番外編:天将の転機3
更新が遅れて申し訳ありませんでした!!
えと・・・今後の流れは後数話ほど呂布達の話になり、それから曹操達の話になると思います。
それから義勇軍たちに戻すとなりますが、夜姫の過去とかを書くかもしれません。
新しい主人の名を口にした張遼は静かに立ち上がった。
「我が主、これよりどうなさいますか?」
「あら、つれないわね。セレスティアと呼んで」
「ですが、おいそれと主人の名を呼ぶのは・・・・・・・」
「嗚呼、そうね。この時代だと本名とかを言うのは良くないのよね?」
どうしましょうか?
セレスティアと呼ばれた娘は困ったように言うが、それは張遼を困らせているに過ぎない。
「余り私で戯れないで下さい。そのような真似事は嫌いなのです」
「なら慣れなさい。主人の戯事に付き合うのは臣下の宿命よ」
「・・・・努力します」
張遼は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら頷くが、それすらセレスティアには楽しい光景だったのか笑みを浮かべる。
「やっぱり貴方って面白いわね。まぁ、それはそうと・・・・では、皆の前ではこう言いなさい」
セラス様・・・・・・・
「その名は?」
「私のミドル・ネーム。簡単に言えば貴方達の字という所よ」
「分かりました。では、セラス様。今後はどうなさいますか?」
「先ずは呂布の残存兵力の確認ね。それから使えそうな物が長安にないか調べて」
「と言いますと・・・・・資金になり得る物、ですか?」
「えぇ。私の方も・・・・・・この世界に来て日は浅いの。だから直ぐには力が使えないのよ」
「では、今以上に力が使えるのですか・・・・・・・」
張遼は驚くべき事を聞いたが、セレスティアは妖艶に微笑んだ。
「えぇ、そうよ。それに部下も居るわ。ただ、姉上みたいに直ぐには来てくれないのよ」
扱い辛い部下たちだ、とセレスティアは語るが張遼から見ると「そいつ等も駒」としか見えなかった。
「貴方って意外と酷いわね?私を誰も愛さない女と思うんだから」
「失礼しました。ですが、私には・・・・そう見えたので」
「うふふふ・・・・呂布と違って思慮深いわね。直言するのに荒々しさはないくせに的を射て耳に染みるわ」
「時には耳が痛い言葉でも言い王を正しき道へ誘うのが臣下では?」
「その通りよ。やっぱり貴方は臣下に出来て良かったわ。じゃあ・・・・・そろそろ行きましょうか?」
呂布が煩いだろうから、とセレスティアは言い張遼は頷いた。
そしてセレスティアが指を鳴らすと元の場所に戻り、呂布が腕を組んで立っていた。
「で、これからどうする?」
「先ずは残存兵力の確認をして」
「もうやった・・・・残存兵力は僅か3万だ」
「3万ねぇ・・・・・で、私の残存兵力も合わせれば10万は下らないわね」
「あのような民草共が戦力になるのか?」
「なるわよ・・・・・少なくとも生身の人間より、ね」
「・・・・・・・・」
呂布は娘の言葉に嫌な気分を覚えずにはいられなかった。
しかし、言っている事は正しい。
生前は娘の言う通り生身の人間でしかなかったが・・・・・この娘に蘇生された事で恐らくは自分が指揮する兵達より強くなっているだろう。
それが・・・・・嫌な気分だ。
この娘が力を与えた事で今まで辛く苦しい稽古をして身に付けた自分達が容易く負ける。
そんな現実が呂布は嫌であり、気に入らなかったのだろう。
「意外と部下思いなのね?」
「・・・・余計な世話だ。それで夜姫は何処に行ったんだ?」
「恐らく・・・・いえ、確実に自分の古巣に帰ったわよ。一時」
一時?
「どういう事だ?」
「そのままの意味よ。今の姉上では古巣に帰れるのは一時だけ」
「・・・・・まだ力を完全に戻していないから、か」
呂布は暫し間を置いた後に答えを口にした。
「えぇ、その通りよ。だから今の内に叩いておきたいの。もし、力を完全に取り戻してでもすれば・・・厄介だもの」
「以前も似たような事を言っていたが、この際だから聞く・・・・・夜姫が従える軍団の規模は?」
たった4名・・・・・いや、5人と、数匹の獣たちだけでも十分すぎる戦力だったのは長安の戦で理解した。
だからこそ呂布は力を完全に戻した時の戦力を知りたかった。
「そうね・・・・この国だけではなく大陸を全て合わせた戦力でも敵わないわ」
何とも凄い言葉だが、呂布達にとっては十分すぎる言葉だったのは沈黙で理解できる。
「でも安心しなさい。私にだって軍団は居るもの」
「軍団?使い捨ての駒じゃないのか?」
「いいえ。ちゃんとした軍団よ。まぁ・・・・・あの者達は駒に過ぎないけど」
「・・・・・・・・」
呂布は娘の言葉に怒りを覚えた。
娘は先ほど長安で戦死した味方と民草達を生き返らせたが、その元自分の部下達を使い捨ての駒と称した。
如何に今は娘の物だろうと・・・・・気に入らない。
「そう怒らないでよ」
「ふんっ・・・・・それで貴様の軍団とやらは何時になったら来るんだ?」
呂布は猫撫で声で謝罪する娘を胸糞悪く思いながらも口では軍団の事を尋ねた。
「まだ分からないわ。と言っても・・・・・私の方は“太陽”なの」
「太陽?」
「えぇ、そうよ。夜に比べれば圧倒的に力強い太陽よ」
「・・・・・なるほど。では、貴様の事は太陽姫などと呼べば良いのか?」
「貴方ってネーミングセンスが無さ過ぎるわね。どうせなら日の姫とか、天日の君とかで呼んでよ」
「ふんっ。俺は夜姫が好みでな。妹である貴様の名など適当で良い」
「御言葉ですが呂布様。それは些か女子に対して失礼極まりないかと・・・・・・・・」
ここで張遼が前に出て来た。
「張遼か・・・・この女に誑かされたか?」
見れば張遼の身体からは得体の知れない気が出ている。
それを目敏く呂布は指摘したが、張遼は「いいえ」と答えた。
「まぁ良い。なし崩し的に貴様は俺に仕えたからな」
「・・・・・・・」
張遼は呂布の皮肉に無言となるしかなかった。
言われるまでもなく自分は流されるがままに呂布に仕えていたから仕方ない皮肉なのだ。
しかし、新たな主人は違っていた。
「呂布。この張遼は私の臣下となったわ。それ以上の言葉は許さなくてよ?」
新たな主人---セレスティアが呂布にドスの利いた言葉を放った。
これに呂布は少なからず驚いた。
何せ目の前の娘は自分以外は全て駒みたいに見下ろす性格で誰かの為に怒るなんて・・・・・・見た事がない。
にも拘らず張遼に皮肉を言った事に怒るのだから・・・・・・・・・
「何よ、私が他人の為に怒るのが珍しいの?」
「あぁ、珍しいな。夜姫は怒るが、貴様の場合は違うからな」
しかし、その眼を見て改めて確信した。
「やはり貴様と夜姫は姉妹だな。如何に嫌おうと血は・・・・争う事は出来ん」
血が外見よりも家族の印となる。
「なんて言葉もあるからな。とは言え俺を怒るのは筋違いだ。俺は本当の事を言っただけだからな」
「えぇ、そうね。でも、私は筋違いだろうが何だろうが・・・・・自分が気に入らない事に関しては許さないのよ」
「ふっ・・・・如何にも夜姫が言いそうな言葉だ。それで天日の君よ。今後はどうする?」
呂布は夜姫の名を出す度に対抗心を燃やす娘を心中で嘲笑いながらも・・・・・・時を見極めて今後の事を尋ねた。
「張遼にも言ったけど長安から使える物を全て取って来て。その後は野晒しで良いわ」
「復興はしなくて良いのか?ここを拠点にすれば他の勢力にも顔が利くし、漢王朝も利用できるぞ」
「私は漢王朝に興味は無いの。それに使えそうに見えて・・・・殆ど使えないわ」
既に沈む太陽の如き漢王朝を利用した所で高が知れている。
「それに向こうも私を利用しようとするわ。生憎と私はオカマの御守が大嫌いなの」
「では流浪でもするのか?」
「いいえ。流浪なんて趣味じゃないから・・・・・曹操の所へ行きましょう」