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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第一章 桜の思い出
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屋上



「ひ、酷い目にあった……」

『大丈夫か? リク』『すこし、からだがあついですね』『すっかり揉みし抱かれてたもんね~』


 結局あの後、指輪と資料と、そして真陽の黒剣を持たされてあの部屋を出た。

 廊下へと出て歩いていくと近くに来たロピアルズらしい人がボク達の宿を教えてくれて外へと出た。

 その途中にルナとシラに心配されたけど、その他の神様も心配しているだろう。ツキはどう考えても心配してない。


『リクの母親。すごい人』

『ホントだぜ。時の神〝クロノス〟とかよ』


 やっぱり、神同士だと相手がなんなのかよくわかるのだろう。

 町並みを眺めてみるとやっぱり騎士が多い。だけど、何人かボクに対して視線を送ってくる人もいた。さっきの決闘を見ていたのだろう。


「こうしてみると、ショウって近未来の世界って感じがする」


 ミュアに連れられて歩いてきた道は商店街も叱りだが、ガラス張りの建物が多く、商店街は人が歩いている姿が一番めに着いたけど、今歩いている道は地面から浮きあがって飛んで動いている車が多かった。

 ミュアが科学の国と言っていた理由が分かる気がする。地面はコンクリートだし、人が歩くような所の一部はエスカレーターの様に動いている部分もあった。そして、地下と言う所もやはりと言うべきかあるようで、ヒスティマに来て初めて地下への階段とエレベーターを見た。周りの城壁が無ければ、何処までもこの光景が続いていそうだ。ショウはかなり広いと思われるために車で移動する人なんて多いのだろう。ただ、ライコウよりはやっぱり広くは無いと思う。


「すごい……」

『りく。なるべく『迷子』にならないようにしましょうね』

「あはは。わかってるから大丈夫だよ。それよりも、宿に行く前にマナちゃん探さないと」


 泣いて出て行ったままのマナをそのままにしておくわけにはいかない。ヘレスティアへと攻めるための資料も持っているし、早めに全員に合流しないといけない。だけど合流をしてもマナがしっかりしていないとだめだ。資料にマナが関わっていなかったとしても、ボクはマナが心配で作戦どころでは絶対にないと思われるからだ。


 何より、幼馴染を放ってはおけない。


 ボクは目を閉じて人の魔力に集中する。今の時代では魔力を納めているのが普通だからこそ、この探し方で十分に探せる。

 集中していくと、近くに――とは言っても数キロだが――大きな魔力を四つ感じた。一つは荒々しい魔力だ。これはキリのだろう。もう一つはおちついた魔力だ。これはソウナの魔力だ。来た道の方にある魔力もあったけど、これは母さんのだろう。とするともう一つ。少し黒く染まりつつも、何か悲しい思いのある魔力。間違いない、マナの魔力だ。


「行こう」


 ここから移動するには少し遠いかもしれない。それに、道なりに行けばちょっと時間がかかりそうだ。身体強化の魔法を使い、蹴っても大丈夫だろう所をいくつかみつくろってボクはその場から跳躍した。建物の壁と壁を蹴りながら屋上まで蹴り上ると、今度はマナの居る場所へと向かって跳んでいった。

 風が耳にかぶさり、長髪がはためいて重く感じるけど二週間前よりも身体強化する力が上がったために一般市民には遠目でしか見れないような速度で跳んでいく。

 マナの魔力が感じる所まで来ると、キリやソウナの魔力も結構近くまで来ていた。もしかして道なりで来ていたのだろうか。空を跳躍して走っていると、一つのビルの屋上に炎の翼を纏ったままの赤いツインテールの少女が立って街を眺めている。

 ボクはその屋上へと降り立つと、たそがれている少女の背中へと向けて名前を呼んだ。


「マナちゃん……」


 ゆっくりと振り向く少女。その目から流れる涙を拭こうともせず、ただただ下へと流れ落ちて行く。


「リクちゃん……? あはは……おかしいな……。魔力は抑えてたハズなのに……」

「抑えていても、〈炎翼〉を纏ったままだといくらでも見つけられますよ?」


 ボクがそう言うと、いまさら気がついたようで、炎の翼を消した。今まで熱気が漂っていた場所に風が吹き、秋らしい寒さを感じると同時に、失った寂しさも感じた。

 風が吹いているも、ボクとマナの間にはそれから一言のやり取りも無く、また背後の町並みへとマナは視線を戻した。

 落ちてしまうかもしれないと頭で思いつつも、その時は〈インフィニットゲート〉を使えば大丈夫だと感じて頭の隅に置いておいた。


 ゆっくりと歩きだし、それからマナの隣へと並んだ。胸元まである手すりのおかげで自然と落ちる事は無いけど、それでも目前が何も無いので少しは怖かった。



 そして何分が過ぎただろうか。不意にマナがポツリポツリと話し始めた。


「おばあちゃんね……。正直、何でこんな人なんだろうって思った時もあった……。恨んだ時も、あったの……」

「え? そんな……どうしてですか?」


 真陽はマナにとても優しかったし、厳しい印象は無かったし、むしろ楽しそうな人だと思った。それに、マナだってそれは満更ではなさそうだったし、むしろ嬉しそうではなかっただろうか。それなのに、本当は恨んでいただなんて、一体どういう事なのだろうか。


「ライコウでは、一番強い人達の事を英名と言った。そしてね? 世間はその英名の子孫ってだけで才能があると思って接してくるの。フィエロと会うまで魔力切れをすぐ起こす弱者なのにね……」


 弱者。確かに、今のマナはボクと再び出会った時よりも何十倍と、何千倍と強くなっているだろう。あの時は本当に魔力切れで何度も気絶していた。


「このぐらいできるだろうって……。おばあちゃんの子なんだからって……出来もしない事をやらされて、周りの期待の目は次第に無くなって行き、差別の対象となってくる。虐めまでには発展しなかったけど、裏では何言われてたんだろうね……」


 遺伝子を子は受け継ぐと言うけど、受け継がない所もある。だけど魔力なんかは受け継ぎやすい。だから期待の目を向けられたのだろう。

 初めてボクが桜花魔法学校に来た時、マナが他のクラスメイトと話さなかったのはこのため? でも、ボクが帰る時はよくマナが腕を引いて……。



 ――そう言えば、マナがボクの腕を引いて帰る時、クラスメイトがそれを止める。その時クラスメイトはマナと普通の会話をしただろうか。



 険悪のムードが流れ、あまり良い仲の様には感じなかった。クラスメイトは全て敵。逆にクラスメイトはマナは敵の様にしていた感じがする。その時は校長が真陽だからマナは贔屓されてるんだろうと思ったクラスメイトが敵と考えていただけかと思っていたが。


「だから、おばあちゃんは好きになれなかった。むしろ嫌いだった。でもね……最近、そう思わなかったよ……? 思えなかったの……」

「それは、どうしてですか?」

「…………自分が、弱かったから。勝手におばあちゃんの所為にして、自分は努力しなかったから……」


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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