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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
長安編
130/155

第五十三幕:与えられた気の副作用

皆さま2014年を迎えたドラキュラです。


去年に引き続き、月の姫と英雄たちを御愛読して下さり誠に感謝しております。


なにぶん彼女と共同で書いている為、色々と大変ですが今年も何とか書いて行く積りなので、どうか御付き合い下さい・・・・・・

ガルルルル!!


獣の雄叫び、と間違えるような声を文秀は出すと一気に呂布と民兵達との距離を縮める。


『!?』


余りの速さに呂布たちは眼を見開くが、そこは二つ名を伊達に持つ呂布ではない。


咄嗟に隣の民兵を文秀に投げ付けると後方へ跳躍した。


これにより文秀の攻撃---大身槍の横薙ぎを辛うじて避ける事が出来たのだ。


民兵達は避ける事も出来ず、あっさりと大身槍の柄と穂先を身体に受けて・・・・・・横へと飛ぶ。


人数は10人で、あっという間に数人しか残っていない。


しかし、文秀の眼は民兵に向かっておらず呂布にだけ向けられている。


それは彼の中では既に・・・・・・呂布が獲物と化していたからだろう。


民兵は獲物以下---つまり捨てても良い、という訳だ。


「ぬがああう!!」


豪快に大身槍を片手で文秀は振うと、呂布は直ぐ奉天戟牙で弾こうとしたが・・・・・・・・


「ぬぉぉぉぉぉぉ!?」


余りの強さに唸り声を上げて腰を踏ん張り、両足を撞木に開いて耐えようとした。


ところが、呂布の足は土を軽く抉ったばかりか・・・・・・押されて行く。


『何だ、この強さは!?先ほど以上の強さではないか!!』


自分は、あの小娘---夜姫の妹の気を与えられて今まで以上に強い。


それなのに文秀は・・・・明らかに上を行っている。


「覚悟しろ。餓鬼・・・・・他人の力を自分の力、と勘違いする奴が俺は一番嫌いなんだ。そして貴様は我が姫君を何度も侮辱して汚そうとした。十分に嬲り殺す価値があるんだよ」


さっきとは打って変わり粗野な口調で文秀は喋ったが、こちらの方が板についていた。


「く、くぅぅぅ・・・・・この糞が!!」


呂布は奉天戟牙を片手に持つと、大身槍を片手で持つ文秀に挑んだ。


月牙の部分を文秀の首筋に向かい振うと、それを文秀は僅かに首を動かすだけで退ける。


そして左手で奉天戟牙の柄を掴むと、大身槍を引いて呂布の顔面に突きを繰り出す。


「ぬぉ!?」


文秀に比べると首を横に振る速度が明らかに遅い。


案の定と言うべきか・・・・・呂布の頬に薄らと血が滲んだ。


「おのれぇ!!」


ガンッ、と呂布は奉天戟牙の柄で大身槍の穂先を弾くと、長さを利用した拝み打ちを放つ。


「てい!!」


しかし、今度は文秀が大身槍の柄で奉天戟牙を退けて・・・・・呂布の顔面に蹴りを入れた。


「ぶべっ!?」


諸に蹴りが決まった呂布は豚みたいな悲鳴を上げて無様に地面を転がる


それを見て残った民兵達は戦意喪失したのか、後ろへ下がって行く。


「おい、誰が逃げて良いと言った?それに俺様から・・・・・逃げられるとでも思っているのか?」


文秀は静かに民兵達を一人ずつ睨んで告げる。


「ここは戦場だ。そして俺は、姫様の近衛兵にして・・・・・てめぇ等みたいな阿呆な下衆共を一人残らず殺す掃除人でもあるんだよ」


「何が掃除人だ!!」


民兵の一人が勇ましくも文秀の前に出て来た。


「あんな偽者の近衛兵なんて俺様が殺してやる!!」


言うが早いか、民兵は死体から奪い取ったと思われる身幅が広い両刃の剣を抜いた。


「こいつで殺してやる・・・・・・・・」


「ふんっ。俺様に剣で挑むか・・・・・良い度胸だ」


文秀は大身槍を地面に突き刺すと、腰から3尺5寸(106cm)の長大な剣を難なく腰の鞘から抜いた。


「なんだ、その細身の剣は?そんな剣で俺様の剣が・・・・・・・・・・・!?」


「一々うるせぇんだよ」


あっという間に文秀は民兵と距離を縮めると、真っ向から唐竹割に斬死させた。


民兵達は何が起こったのか、分からない顔をしていたが文秀は刃を背中にくっ付く位に構えて、それから思い切り振ったに過ぎない。


そう・・・・ちょうど死体を利用して剣の切れ味を確かめる“試し切り”みたいにやったのだ。


悲鳴を上げる暇もなく民兵は左右に身体を分かれさせて事切れる。


「さぁ、次は誰だ?俺様の得物は槍だが、お前らの為に剣で勝負してやる」


右肩に反りが浅い剣を掛けた文秀は構えも取らずに歩み寄った。


それを見ても民兵達は攻撃する気が起きなかったのは・・・・・・先ほど大口を叩いて瞬殺された味方の亡骸を見たからだろう。


もっとも相手は一人だし、得意の得物を手放して剣で勝負しようとしている。


十分に数では上だ。


殺せなく・・・・・・ないだろう。


呂布は今も倒れているが、逆に言えば自分達が殺せば・・・・・・・・・


『姉上の兵などを殺せば褒美を上げる』


と言ったではないか。


「・・・・・お前等、俺達も舐められたな?」


民兵の一人が静かに言えば、他の者達も頷いた。


「そうだな。槍が得物なのに剣を使うんだ」


「しかも、たった一人だ」


「俺たちを馬鹿にしている!!」


赦せん!!


「へへへへへへ・・・・・・やっと戦う気になったか?やはり戦場は、こうでないと」


文秀はニヤニヤ、と笑い闘争心剥き出しにする。


『嗚呼、この感覚・・・・実に懐かしい。獲物こそ物足りないに尽きるが、姫様の御命だ。従うしかあるまい』


そして少しばかり上を見ると・・・・・・・・・


2人の娘が剣を交えて戦っているではないか。


ただ、2人とも空中を舞っている所が常人では在り得ないが。


「姫様!大丈夫ですか?!」


文秀が大きな声で天に居る娘---自分が仕える姫に尋ねると・・・・・・・・・・・


『えぇ、大丈夫よ。貴方の方も大丈夫のようね?まぁ、その程度の雑魚に手古摺るようでは近衛兵から外す所だったけど』


宙を舞う娘の内---2尺6寸(78cm)の剣を両手で握り、舞う様に相手と戦っている娘が答えた。


「ははははは、それは痛いですね。この文秀・・・・まだ貴女様に仕えてから日も浅い故に!!」


斬!!


斬!!


斬!!


高笑いをしながら文秀は剣や槍を持って挑んで来た者達を袈裟掛け、または逆袈裟で殺した。


全員が身体を2つにした状態で事切れる辺り・・・・・・大した腕前だ。


「さぁ、来いよ!俺様は血に飢えているんだ。特に・・・・てめぇ等みたいな屑野郎は地獄という名の溝溜めに捨てちまいたいんだよ!!」


『う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!』


先程とは打って変わり民兵達は悲鳴を上げて一斉に挑んだが・・・・・・直ぐに全員そろって地獄という溝溜めに消えた。


「ふん・・・・屑は何をやっても屑だな」


血を拭き取り、そして布で血を拭き取った文秀は鞘に剣を納めると、悠々とした足取りで大身槍の所まで行き槍を手にする。


すると、それを待っていたように呂布が立ち上がった。


「ぼ、ぼのれぇぇぇぇ!!」


鼻から血を出して、更に顔に大きな痣を残した呂布は憎悪剥き出しで文秀を睨み据える。


「おいおい、鼻が明後日の方角に曲がって良い男が台無しだぜ?」


「ぐっ・・・・・ぐぐぐぐぐぐ・・・・・・」


文秀に指摘された呂布は鼻を無理やり押して・・・・・・ゴギャッ・・・・・・・・・


嫌な音がして、呂布は大量の血を口と鼻から吐いた。


しかし、それにより鼻は元通りだから自分で直したのだろう。


「ヒュー!大したもんだ。まぁ、その程度の事くらいは出来てもらわないと・・・・・困るんだよな」


まだ、お前の事を嬲り足りない、と文秀は告げる。


「ほざけ!勝つのは俺だ!!」


呂布の身体から与えられた気が昂ぶり出してきた。


「気を付けろよ?与えられた気は・・・・・・・」


「ぐ、ぐぅぅぅぅぅぅぅ!?」


突如として呂布が悲鳴を上げた。


「あーあー・・・・言った傍からこれだよ」


文秀は悲鳴を上げた呂布を見て小さく嘲笑う。


「ぬ、ぬぅぅぅぅぅ!?ど、どうしたんだ?身体が・・・・おがあああああああ!!」


呂布の身体---左肩が内部から破裂して・・・・・・血飛沫と内臓が迸ったのは、それから間もなくである。


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