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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
長安編
151/155

番外編:天将の転機4

更新が何時の間にか1ヶ月も停滞していて申し訳ありません!!


それから遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。


今年もどうか宜しくお願いします!!

曹操・・・・・・・


その名を聞いて呂布は眼を見張るが、娘の言う事は間違っていないと思う。


曹操こと曹孟徳は生まれが沛国譙県(現在の安徽省亳州市)で、政治を始め詩人、兵法家としても業績を幾つも残した傑人である。


今の時代では三国志だから北の大国である魏の礎を築いた乱世の奸雄なる評価が的を射ているだろう。


とは言え・・・・・・長安に入る前に彼と、その軍団は呂布によって打ち負かされて連合軍から脱落した身である。


そんな人物---打ち負かした男の所へ身を寄せるのか?


「あら、厚顔無恥と思っていたけど意外と考えているのね」


娘---セラスは呂布を見て小さく嗤った。


「抜かせ。しかし、どう接する?あの男は貴様の存在を知らん筈だ。それに俺は奴を負かした身だ。つまり遺恨の関係にあるんだぞ」


如何に曹操とは言え打ち負かして間もない自分達を傍に寄せる可能性は低い。


仮に曹操が気にしなくても周りは違い、運が悪ければ遺恨を返されてしまう。


「大丈夫よ。あの男なら少なくとも利用価値が・・・・・実力があれば簡単には殺さないわ。それに私が居るわ」


「随分と自信あり気だが・・・・・どう落とすのだ?」


敢えて説得などという言葉を使わない辺り呂布の底意地の悪さを見せるが、彼から言わせればセラスに対する細やかな嫌がらせだった。


「別に。ただ、姉上を物にしたいなら手を貸せ。そう言う積りよ」


「なにぃ?」


呂布はセラスの言葉に耳を疑った。


あの男も夜姫を欲しているのか?!


「別に驚く事じゃないでしょ?姉上は容姿も良いし、天の姫と言われているんだもの」


男なら誰しも欲しがるだろう、とセラスは言い呂布は押し黙るがこう言い返した。


「しかし、貴様が本物だ。そして曹操の所へ身を寄せてからはどうするのだ?」


「つまり先ず誰を倒すか、と聞きたいのね?」


「そうだ。俺の意見を言わせてもらえるならば・・・・孫堅か、袁紹だ」


「その理由は?」


「孫堅は董卓も恐れた武勇を誇り、袁紹は曹操と対等の戦力等を保持している。本当なら貴様の手駒の一つになっていただろうが、な」


「なるほどね。でも・・・・私は劉備を先に始末したいの」


劉備を・・・・・・・?


「何故だ?彼奴は義勇軍の長で土地も無ければ親族も殆ど居ない。まぁ、関羽と張飛という歯応えのある手駒は居るがな」


「そこよ。そこが私には・・・・・脅威に映るの」


セラスは少し間を置いてから言うが、力が込められていた事に呂布は気付く。


「土地も親族も居ないが、手駒が居る所に脅威を感じるのか?」


「えぇ。姉上と似て通じる所があるのよ・・・・・あの男には」


「つまり・・・・・夜姫も劉備と似たような状況になった事があるのか?」


呂布は夜姫という人物名を聞いて強い興味を抱き問い質すように尋ねた。


「あるわよ。私が追い詰めたんだもの」


「余程・・・・夜姫が嫌いなのだな」


実の姉を自分の手で追い詰めたと悪びれもせず言うセラスに呂布は改めて・・・・・2人の姉妹仲は最悪だと思い知らされた。


「私の事はどうだって良いわ。話を戻すと私は劉備を先に始末したいの」


「恐れながらセラス様。劉備玄徳殿を倒すのは曹孟徳様の所へ身を寄せては無理かと・・・・・・・・」


ここで張遼が前に出てセラスに進言した。


「どうして?」


「ハッ。曹孟徳様は実に良く出来た人物であり、そういう人物である為か・・・・優れた人材を集める事が趣味みたいな所があるのです」


これは曹操だけではなく歴史上の人物を調べれば似たり寄ったりな者は大勢いた。


彼等としては自分の国を更に強固に繁栄させたい面もあるし、敵に渡したくない、または敵にしたくない面もあったに違いない。


そこを張遼はセラスに説明した。


「なるほどね。じゃあ聞くけど・・・・もし、私と呂布が曹操の所へ行ったらどうなると思う?」


「恐らくセラス様は傍に置きましょう。呂布様に至っては遺恨もある事を考えますと、先ずは客将として迎え様子を見るかと」


「つまり戦などがあれば出して改めて実力と忠誠心らを試すという訳ね?」


「御意。私が曹孟徳様の立場なら・・・・・そうします」


これを聞いてセラスも己の立場ならやる、と思ったのか暫し考えた。


「・・・・・取り敢えず様子見が良いかしらね?」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


セラスの独白に呂布も張遼も無言になるが、己の立場を考えれば様子見が良いと判断したようだ。


「俺は長安へ行き、使えそうな物を探して来る」


呂布は一先ず思考を中断し部下を率いて長安へ向かい、セラスと張遼は残される形になった。


「・・・・・・・・」


残された張遼は無言でセラスを見る。


主人が如何なる結論を下すか・・・・・それは主人が決める事。


先ほど自分は助言をしたから後は主人次第という所だろうか?


それを知っているのか、セラスも敢えて口を開かず無言で考えを巡らす。


暫し沈黙が続いたが・・・・・・徐にセラスは口を開いた。


「予定変更よ。長安を根城にしましょう」


「と言いますと?」


「長安を根城にして力を蓄えるのよ。呂布の方は自分の生まれた故郷へ行かせるわ」


考えてみれば呂布と董卓の仲が拗れたのは夜姫だけではないだろう。


「きっと生まれ育った土地が違う者同士の派閥争いもあったんじゃない?」


セラスに問われた張遼は思い出したように頷いた。


「仰る通りです。申し訳ありません・・・・・言い忘れてしまい」


「良いのよ。貴方の事だから呂布陣に加わっていても派閥争いなんて関係なかったんでしょ?」


図星を突かれて張遼は無言で首を垂れた。


それを愉快そうにセラスは見ながらも何処からともなく扇を取り出した。


「長安を再構築して勢力を拡大しましょう。その過程で曹操に接近するのよ」


「御意に。ですが、誰が長安を治めるのですか?遷都したとは言え今も漢王朝は生きておりますが」


「貴方が治めなさい。私はあくまでも神輿となるわ」


「!?」


この言葉に張遼は眼を見開く。


自分が・・・・・この長安を治める?


「漢王朝は何かしら関係を持とうと近付いて来るでしょうけど、私はそういう輩が嫌いなの。だから、貴方が相手をしなさい」


天の姫を護る者として・・・・・・・・


「ですが、貴方様の姉君の武勇は多少なりとも広まっております。ここについては?」


「力を使いすぎて休養中と言いなさい。向こうも殆ど噂程度しか知らないから大丈夫よ」


確かに一理あるが・・・・・・・・・


「私ごときで宜しいのですか?まだ新参者ですが」


「新参者だからこそよ」


意味あり気な言葉に張遼は直ぐ理解した。


なるほど・・・・・新参者だからこそ自分を試す訳だ。


「理解したようね?」


「はい。この張遼、貴女様の期待に応えてみせます。古参の臣下が来ても見下されぬように」


張遼はセラスの目前で跪き臣下の礼を取り言葉を放った。


新参者を試すのはよくある。


見事に働けば認められるが、失敗すれば主人の顔を潰す事になるが・・・・・・・・これほど男心を擽られる事はないだろう。


「セラス様、貴女様が何不自由なく暮らせるように荒廃した長安を復興させてみせますので、どうか御待ち下さい」


「良い返事ね。でも、私は姉上ほど気長じゃないから急いでね?」


「ハッ!!」


張遼の力強い声にセラスは満足気に頷く。


しかし、心中は穏やかでなかった。


『愛しい方・・・・・貴方は今も姉上の傍に居るんですか?』


あの場面を見たせいで自分を見損なったのは否定できない。


否定できないが、あの後で男を処断し謝罪する積りだったが・・・・・あの男は自分の所から去ってしまった。


『愛しい方、貴方を取り戻す為ならば私は何でもする女です。それを改めて教えて上げます』


貴方が仕える姉を打ち倒して・・・・・・・・・


暗い情念をセラスは心中で燃やしながらも長安復興に燃える張遼を試すように見下ろした。


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