Reminiscence 篠桜マナ
視点はマナちゃんです。
小学生を卒業し、そろそろ中学生になる時期だった。
もはや定番となったメンバーのリクと真一と遊んで帰る途中。目の前にウチを照らす光。タイヤの音が鳴り響くと同時、ウチは宙を舞った。
突然の出来事だった。悲鳴もあげれなかった。
左右を見ていなかったという訳ではない。一応は、見た。ただ、道を渡ろうとした場所のすぐ近くに緩やかなカーブがあった。その日は曇天とした天気で日が暮れ始めているために視界が悪かったが、雨は降っていなかった。音は工事がすぐ近くで行われていて、聞こえないような場所だったし、雨が降りそうだったから早く帰ろうと左右を見て渡った時にカーブの方から飛び出してきた車がブレーキを踏んだが、間にあわなかった。
子供の時の体だったためか、その時ウチは撥ねられた場所から数メートルは飛んでいった。ブレーキをしたにもかかわらずそれだけ飛んだのは車がスピード違反をしていたからだろう。
「や、やっちまった……。お、おい君! 大丈夫か?」
車から男が降りてくるけど、ウチの意識は朦朧としていて、声なんてあげれそうもない。
「う、嘘だろ……おい。だ、誰も見てない……よな?」
その姿を死んでしまったと勘違いしたのか、男は怯えて辺りを見回した後、車に乗ってすぐにどこかへと去って行ってしまった。
後でおばあちゃんに話を聞くと、偶然通りかかったおばさんがすぐに救急車を呼んでくれたけど、意識不明の重体。医者も匙を投げるほどに体はボロボロで、もはや助からないと言われたらしい。
そんな時おばあちゃんが、ウチが死ぬまでの間の病室へと入って行き、医者が匙を投げたウチの体に治癒魔法を使った。次の日。ウチは早朝に目が覚めて、医者や両親を驚かせた。
――これだけだったならば、まだウチはヒスティマに関わらなかった。
「あれだけ重症で助からないと思ったのだが……。一日で治るとは。奇跡以上の事が起きていて私にはさっぱり……」
また次の日。退院となったその後。体の中に何かあると感じるようになった。もちろん、魔力だ。
そんなのを感じたその日の夕方。いつものメンバーで遊んでいる最中、リクの白銀の髪を面白がって虐めに来た男子達を真一と一緒に追い払おうとしたその時。ウチは手の内から出た火によって、男子達に火傷を負わせてしまった。
「な、なんだよお前……化け物!」
「火を出すとかお前人間じゃねぇよ!」
その事に驚いたおばあちゃんが、火傷した男子達と一緒に、リクと真一にも記憶操作を行い、ウチは家へと連れられた。
全てを話した。退院したその日からある何かについて話したり、自分が火を出した事も話した。父親は混乱した。母親はなんとなくわかっているような顔をしているが、一番理解していたのはおばあちゃんだった。
「私には……どうする事も出来ないわ……」
「すまない、マナ。出来ればその力を正しい事に使ってくれ」
「決定だねぇ。仕方ないかぁ」
家族会議で話し合いした結果。ウチが地球に居てはまたこんな事になると言って、ヒスティマの学校へと急きょ入学が決まった。中学もまた二人と一緒だと思っていたのに、ここに来て自分はそんな事が出来ないんだなと感じてしまった。
別れたくない。だからおばあちゃんに頼んで記憶を操作してもらった。ウチだけじゃない。町のみんなからの記憶もだ。今考えればカナに協力してもらっていたんだろう。あまりにも迅速で、あまりにも綺麗サッパリ消えていたのだから。
「それじゃあ、夏休みと冬休みには連れて帰ってくるよぉ」
「わかったわ、お母さん」
「マナ。元気で居るんだぞ?」
おばあちゃんに連れられ、ウチはヒスティマに入った。ライコウで見る物は初めての物が多く、真陽が自分の家だと言った豪邸なんかは初め慣れず、とても広い一人部屋なんかはとても寂しく感じた。そして、ライコウにある北央魔法中学校と呼ばれる場所に入学した。
「し、篠桜マナです! 魔法を学ぶのは中学生からになります。よろしくお願いします!」
篠桜。その名字にはまるで魔法が掛けられていたかのようだった。クラスメイト達はウチの自己紹介に驚いて隣の友達とひそひそと話している人が多かった。でも、ガチガチに緊張していたウチはそんな事には気がつかなかった。先生に言われるまま席について、授業が始まった。
魔法の勉強や、歴史の勉強なんかはとても苦戦した。予備知識も無しにそこへと入っているのだから。それでも元々ある学力の高さで、それは全て補えた。中学でもテストなどでは上位、もしくは一位を狙えていた。
だけど、世間が求めるのはそれだけじゃない。初め、クラスメイトはとても優しくしてくれた。楽しかったし、やっていけるだなんて思った。
だけど、それは間違いだった。
「篠桜さん、魔法の使い方上手」
「そう、かな? ありがと~」
初めて使う魔法。適性があったのは火系統だけだ。だけど一段と上手かった。魔法を使うたびに他のクラスメイトが褒めてくる。その場所に居たウチは、やっぱり鼻が高くなってしまった。
「それでは、今日は魔法による模擬戦闘を行います」
先生の指示で、二人一組ずつ分けられて模擬戦闘を行った。だけど、ウチはその時先生に呼ばれなかったせいで戦闘はしなかった。その理由はすぐにわかった。
全ての模擬戦闘が終わった後、ウチはクラス一強い生徒と戦う嵌めになったのだ。
結果はおわかりだろう。ウチは初め善戦してたにも関わらず、魔力切れで敗北をした。そこからだった。
――学校のみんなはウチの事を先祖泣かせって言うようになって来た。
「ねぇ。今日の授業って……」
「…………」
今まで優しくしてくれていたクラスメイトの態度も激変した。たった一日で話しかけてくれる人はいなくなったし話しかけても無視をされた。
そこからは、地獄のような日々だった。先生は英名の子だと言う理由で優遇された環境を保とうとするも、生徒からは英名の子なのに力が無く、優遇されていると言う状況に不満を持って虐めが始まったのは遅くは無かった。
二年と半年。本当にウチはこうなってしまった元凶。おばあちゃんを恨んでしまった。ヒスティマにさえ来なければ。そんな思いがずっと。フィエロと契約するまでずっと思っていた。




