ホテル到着
宿へ到着し、受付に名前を出すとお金は払われているからと行って、鍵のカードを四つ渡された。どうやら一人一部屋をあてがわれているようで少しホッとした。
最近、女性と一緒に居ると緊張するのはもちろんの事、なぜかキリと二人で居てもそうなってしまう。男性と言う事で安心はするけど少し変だ。ただ自分が指輪を外している時は別に何とも思わないので大丈夫なのだけど、一体どうした事だろうか。
宿はロイヤルホテルのような感じでとても煌びやかだ。一度は住んでみたいと思うような場所だけどボクはあまり好きじゃないかなと思う。
「それじゃあ、ここで一旦お別れですね。後でボクの部屋に来てもらえますか? 作戦と行っていた資料を母さんから預かっていますので」
「わかったわ」
「ところで、さっきっからそこで見てる奴どうする?」
キリがそう言うと、ビクッと肩を揺らした人をボク達は注目した。ちなみに全員気がついていた。柱の影からこちらをこっそりと見ていたら怪しいと思わずにはいられない。
だが気がついていないと思われているらしく、いまだに出てこようとしてこない。むしろ新聞の端が少し見えているのでどうやら知らないふりをしているようだ。
「……何か用なのかと思いましたけど、来る気配も無いですし行きましょう」
「子供三人に対して、臆病な人ね」
「まったくだな」
良い様に言われて少し動揺したのか、新聞が揺れる。それでも出ては来ないのでエレベーターではなく、階段を使って上へと昇って行った。カードの番号を見ていないのでエレベーターでなければ階までついてくる事は無いだろう。一つ一つ調べるならまた別の対策を取らなければいけないが。
ボクとキリが七階で留まり、ソウナは更に上へと向かって行った。
カードに書いてあるのが、ボクは757号室。キリが758号室。ソウナとマナはそれぞれ842号室と843号室だった。別に決まっている訳ではないが、普通にカードを分けた時にそうやって受け取っただけだ。
扉の鍵を開けて入る。中はとても広く、一人が使うには少しさびしいと感じるような場所だったけど、ある事に気がついて行動に移した。
扉は自動で鍵が掛けれるタイプのようで、すでに鍵がかかっている。カーテンも締めたし、大丈夫だろうと言った所で呼んだ。
「みんな、出て来ていいよ?」
そう言うと、ボクの体から光が発せられてベッドやらイスやらの上に飛んだ後、人の形となる。
寂しいので、ボクが契約している神様を全員呼び出したのだ。
「ふむ。こうして地に足をつけるのも久しぶりじゃのぅ。おっと床の上か」
「さいごにあしをつけたのは『二ヶ月』まえでしたからですね?」
「それにしても、二ヶ月経ったら一気に神様増えたね。さすがリク様! そして是非とも料理をふるまっていただきたい!」
「なんで急に敬語になるんだぜ?」
「すぅ……。すぅ……」
「…………」
ソメがボクに座る様に上目で訴えてくるので仕方なく座った所、嬉しそうにボクの膝の上に乗って来た。もう指定された席、と行った所らしい。
ちなみに最後から二番目の台詞はサオがベッドで寝ている寝息だ。春と正反対である秋では起きているのも辛いのだろう。シラは夏でも起きざるを得なかったので少し反省。
一人だと広いと思った空間が一気にせまくなって全員を呼ばなかった方が良いかなと少し考えてしまう。だけど差別はしたくは無かったので別にいいかと自分では決めた。
「それより、これからキリ達が来るのではあるまいか? 大事な作戦なのじゃろう? 妾達を呼んでも大丈夫じゃったのか?」
「ルナ達も関係ないってわけじゃないし、それに後三人くらいならまだ入ると思うから」
この時、全員がボク達よりも幼い少女の姿でよかったと思った。大人の女性だったらたぶんこれで満員だ。座る所があっても、移動する事が出来そうもないと思う。
ボク達ぐらいなら後三人いても自由とは行かなくても動き回る事は出来る。
呼び出してからそう時間は掛からなかった時に、部屋の扉がノックされる。どちらか来たんだろうと思ってボクはソメを隣へと避けさせると部屋の扉を開けた。
「来たぞ」
「あ、キリさん。どうぞ入ってください」
やっぱり隣の部屋なだけはあるのか、早くもキリがボクの部屋へとやって来た。
まだソウナは来ないかと思って廊下を見るけど、まだくる気配が無い。魔力は上に……は無い? 下? 何やってるんだろう?
「さっさと扉締めないのか?」
「いえ、ソウナさんは何してるんでしょう?」
「魔力は下にあるな。まぁ何があっても大丈夫だろ」
キリと話しながら扉は閉めて、ボクはまたベッドに戻った。ソメはいそいそと膝の上に乗ってくる。
「それより、先に作戦内容の資料って奴を見せてくんねぇか?」
「え? あ、はい。どうぞ」
〈ボックス〉の別空間から厚い資料を取り出すと、キリが一瞬げんなりした様な表情をするけど、素直にそれを受け取って中身を見始める。
すると特に何もする事が無くなったのでしばらく脚をブラブラとさせながら遊んでいると、ソメがボクの膝から降りてその脚に当たろうとして来たので止めた。
「ソメ何してるの……」
[二ヶ月]
ボクの目の前でソメが紙を渡してきた。
ちょっと呆れた笑みを返してから、どこ吹く風でキリの見ている資料へと見てみた。
するとジーっと見続けるソメ。これ、叩いたりしないとずっと続ける気だろうか。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………はぁ」
根気負けしたのはボクの方だった。脚でソメの胸辺りでも蹴っておけば良いかななんて思ってあげたその時。ソメが自分から避けて、ボクは驚いた拍子にソメの顎を蹴りあげてしまった。
「え、ちょ、大丈夫ソメ!?」
魔力は込めなかったけど、結構強めに振り上げたためにとても痛かったはずだ。しかも顎。大丈夫かと思って心配すると――。
「…………良い。もっと、して……?」
うん。もう何も心配しない。
こういう所を見ると、ボクは適応能力が高いのだろうかと思う。
悶えているソメを本格的に放置した所で扉がノックされた。
「リク君。ここ?」
「はい。今開けます」
ボクがそう言って扉を開けた時。
――ソウナが両手一杯にお菓子を持っている姿が見えた。
ソウナの傍らを見てみると、そこでは狼が籠の取っ手を口にくわえていて、その中に飲み物まで入っている。
「お茶しながらでもいいかしら?」




