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ヒスティマⅥ  作者: 長谷川 レン
第二章 連合軍vsヘレスティア
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悪意の魔力

視点ソウナですよ~。



「暇ね」


 私は狼の背中に横乗りで座り、悠然と道路の真ん中を数人の全身甲冑の騎士を引きつれて行進している。迫ってくる敵や魔法は周りに居る数人の騎士が振り払い、気絶させて行く。

 この全身甲冑の騎士は私が呼び出したものであり、ディスの力でもある。今の所メルムの力を使う必要は無い。


「そうおっしゃらないでください主殿。相手は必死に戦っておられると思われますから」


 私がそう呟いて居たら、一番近くに居た騎士が話しかけてくる。私の魔力が上がり、更に数人と言う事も会って騎士に意志が宿っているようだ。今の魔力なら、数千は召喚し、意志を宿らせる事が出来るのだから怖い。


「の割には簡単に蹴散らせるわ。他の人もたぶん同じでしょ。こうなると、私達って電光王国があった時期に毒されてるわ」

「仕方ありません。なにせあのレベルは神をも凌ぐ力の持ち主ばかりでしたので。それに今はその時の悪魔との戦争で神様は疲弊しております」


 七千年前以上は本当に鬼畜と言うべき時代だろう。あの場所からよく帰ってこれたものだ。あの時代はなんでも魔法で出来たのだから。ちょっとした物を作る事から、時間を操る事まで。あの人らが、この時代にきたら天災と言われても頷いてしまう。


「それにしても、名付きぐらい来ないかしら? 今の内に一人ぐらいは倒したいのだけど」

『そう言ってやるな。名付きは人数が少ないのだからな』

「私達よりは多いわ。二倍。いや、三倍ぐらいは居るわね」


 自分の力がどれだけあいつ等に通用するか分からない。執事との戦いにリクが来てくれなければ明らかに防戦一方でじり貧だったのだから。最後の最後で勝ちが見えてきたかなと行った所で執事はまだ切り札を隠しているような事を言っていた。

 考えながらそのまま進んでいくと、ふと目の前に違和感を感じた。

 それと同時に、座っていた狼と騎士たちの行進が止まる。


「この魔力……。そうよね。普通よね」


 私が止まっていると、後ろからついてきていた二つの軍の一部が止まる。他の部分は横へと散開していくので姿は消えて行く。

 その二つの軍の内、一方の軍から一人が前へと出て来て私へ声を掛けてくる。


「ソウナ嬢。どうなされた?」


 声を掛けてきたのはウルシールの王。王様が何故こんな最前線に居るかとか思うけど、元々ウルシールとアラレウンドは武人なのだから当然かなどと思い、言葉を返す。


「ウルシール王が敬語なんて使うべきじゃないわ」

「フフ。これは失礼。だが、それだけの価値が君達にはあるのだ。野良であれば、是非ともウチに来ていただきたい所だ」

「そう……。残念だけど、私はリク君の元を離れる気は無いわ。まだ恩返しもしていないしね」

「恩返し? ソウナ嬢はリク嬢に恩を受けているのか」


 私はその事に関してはノーコメントと言うように沈黙していると、ウルシール王は諦めたようにして話を変えた。


「それより、どうした?」

「面白い敵よ。ほら」


 私がそう言って前に向くと、そこにゆっくりと。ぬちゃっと、歩いてくる悪魔(、、)が見えた。


「な、なんだあれは!?」


 後ろに待機していた兵士たちが一早く気がつき動揺を隠せずに居る。


「あれは……」

「悪魔よ。と言っても、見た所ただのなりそこねだと思うわ。詳しくないけど」


 人の姿をして居ながら、人の姿をしていない。まるで液体が意志を持って人の姿をしようとしているように見える。


「悪魔だと!? そんな味方がヘレスティアに!?」

「でも少し変ね。まさかあれが幻魔とか言わないわよね? グレムリンやシャドウデビルと同じ黒い魔力をしていながら、いくらなんでも数が多いわ」


 今まで一体一体しか出てこなかったのに、目の前に見える敵は同じ姿をして居ながらそれが数百は居そうなほどだ。ヘレスティアの兵士がうろたえながら逃げるがその前にその悪魔が取り込んでいく。まるで食べているかのように見えるその姿に、さすがに嫌気が差す。父親が悪魔に殺されたと言うのもあって、余計にだ。


「さすがに見ていて気分が良いものでは無いわ。すぐに片付けるわ。ウルフ!」

「ガウッ」


 姿勢を戻し、私の号令と共に、狼が吠えて走りだした。ディスを構え、周りに浮かぶスフィア。メルムにも魔力を込めていつでも放つ事が出来るようにする。もし取り込まれそうになった時に保険だ。


「ォォォォ……」


 会話が出来そうもない悪魔が私に気がついてこちらに迫ってくるけどその足はやはり遅い。ぬちゃ、ぬちゃ、と音を立ててくる。

 私は遠慮なしにウルフを前進させ腕のような所を斬り払い、胴体を真っ二つに斬り裂く。ほとんど抵抗無くブツ切りにできて本当に液体のように感じるが数が数なだけに無視して次々と斬り裂いていく。

 騎士にも手伝わせて数を減らしていけばすぐ終わると思っていたが、そう簡単に行かないらしい。液体のような体と言うだけあって、やはりと言うべきか、斬られてもまた集まって復活した。


「再生能力が厄介ね。メルム、魔力借りるわ」

『断らなくても遠慮なさらず』

「ありがと。〈アドウェルサス・レメディウム〉!」


 スフィアから魔法を発動させ、黒い霧が敵を包んでいく。私はその霧に包まれても平気だが、敵はそうはいかなかった。


「グ、ゥ……ォ……ォ……」


 霧に触れた瞬間、突如敵が呻き始めた。体の動きが更に悪くなり、液体の体が自分から自壊し始めた。


「ふふ。貴方達も一応斬られたという事実は残るみたいね」


 私はその後ろからガラ空きの背後から斬り裂き――ベチャベチャ。

 その場に黒い水溜まりの如くバラバラになった。再び集まろうとしたが、なぜか集まろうとするたびに体がバラバラにぶちまけられ、元の体に戻る事なく徐々に動きが悪くなり、しまいには動かなくなった。


「兵士よりは厄介だけど、過去に起きた傷口を永遠に広げれば楽に倒せるわね。とすれば……後は頼むわ」

「「「承知」」」


 周りに居る騎士たちが黒い人型の液体を斬り始めた。私は水溜まりになった悪魔から次々と黒い霧を浴びせて行き、しまいには全ての悪魔を倒した。


「少し時間を掛けてしまったかしら?」


 目にかかる髪を首後ろに手で流し、後ろにオーケーサインを送る。

 そうすると私の後ろまで歩いてくるが、少し止めるようウルシール王に言う。


「ちょっと止まって」

「まだ何かあるのか?」

「ええ。これ以上先に悪魔がいるとなると、今の貴方達に勝ち目は無いわ」

「ではどうするのだ? 引き下がる事は出来まい」

「こうするのよ。〈災いの加護〉」


 私が兵士全員に先程の魔法の加護を与える。たぶん本人たちは影響無いと思うが、これで悪魔を斬った時後の再生力を無力化出来るだろう。


「これで大丈夫よ。悪魔を切る事も出来るから、悪魔が出て来ても落ち着いて対処して」

「不思議な魔力が私達の周りを覆うように……。これが悪魔を倒す魔力か」

「たぶん、ここから先は人よりも悪魔を相手すると思うわ。気をつけてね」


 私はそう言うと、ウルフを騎士分召喚し、その上に乗る様に指示。鳥も召喚し、いくつかを偵察に向かわせる。何か危険があればそれで知らせ、私が魔力を送れば騎士が現れるので安全はこれで保たれるだろう。


「これ以上の悪魔の死者はゼロで行かないとね。行くわよ」

「「「了解」」」


 ウルフが走り出すと、すぐに後ろに居たウルシール王とその軍、ゲネテシス軍が小さくなって行った。

 それと同時、前からゆっくりと迫ってくる悪魔が大きくなってくる。


「いくらなんでも数が多いわ。やっぱりこいつら、幻魔なんじゃないかしら?」

『分からない。僕もあんな悪魔は見た事ないし、幻魔も見た事は無い』

『私も同じですソウナ様』


 では一体何? あれは悪魔でも無ければ幻魔でも無いと言う事?

 いや、2人が知らないと言う事もある。つまりローマ神話の悪魔でも、ギリシア神話の悪魔でも無いと言う事。


(一体どこの悪魔……?)


 液体の様なその姿に粉々になっても元に戻る再生力。だけどそれだけの特徴だけじゃ、私はほんの少しもわからなかった。

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