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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
長安編
135/155

第五十八幕:道化の時間稼ぎ

更新が遅れました。(´・ω・`)


ですが、もう直ぐ長安編は完結する予定です!!

燃え盛る長安の都と、その炎が少しずつ迫って来た城。


対照的な建物同士だが、何れは運命を共にする。


そんな城の中では大勢の兵達が入り乱れて混戦状態に陥っていた。


反董卓連合軍と董卓軍だ。


つい先日、養子だった呂布が王允などに唆されて養父である董卓を殺害せんとしたが失敗して、董卓から独立したのは記憶に新しい。


同時に連合軍にも攫われた天の姫が帰還した事で士気は高まり、三つ巴の戦いになったのであるが、生憎と最初に脱落したのは他でもなく呂布の軍だった。


彼の者は遊牧民出身だけあって馬を扱う術---馬術と、それを活かした騎馬戦術では右に出る者が居ない、とさえ言われている。


渾名は「飛将」だが、その飛将が最初に脱落するのだから勝負とは分からないものだ。


そして改めて最初通り・・・・・即ち董卓軍と連合軍の戦いになったのであるが、やはり呂布の軍が抜けた穴は大きい。


「進め!!」


「敵を倒せ!!」


「皆の者、ここが踏ん張り所だ!!」


と、武将格の者達は頻りに兵達を怒鳴るように命じた。


彼等に命じられた兵達は疲労困憊しているであろう身体を叱咤しながら・・・・・・敵兵を攻め続ける。


『そいや!!』


兵達は声を揃えて戟牙や矛などを使い、集団で董卓軍を一歩ずつ押しやる。


対する董卓軍も負けじとやりかえすが、圧倒的に数の上では連合軍が上だった。


応援が欲しい所だが・・・・・・その応援は董卓を護る最後の駒である故に今の兵力で対処するしかないのが現実である。


「怯むな!ここは何としてでも護り通すのだ!!」


『おう!!』


敵兵の一人が叫ぶと、残りの兵達も声を合わせて武器を一斉に振う。


「負けるな!我ら姫君は董卓と戦っている!我等も行くのだ!!」


『おう!!』


連合軍も負けじと叫びながら武器で応戦する。


数でこそ差があるも、士気に関しては互角のようだ。


そして互いに刃を交え合っていた所で・・・・・敵兵の背後にあった門が砕かれた。


「ぬぉぉぉぉぉぉっ!!」


『押せ押せ押せ!!』


一人の男が槍を両手で握り大勢の兵達に押される形で・・・・・背後に来た。


『お前等、背後から取り抑えろ!!』


「くぅぅ・・・・・とぁ!!」


何十人もの敵兵を一人で抑えていた男は背後からも迫って来た敵兵を見てから気合いを込めて声を放つと、その身体を宙に飛翔させると、連合軍の兵達の前にフワリ、と降り立った。


「文秀殿!!」


連合軍を指揮する武将の一人が男---着地した男の名を呼ぶと、文秀と呼ばれた男は顔を半分だけ振り向かせる。


「姫様は?」


「董卓様と一騎打ちの最中です。そして私は・・・・・かつての仲間に押されて、ここまで来ました」


文秀は苦悩する顔を見せたが、直ぐに前方に居る元同僚達と部下達を見る。


「皆の者、我が新たな主である織星夜姫様は、こう言われた」


『董卓は私が倒すから貴方は・・・・・かつての同胞たちを倒しなさい』


そう命じた夜姫だが、殺せとは言っていない。


倒せとは言ったが・・・・・・・・・・・


「皆、そこを退いてくれんか?最早・・・勝負は見えている」


呂布と五原騎兵団は去り、宦官達も散り散りに逃げたし、民草たちに至っても同じである。


だから、無益な殺生はしたくないと文秀は言ったが、これが民草や五原騎兵団が相手なら問答無用で殺していたに違いない。


ただ、それを彼等にしないのは・・・・・やはり同胞だからだろう。


ところが、誰一人として敵兵は矛を収めない。


「文秀・・・・・・・」


「久しいな」


兵達を掻き分けて壮年の男2人が出て来た。


「胡しん様、華雄様・・・・・・・・・」


2人は董卓の片腕と目されている胡しんと華雄で、文秀から言わせれば直属の上司に当たる人物であった。


「文秀よ。そなた、覚えておるか?」


「我等が殿に仕えた時、あの方は有り金を全て使い、我等に最高の礼を尽くしてくれた」


戦で戦功を挙げれば大いに褒めて、失敗すれば原因を究明させて雷撃の如くに叱り付けるが、しっかりと挽回する機会を与えてくれた。


「同時に才ある者を取り立ててくれた」


貴様もそうだろ、と問われた文秀は無言で頷く。


「確かに、雑兵の一人であった私を殿は眼を掛けて引き上げて下さいました。その恩義は今も忘れておりません」


しかし、と文秀は言う。


「我が新しき主は織星夜姫様。我が身命に懸けても・・・・・・そこを通らせて頂きます」


「では、我等も身命を懸けよう」


「皆の者、例え一兵になろうとも敵を殿の所に辿り着かせる出ないぞ!!」


『おう!!』


最早これまで、とは言ったもんだ。


言葉など戦場では無意味に等しい。


それこそ・・・・・このような戦いの舞台では誠に役立たずで、ただ時間を無駄にしている。


どちらも解ったのか・・・・・いや、もう時間を無駄にしないと言わんばかりに武器を構えた。


だが、ここで一人の男が何処からともなく現れて、双方の間に立ったではないか。


年齢は30代後半から40代前半で、腰には3尺(90cm)余りの大刀を差しており、金色の双眸は幼子みたいに輝いている。


「はい、そこまで」


ポンッ、と両手を叩いた男は双方を交互に見て口端を上げて笑う。


「いやぁ、実に良いね。どちらも譲れぬ物を護るが故に身命を懸けて戦う。実に愚かな人間らしいぜ」


と、男は言うが決して馬鹿にしていなかった。


寧ろ愚かしいまでに戦おうとする彼らに敬意を表していた。


「まぁ、くだらない話は終わりにして・・・・・・てめぇら、全員動くな。今、姫さんと董卓は一騎打ちをしているんだ」


ここで無粋な部下の喧嘩をしては興醒めも良い所だ。


「だから、やるな。最後の戦いは総大将同士の一騎打ち、と舞台では王道だろ?」


「誰だ、貴様は。いきなり出て来て訳の分からん事を言いおって!!」


胡しんが男に怒鳴ると、男は「おっと、こりゃ失礼」と白々しく平謝りすると優雅に一回転して右手を胸に当て深々と頭を下げた。


「俺は道化さ。今、董卓と戦っている姫さんの道化にして讒言出来る者だよ。初めまして、胡しん、華雄。そして新兵の文秀」


と、男こと道化は言い静かに姿勢を戻すと、傍らに現れた項羽、李広、ハンニバル、大スキピオ、フェンリル、ヨルムンガルドを見た。


「よぉ、久し振りだな?」


『うむ』


道化の言葉に項羽達は頷いた。


「項羽様、この男と知り合いなのですか?」


文秀が問い掛けると項羽が「あぁ」と頷いてから説明を始めた。


「この男は我らが姫君の部下にして、妹の元婚約者だ」


「あの女の?」


文秀は呂布と共に消えた真紅の髪を持つ女---夜姫の妹を連想するが・・・・・・・まったく似合わない、と場違いにも思った。


この男は見た目もそうだが、先ず性格が人を食ったような感じだ。


どう考えても、あの女とは合わない気がしてならない。


しかし、女の様子を見る限り男に相当な熱を上げているが・・・・・・・・


「おい、坊ちゃん。あんまり女の事を考えるなよ」


と、道化は文秀に言ってきた。


「あ、いえ、その・・・・・・」


「お前さんは知らないだろうが、あの女は執着心が半端じゃない。だから、俺に執着しているのさ」


元婚約者である自分を何としてでも取り戻したい。


しかも、相手は嫌悪感丸出しの姉である夜姫だ。


「という訳だ。別に、あの女は俺を好きとか思ってない。だって、そうだろ?」


新婚用に娘が強請ったから買った寝台の上で他の男と寝んねしていたんだ。


「それは・・・・・・・・・」


とてもじゃないが戦場で言う台詞ではない事に文秀は困惑するが、他の者達も何時の間にか聞き入っている辺り・・・・・道化の術に嵌まり込んでいた。


それを隠すように道化は己の過去を話しては時間稼ぎをしたのである。


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