討伐大会の時期が近づいています。出てみてはいかがですか?」


 ロペラによると、近々王都で魔物討伐大会が開かれるのだと言う。

 ルールは簡単。一番多くの魔物を討伐したチームが優勝。

 チームは1人から4人で一組とし、制限時間は朝から昼過ぎまでの6時間だそうだ。


「中々面白そうですね」

「ここ数年で王都の恒例行事になりつつあります。お二人も参加してはいかがかと思いまして」


 俺とシャルが組めば、たしかにいいところまではいけそうだ。


「面白そうですね。シャルはどうだ?」

「競争? あたしは負けにゃいにゃ!」


 どうやらシャルもやる気なようだ。


「はぁー、一休みじゃ」


 と、手合いが一段落したプルミエとサリアが俺たちのところへやってきた。


「話は聞かせてもらったぞ。ロペラ、その大会妾も出ていいのかえ?」

「参加は自由ですが、プルミエ様の手を煩わせるような行事ではないですよ。対象場所は平原と森ですからね。おそらくですがサリアさんと訓練していた方が有意義ではないかと」


 なるほど。それでは確かにプルミエには物足りないだろう。

 サリアが「うんうん」と神妙な顔で頷く。


「プルミエさんもやめておいた方がいいですよ。結構な人が参加しますから、誤射の危険も高まりますし。私も参加したいんですけど、夢中になると周りが見えなくなるタイプなので泣いて我慢してるんです。魔物かと思ったら人殺してたみたいなことになったら嫌ですからね~」


(冗談なのか? サリアさんならやりかねないから困る……)


 それを聞いたプルミエは「ふむ……」と考え込む。


「なら、妾も不参加じゃな。その日はサリアを独り占めさせてもらうとしようかの」


 にやりと歯を見せ妖艶な笑顔を浮かべるプルミエ。

 それに対して、サリアは快活な笑顔を顔に浮かべた。


「私に首ったけですか? いや~、照れますね!」

「なら少しは照れた演技でもせえ。それに、悪いが妾の心はアスカだけに向いておるのでの」

「ぐぬぬっ、これは嫉妬の感情……!」


 ふざけている二人は置いておいて、俺はロペラに尋ねる。


「ロペラさんも参加されるんですか?」

「いえ、私はセレシェイラ様の護衛です。我が主も参加者の士気高揚のために見学に行かれますから、私がそばを離れるわけには参りません。ですが、代わりにスヴェルとアイギスが参加しますよ。騎士団の力を見せるために本気でいくでしょうから、お二人も頑張ってください」


(スヴェルとアイギスって、あのツンデレカップル騎士か)


 次世代のホープ二人が出るのならば、俺たちの優勝は難しいかもしれない。


「スヴェルとアイギスが!? アスカ兄ちゃん、借りを返す時がやって来たにゃ! あの二人に吠え面かかせてやるにゃ……!」


 シャルは「にゃひひ」と牙を光らせ邪悪に笑う。その金色の目は打倒騎士団チームに燃えていた。


(そうだよな。最初から諦めてちゃ勝てるものも勝てやしない。……やるからには、目指すは優勝だ!)


「優勝目指して頑張ろうな、シャル」

「あったりまえだにゃ!」


「私もお二人を応援しています。あの二人は勤務態度は全く問題ないですが、私生活でイチャイチャされるのが個人的に癪に障るので……っと」


 ロペラは無表情で口に手を当てる。


「思いっきり私情じゃないですか……」

「先ほどの発言は聞かなかったことにしてください」


 ロペラはそう言い残し、銀髪を風になびかせて王宮へと帰って行った。


「勝つにゃ! 独り身のロペラ姉の為にも!」

「シャル、それはあんまり人前で言うのはやめとこうな?」


 苦笑いをする騎士団の兵士たちに、居た堪れない思いをする俺だった。

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