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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第一章 桜の思い出
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電子世界で決闘

視点はウルシール王からリクになります。



「よいのかライコウ王よ。すぐに蹴りが着くぞ?」

「かまわないわ♪ むしろ、私の方が一瞬で蹴りをつけちゃうかもよ?」

そんなライコウ王の口ぶりに、こめかみの血管を浮き上がらせるアラレウンド王。

「余裕ぶっているのも今のうちだ」


 腕を組む手に力を込めながら、今にもライコウ王を殴りかかりそうなほど怒っているのが良くわかる。アラレウンド王とは長い付き合いだ。

 炎と水と言うだけあって、昔から両国は仲が悪く、それこそ建国当初から戦争を起こしあっていた。

 だからこそそれぞれの国王は相手の国王の考えている事が良くわかっている。アラレウンド王もウルシール王である私も考え方は似ているのだ。性格こそ違うものの、考えている事は互いに同じだ。


 ――ライコウ王はどうしてそこまで自慢できる戦士を用意しておきながら、ヘレスティアとの戦争で使わなかったのか、だ。


 そんなことぐらい他の王も気がついただろう。いや、ロースクルス王は臆病な上、部下にそう言う事をやらせていると言う情報があるので気がついてはいなかっただろう。


(ライコウで戦争や軍事的な強さを聞いた事は無い。そして我々は戦慣れしている。そのためにたった一人の相手に対する対処法も心得ている。はたしてライコウ王の自慢の戦士は勝つかどうか)


 面白いとばかりに、私は自国が出る戦いの画面へと目を向けた。



★★★★★★★★★★



(数にしてざっと百……)


 ボクは目の前に並んでいる全兵を見渡しながら考えていた。


 三つ驚く事があった。一つ目は予想よりも少ない事と、キリと同じ人数だった事と、そして一度に戦うのが百ではなく五十人、五十人と考えた方が良いだろう事だ。

 陣形は赤の鎧を着た炎の紋章をつけた騎士が密集して盾を構えたり、その奥で魔法を使うだろう人達が待機している。

 だけど青の鎧を着て水の紋章をつけた騎士は一緒に戦うと言うことをせずに、その陣形から少し離れた場所に陣をはっていた。


 どうして一緒に戦わないのか、何か考えがあると普通は思うだろう。だけどそれは簡単な考えだった。

 普段連繋を取っていない騎士と一緒に連繋を取るよりも、いつも連繋を取っている騎士と一緒に連繋を取った方が格段に強いというごく単純な考え方だった。


(赤に攻め入っている間、青が攻めてくる事は無いと考えても良いかな?)

『そう考えるのが普通じゃのぅ。誤って誤射を生むやもしれんからのぅ』


 ルナの声が聞こえてボクはそっと柄に手を添える。


『ねぇリク? 面倒くさいしさ、あたしとルナ使ってちゃっちゃと終わらせない?』

(そうだね。でも、新しく契約してくれたサオ達の力も存分に使わなきゃいけないから、それは出来ないかな)


 ボクは今。両腰にルナとツキ、両腕、両肩にそれぞれ四季の神具を装着して完全装備でいる。

 だが、一瞬で決めるつもりで立っている訳ではない。サオ、ツツ、ソメを扱っていた時間は短いのだ。相手がどれだけ耐えれるか解らないけど、今回はなるべくルナやツキやシラを使わないで戦うつもりだ。

 そのため、メインの魔法の属性は風系統になりそうだが、赤の陣形を見てちょっと決意が揺らぐ。だって盾で完全防御中なのだから。


『それじゃあ、そろそろ始めるよ♪ みんな頑張ってね♪』


 そんな母さんの声が聞こえたかと思うと、ボクと相手の陣営の丁度中間に「ファイブ」と言う機械質な音声と共に、5の数字が出てきた。


 それが除所に無くなって行き――ゼロとなった瞬間、ボクは赤の団体へと向けて走り出した。


「来るぞぉ!」


 指揮を取っているらしき男の言葉と共に、一番前に居る盾の集団が魔法を放った。


「「「「〈フレアガード〉!!」」」」


 全員が魔法に対する防御魔法を自らの盾に発動し、防御するつもりのようだ。

 そんな相手に、ボクは真っ向勝負を仕掛けた。


「行くよサオ、ソメ!」

『赴くままに~』『わかった』


 二人とも風系統の魔法の神だ。それぞれの魔法を組み合わせれば、風の魔法をいくらでも放つ事が可能だろう。



「〈ツイスター〉!」



 膨大なほど膨れ上がった竜巻が、赤の陣形へと向かって突っ込んでいった。



「なんだあれは!?」「高等魔法だぞ!?」「高等なんてもんじゃないぞ!?」「一瞬で、一人で作り上げやがった!?」


 そんな赤の騎士だけでなく、青の騎士からも声が聞こえてきた所で、最前線に居る盾を力強く持って構えていた赤い騎士に衝突した――が。


「うぁああああああ!!」「ぎゃぁああああ!!」


 みな、思い思いの叫び方で吹き飛んでいく騎士が多数いた。


「あ、あれ……?」


 小手調べついでに特異魔法を放たずに風魔法を使ったのだけど、赤い騎士の最前線に居た盾を数名と、後ろの数名を残してその他全て飛んで行ってしまった。


「……まぁ、いっか」


 それだけ自分が強くなった。そう言うことにしておこう。じゃないともっと現実逃避してしまいそうだ。それに、こんな体験をしたのは二度目だ。一回目は電光王国とロースクルスとの戦争で、ほぼ壊滅させてしまったことか。

 ちらりと青の岸の方にも目線をやると、遠くからではよく見えないが、それでも表情が曇っていたり、若干震えている人が見えるような気がする。


「う、嘘だろ……。俺たちの方が優勢の属性だったはずなのに……」


 赤の騎士はもう戦意喪失。盾で防げたと言っても腰まで抜けている者もいる。……いや、違う。約二名ほど臆さず真っ直ぐボクへと目を見据えている人がいる。


「今のを一瞬で……。良いだろう! 行くぞ!」


 一人が大盾を、もう一人がその後ろを走りながら魔法を放ってきたので、ボクはそれを風を操って裂けると、もう一つ魔法を放った。


「〈風拳〉!」


 握った拳を突き出し、それが風圧となって襲いかかる。だがそれは前を走っていた男が大盾の下を地面へと突き刺して完全に踏ん張りを聞かせて防いだ。

 さっきの時もおそらくそうして飛ばされぬように踏ん張ったのだろう。


「〈フレイムボム〉!」


 その大盾で守った後ろから、炎の魔法が発動する。ボクの目の前で爆発する魔法が放たれたが、ボクはそれを爆発する前に防いだ。


「〈真空結界〉」


 空中の酸素や窒素など、空気が一瞬にして無くなった所為で爆発は起こらず、ボクはその状態から魔法を更に追加した。


「〈真空波〉!」


 横に手を薙ぐと、真空だった空間がボクがなぞった空間の通りになり、それが大盾で防ごうとしている男へと衝突した。

 その瞬間、その男だけでなく後ろに居た男までもが咳き込んだ。

 まるで一瞬だけ息が出来なかったかのように。

 そしてその隙をボクは見逃さない。


「〈ストームブラスト〉!」


 先程のような大きな竜巻ではなかったが、たった二人に対する魔法としては少し大きすぎた気がした。

 男たちはその竜巻に飲み込まれていって、どこかへと斬ざまれながら飛んでいった。


 後は、青の騎士だけだ。

 でも、少し時間がかかってしまっているような気がするので、ボクは一撃で決めるため、魔力を先程より倍ぐらい入れた魔法を放った。


「ツツ」

『いつでも行けるぜ!』

「〈タワーフレイム〉!」

「なんだ!?」「地面が熱くッ!?」「これでは盾が意味無い!?」


 次の瞬間、炎の柱が空高く昇った。

 それが治まった頃、ようやく青い騎士たちの姿が現れたけど、誰一人として立っていなかった。


「う、うぅ……」「強ぇ……」「皮膚が焼ける……」


 呻いていると言う事は意識はあるみたいだ。とっさに水の魔法で防いだのだろうか。でも立っていないし、大丈夫かな。

 その時、空中に「WIN」という文字が出てきたとたん、意識が遠のいて次に目を開けた時は初めに電子世界へと飛ばされる前のベッドへと戻っていた。



 ――試合が始まって、約三十秒の出来事であった。

誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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