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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第一章 桜の思い出
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納得出来ないならこういうのはどうだろう?



「さぁ、こちらです」


 ミュアが扉の前に居る兵士に声を掛けて扉を開けさせると、中はとても大きな楕円を描くテーブルに、囲むようにしてあるイスに座る人達が一斉にこちらに向いた。


「お待たせ致しました。例の作戦の(かなめ)である四人を、連れて参りました」


 例の作戦。ライコウに巣くうヘレスティアとの戦争の作戦だろうか。

 だけど、ミュアの言葉と共に、一番奥に座って笑顔でいるカナと、あった事のある蜜、そしてあった事は無いが、眼鏡をかけ、腕を組んで静かにしている一人以外のすべての人の表情に動揺と疑惑、そして怒りがこみ上げていた。


「一体どういう考えをしているのだライコウ王よ!! ヘレスティアとの戦争の要として子供を送り込むつもりか!?」

「そ、そうだぞ! こんな重要な作戦に、子供を、しかも半分以上子供の女を使うなどともってのほかですぞ!?」


 初めの王の言葉が周りの王の動揺や怒りを更に酷くしたのだろう。他の王もどういう事だだの、ふざけるなだの、口々にカナへと避難の言葉を浴びせ始めた。

 どうやらボク達の外見が子供で、しかもボク、マナ、ソウナを見て言っているようだ。

 笑顔になって、静かに怒るも、何とか見えない位置で手を握って我慢することにした。後ろの三人がその様子に気が付いているようで、マナなんかは若干ひきつっている。

 まぁでも、行動に移すなんて事はしない。今この場で怒るとはどういう事か、よくわかっているつもりだ。


「まぁまぁ♪ 子供だ~とか、女だ~とか言う時代はもう遥か彼方に過ぎ去ったのよ? 外見はとっても可愛らしい子達だけど、実力は人間の中でも最強クラスだわ♪」


 ね♪ とウィンクをしながらカナが目を向けてくるも、この面々の中で普段通りで入れるカナにボクは先程まで怒っていた矛先が消え、呆れ顔になっていた。


「最強クラスだと? とてもそうは思えん! ただの小僧小娘ではないか!」


 顔を赤く腫れあがらせ、中でも一番に怒りを現している王がそうどなったと同時。


「静かにしないかアラレウンド王よ」


 今まで腕を組んで黙っていた王が静かに言った。


「しかしウルシール王。お前もこれは納得が出来る所ではないだろう!」


 アラレウンド王と呼ばれたその人は、母さんへと向けていた矛先をウルシール王と呼んだ人へと向けていた。

 しかし、そう切り返されるのは重々承知だったらしい。


「そうともアラレウンド王。どうだろう? 我がウルシール一とニの騎士、アラレウンド一とニの騎士と、そちらのライコウの戦士と言うのは?」


 まったく話が見えてこない。ともかく、その作戦の要と母さんが言っていた人がボク達のような子供で、それが許せないと言った状況なのだろうか。ともかく、ボク達が受け入れられていないと言うのは見てとれる。


「ほぅ。我が国の騎士と協力して、ライコウの戦士と戦うか。よかろう。ライコウ王、そうでなければ我々は納得できんぞ?」


 アラレウンド王が挑戦的な笑みを母さんへと向けた。だけど、母さんは笑顔を絶やさない。むしろその笑みを一層強めたようで……。


「それだと他が納得しないでしょう? キリちゃん♪ 何の数字好き?」

「そうだな。名前に掛けて、切りが良い数字で十」


 急にこちらに話を振って来たのだが、キリは何の動揺も無く答えた。


「マナちゃんは? ソウナちゃんは? リクちゃんは決まってるから答えなくていいわ♪」

「え、えっとぉ……一かな~」

「リク君が無いならラッキーセブンの七でいいわ」


 立て続けに質問をして来て二人とも答えるんだけど、なんかボクだけのけ物にされたみたいで怖い。


「ライコウ王。これは一体何のマネですかな?」


 まるで神父のような帽子をかぶっている人。おそらくロースクルス王がボク達の疑問を汲み取る様に言った。


「ふふん♪ じゃあこうね♪ キリちゃんがハーロンの精鋭百人(、、)、マナちゃんがゲネテシスの精鋭十人(、、)、ソウナちゃんがロースクルスの精鋭七十人(、、、)ね♪」

「えぇ!? 今の戦う人数だったの!?」

「まぁ、予想はしていたけど、十倍されるなんて思わなかったわ……」

「クハハッ。百人か。おもしれぇ」


 マナちゃんがショックを受けているけど二人は、と言うかキリはむしろ嬉々として受け入れていた。


「何と!?」「百人だと!?」「正気ですかな!?」

「正気も正気♪ マジで本気♪」


 カナはやっぱり嬉しそうだったけど、約二名納得のいっていない人がいた。


「我々アラレウンドとウルシールは手を出すな、と?」

「まぁまぁ♪ お二人の国も戦ってもらうわよ♪」


 ちょっと待って。この状況で残ってるのって、後ボクだけなんだけど。


「お二人の国合わせて、十人以上(、、、、)♪ 半々でもいいし、偏ってても良いわ♪」


 堂々たる態度でカナはそう口にしたその瞬間。二人とも口元を初めてポカンと開けた。


「我々の国の軍事力はこの同盟の中でも一、ニを争う力だぞ? その国の力を合わせて戦わせると言うのか? しかも最低基準を十人で最高基準を(、、、、、)無し(、、)とするか」

「だって、何千人いても結果は同じだもの♪」


 その時、アラレウンド王のこめかみに血管が浮き出てくるのと、ウルシール王の口元が笑みに変わるのとが同時に起こった。他の王は全員もれなく口をあんぐりと開けている。


「面白い。場所はどうする? 時間ももったいないし、なるべく同時に出来るようにしよう」

「う~ん、そうねぇ。小姫ちゃん、どうにかなんない?」


 完全に丸投げの母さんだったけど、蜜は丁度良いとばかりに提案した。


「それでしたら、我々が過去の文献から作り上げた電子世界のフィールドにいたしましょう。戦うのは精神のみですが、それでも現実と同じように動けます。死ぬ事はありませんからご安心を」

「良いだろう。場所は何処だ?」

「この城を出たすぐそこのコロッセオです」


 よし。そう言い残し、会議は一時中断として戦士を集めにそれぞれの王が自分の兵士がいるであろう場所へと従者を連れて行ってしまった。


 残されたボク達はと言うと……。


「ふぅ♪ おかえり、四人とも♪」

「おかえりじゃねぇ! こっちは転送されて早々、盗賊に襲われて死にそうになったんだぞ!?」

「そうだよカナさん! ユミさんが来てくれなかったら今頃ウチ達売られてたよ!?」

「でも助かったでしょ♪」

「「助かった以前にそんな場所に転送するな!!」」


 もっともな意見だけど、森の中に転送しなかったら、一体どこへと転送させるつもりだったのか。街だと逆に目立ち過ぎるし、誰もいないような所なんて、むしろないのではないかと思えてくる。だけど、時の神と言うならば、そんな場所いくらでも見つけられるだろう。

 そう言う考えもあって、キリもマナも母さんにそう抗議したのだった。


「良いじゃない♪ あれが一番早く【英雄姫】に警戒を解かせ、強くない事を証明する事が出来る手段だったのよ♪」


 母さんにそう言われ、そう言えばとキリもマナも抗議するのも忘れて考えてしまった。

 確かに、一番初めからユミは友好的だった。普通だったらあんな場所に居ればどうして居るのか、何の目的で来たのかとか聞くだろう。場所は電光王国が一番見え、更に自分達の場所が一番見づらい場所なのだ。


「そう言う事も考えて、かよ。ったく。お前はどんだけ用心深いんだよ……」

「ごめんね♪ 私臆病なの♪」


 その瞬間。ボクの頭の中で小さい頃、母さんに散歩だと言われて連れて行かれた数々の場所がフラッシュバックで映った。

 臆病な人は未知の世界へとずんずん進んでいかないと思う。しかもめちゃくちゃ面白そうに。


 そんなボクの考えとは違うだろうが、キリがボクの代わりに言ってくれた。


「嘘つくな。俺は最近、お前が泣く事を知らない人間に見えてきてんだよ」

「へぇ。それはどうして?」


 にっこりと笑う母さん。そんな顔を見ていると、キリが言った事がようやく理解できたかもしれなかった。


 もしかしてキリは……。

 そう思ったボクはキリの表情を見てみると、今まで見た事が無い様な怒りの表情をして言えるようにも見てとれた。だからこそ焦ったのだ。


「理解のつく説明をしてもらいてぇ。何であの時、真陽を見ご――」

「キリさん!」


 言葉を切って、ボクはキリの腕を掴んだ。

 自分が何を言おうとしていたのか、ようやく気がつき、口元を抑えてちらりとマナの表情をうかがった。


「真陽? おばあちゃんがどうかしたの~?」

「さぁ? わからないわ。それよりカナさん、この後私達は何処へ向かえばいいのかしら?」


 マナの予想できた質問をソウナが華麗にスルーする。

 母さんはまだ話していないのか、とボクとキリに目を向けていたが、キリは小さく舌打ちしただけで何も言わなかった。

 だけど、今マナに真陽が死んでしまった事を話すと次の決闘に支障がきたすと考えた母さんは特に何も言わなかった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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