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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第一章 桜の思い出
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圧倒的戦力差

視点ウルシール王からリクです



「な、何と無双の力よ……」

「ありえん……。まさか我々の隊が一瞬で……」


 私とアラレウンド王がそう驚いている間、ライコウ王はニコニコ笑顔で笑っているだけだった。まるで当然とばかりに。

 他の試合も見ていたが、どれもすぐに終わってしまった。

 赤い髪を二つに纏めた女は連続魔法を使い、魔法が絶えることなくゲネテシスの強者を燃やしつくし、青の透き通る髪の女は開始早々数え切れぬほどの狼や鳥、そして兵を召喚してロースクルス兵全てを降伏させた。


 どちらも前代未聞で、あり得ないと言われたほどの事をしている。


 魔法を連続で発動する事は魔力が練れない為に不可能。狼、鳥、そして兵を一回で無限に召喚する事は一人が召喚出来るのが一つなために不可能。更に人を召喚するなど聞いた事が無い。

 そしてライコウ王と同じ白銀の髪の女は開始早々一瞬で高等魔法を発動し、アラレウンド兵を数人残して吹き飛ばした。防御出来た結果がそれだ。それだけならまだよかった。他の人よりも弱いと感じたのだが、残ったアラレウンド兵を倒した後、私の兵に対して、先程放った魔法よりも二倍ほど魔力を込めた魔法を放って瞬殺。まだまだ余裕の表情だったので更に魔力を高めて魔法を放つ事が出来るのだろう。力がまったく計り知れない女だ。

 そして最後の一人。唯一の男。こちらは特に前代未聞と言えるほどの魔法を使っている訳でも無く、魔力が多い訳でもなかった。だが、その身体能力に驚きを隠せず、四人の中でも一番目をみはるものがあった。

 ハーロンは防御に関して何処の国よりも一番自慢できる者だ。頑丈の鎧と盾を備え、向かって来た男の拳に対して、完全に防いだ――かと思われた次の瞬間。



 ――笑いながらその盾と鎧ごと直線的に居た騎士も同じようになって吹き飛ばされていったのだ。



 デタラメな力強さだ。そんな男が他の騎士に恐怖を植えつけながらも全て瞬殺。他の騎士も同じように鎧と盾を粉砕されて立っていたのはデタラメな男だけだった。


「どうかしら? 認めてくれる?」


 にっこりとほほ笑みながら笑いかけてくるライコウ王。その笑みの裏には一体どんな考えが浮かんでいるのか、想像もしたくない。


「何者なのだ……奴等は……」

「これならば、要と言われる理由も納得できる。我々が束になっても勝てないのだからな」


 だけど、あれだけの力があると言う事は、ただの訓練などではあんな力強さなど手に入らないだろう。生と死の間を一体何回行き来すれば手に入ると言うのだ。


「そ♪ ありがと♪ それじゃあ作戦会議と実力を見せる方は終わったわね♪ 細かい内容は資料を送るから、また後でね♪」

「ま、待てライコウ王! 一つ聞かせてもらいたい!」


 さっそうと立ち去ろうとするライコウ王を引きとめて、アラレウンド王は私が考えていた事と同じ事を聞いた。


「どうやったらあんな屈強な戦士を作り上げたのだ? 私には到底あのレベルまで育て上げる事が出来ん……」


 その質問に、ライコウ王は足を止め、くるっと回転してこちらに向くと、顎に人差し指を当てた。


「さぁ? 私が育てた訳じゃないから、わからないわ♪」

「じゃあ誰なのだ! せめて名を――」

「知らないわ♪ あの子たちに訊いてみたらどう? 少なからず答えてくれると思うわよ♪ 名前では無く、ちょっとした強くなるやり方をね♪」


 そう言って、今度こそライコウ王は立ち止まらずに立ち去って行ってしまった。


「アラレウンド王様。騎士たちはこの後、どうされますか……?」


 申し訳なさそうに訊いてきた側近に、アラレウンド王はキッと鋭い目つきで睨んだ後、ため息を履いて力を抜き、一言呟いた。


「……しばらく休ませろ。特訓させるものと思ったが、電子世界でやられると精神疲労が酷いと聞いた。良いな?」

「ハッ!」


 敬礼をして、すぐさま側近の騎士は早歩きで去って行った。

 今すぐにでも特訓させて更に強くさせたかったのはやまやまだったのだろう。だが騎士の休息もしっかりと必要だ。疲れている時に特訓をやっても何の意味も無い。ただ疲れるだけだ。

 その事を私も、アラレウンド王も理解している腕の指示だった。


「聞いたな? 私の兵も同じくだ」

「了解いたしました」


 私の近くに居た騎士にそう言い、私はライコウ王の言った通り、瞬殺と言う二文字がとても相応しいやり方で勝利したライコウの戦士へと向けてその足を進めた。



★★★★★★★★★★



 ボクが目を覚ました時、マナとソウナはすでに終わっていたらしく、目を覚ましてベッドの上で上半身を起こしていた。

 ただ、マナはなぜか腕を組んで頬をふくらましていたが。


「どうかしたんですか? マナちゃん?」

「それがね、リク君。どうやら私とマナさんが同時に目が覚めたのが許せなくてって顔をしているの」

「だって、ウチとソウナさんとじゃ、六十も違うのに……」

「だから私は降伏させたからって言ってるじゃない」


 ソウナは相手を降伏させたのか。ボクもそうすればよかったかな。

 ベッドから降りて、するべき事は終わったので母さんの所へ行こうと思って外へ出ようとする。


「リクちゃん、何処行くの~?」

「母さんの所にです。するべき事はもうやりましたから、宿はどこかと聞こうかと。それに、今のライコウの状況も知りたいですし」


 まだまだやるべき事はたくさんある。二ヶ月と言うのはとても長く、さらに戦争と言えば情報収集は欠かせないだろう。ユミの所では普通に実力行使だったが。


「なら、ウチも行くよ~」「私ももちろん行くわよ?」

「でも、キリさん一人には――」

「俺ももちろん着いてく」


 どうやらいつの間にか起きていたようだ。

 結局、四人全員で母さんの所へと向かうことにしたのだが、一体どこに居るのやら。

 とりあえず、誰かしらに聞こうかと、人を捜そうとしたその時だった。


「君達。少しいいかな?」


 声を掛けられ、ボク達は足を止めて振り返った。

 そこに居たのは青い服を華麗に着こなし、帽子を被っており、顔には藍色の眼鏡を掛けており、その奥の瞳はツリ目で、どこか冷酷さも感じるような男の人が立っていた。

 その男の人の一歩後ろに静かに立ちつくしている男の騎士が二人いた。

 どこかで見たような顔だと思ったその瞬間、会議室で初めは腕を組んで静かにしていた人だと気づく。つまり相手はどこかの国の王様だ。


「は、はい。ボク達でよかったら。一体何ですか?」

「人格は破綻していないようだ。話が出来てよかった」


 人格が破綻していない? 一体彼は何を言っているのだろうか。

 頭にハテナを浮かべるも言葉を待った。


「話がしたい。着いてきてもらえるだろうか」

「お話、ですか? 別にいいですけど……」


 全員で行くことだろうか? そんなふうに考える仕草が後ろで控えていた男に勘違いを生んだようだ。


「おい貴様! まさかウルシール王様直々の誘いを断るつもりか!」

「よせ、バンダム」

「しかし、王」


 バンダムと呼ばれた男は何か不満な所があるようだが、ウルシール王と呼ばれた彼は特に気にした風も無い。


「何か不都合な事でもあるのか?」

「いえ。ボク達全員で行く事でも無いと思いまして。それとも、全員にお話しがあるんですか?」


 そう聞かれて、ちょっと驚いた顔をしたがすぐに苦笑が漏れた。


「それもそうだ。二人ほどでいい。出来れば、中心に居る君とは話がしたいが」

「わかりました。それじゃあ……」

「俺はあんまり好きじゃねぇし、礼儀正しいってことでソウナでいいんじゃねぇか?」


 王の前でも口調を変えないキリはやっぱりバンダムに物凄い形相で睨まれるけどそれを無視して頭の後ろで腕を組んでいる。


「え゛? ウチはキリと一緒にカナさんの所~?」

「そう言うことだ。ついでだけどカナの場所教えてくんねぇかな?」


 ピクッと眉を動かすバンダム。自分の王の前でなければすでにキリに飛びかかっていたかもしれない。


「ライコウ王は、二階の南から四番目が部屋になります。そこにいなければ会議室でしょう」


 後ろに控えるバンダムがウルシール王の代わりに行う。


「サンキュ。ほら行くぞマナ」

「なんで……なんでウチばっかり……」


 若干目が虚ろになっているけど、まぁ大丈夫だろう。苦手意識はあるだろうけど、二人の仲が悪いと言う訳ではないと思うから。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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