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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
長安編
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第三十八幕:宴の舞姫

更新が遅れてすいません!!


先日、今の織星夜姫はどうしたのか、と指摘されたドラキュラです。


今の時点では言えないのですが、彼女と相談しながら今の夜姫から、本当の夜姫の現状などを説明したいと思いますので、もう少々お待ち下さい。

袁術の陣に在る一際大きな天幕の中では群雄達が左右の下座に座り、上座には一人の娘が座っていた。


年齢は二十になったばかりだが、雰囲気は落ち着いており何処か貫録さえ垣間見える。


その後ろに如何にも歴戦の将と言える者が座り、娘の左右には侍女らしき娘が座って娘に従っている。


娘は銀と紫が上手く混ざり合った髪を背中にやった状態で、酒が注がれた酒盃を高々と幾重も重ね着した衣服に零さず掲げてみせた。


「今宵は、戦勝の前祝いと思いなさい」


静かに娘は言い、群雄達は無言で頷く。


「この度の戦は恐らく以前の戦とは比べられない程に混沌としているわ」


長安は今、混沌としていた。


董卓の子飼いにして養子だった呂布が王允と手を組んで反旗を翻したのである。


それに応じる如く民達も立ち上がり、董卓を護らんとする軍と対立していた。


更に自分達が混ざるが、隣の陣に居る同盟軍は分からない。


味方になるか、敵になるか・・・・・・・


どちらにせよ三つ巴の争いなんて序の口と言える戦場に・・・・・・加わるのだ。


「でも、その戦いに勝利するわよ。良いわね?」


民達を倒して、呂布たちも倒す。


そして本敵と言える董卓を倒して戦を制する。


口では簡単だが、それが・・・・・・如何に難しい事か。


だが、娘は勝利する、と断言した。


ならば・・・・・・・・・・・・


『御意に』


娘の言葉に皆は口を揃えて答える。


この娘が勝利する、と言ったのなら導かなくてはならない。


「戦死する者は必ず出るけど、その者達は皆・・・・・私が都に連れて行くわ。勿論、貴方達も同じだけど、望まないのなら無理強いはしないわ」


『何を言いますか。この身は姫君の為に』


と娘の言葉に反論する如く皆は再び口を揃えて言い、それを満足気に娘は聞いて掲げた杯を更に掲げる。


「では・・・・・貴方達に月の加護と栄誉があらん事を祈って」


娘は掲げた酒盃を口元に運んで一気に飲み干した。


それを見て背後に控えていた老将が酒盃を掲げた状態で口を開いた。


昔から言った言葉である。


自分達に加護と栄誉を娘は与えんとした。


ならば、自分達が言う台詞は?


愚問・・・・・これしかない。


「御身に勝利を!!」


『御身に勝利を!!』


老将の言葉に皆は続いて酒盃を一気に煽る。


「さぁ、宴の始まりよ」


と娘が言うと、軽やかな音楽が鳴りだして飲めや歌えと始まった。


しかし、その中で二人だけ浮いていた。


天幕の入り口に座る壮年の武将である。


右が文醜、左が顔良と言い共に袁術の異母兄弟にして同盟者である袁紹の片腕だ。


二人は主命を受けて、上座に座る娘---織星夜姫の様子を見に来たのであるが、色々とあり舞をする為に来たという経緯である。


本来なら長居はしない予定だったが、色々とあったから長居してしまっている。


これは主命に反する事だから、二人は何も飲まず、食わない事で自分を律していた。


そして上座に座る織星夜姫を見続けた。


夜姫は侍女に酒を注がせると、今度は自分が侍女たちに酒を注いだ。


何とも言えない感じだが、二人は夜姫だけを見ていた。


いつ舞はやるのだろうか?


などとは思わない。


夜姫が舞をやる時に、自分達は前に出て踊れば良い。


それだけだと思い待ち続けた。


二人を夜姫は少し見たが、味気ないのか直ぐに酒を再び飲んだ。


ところが、徐に夜姫が酒盃を置いて立ち上がったではないか。


「貴方達、楽器を」


『ハッ』


背後に控える者達に夜姫が言えば、その者達は既に用意していたのだろう・・・・・見た事が無い楽器を取り出して演奏を始める。


今まで流れていた音楽より遥かに緩やかであるが、とても激しい演奏であった。


その音楽に合わせるように夜姫は扇を開いて、更に文秀が差し出した剣を持つ。


嗚呼、なるほど。


今が・・・・・・舞をする時間、か。


文醜と顔良は顔を見合わせて、立ち上がると剣を抜いた。


さて、どうやって攻めるべきか?


いや・・・・行くべきだ、と二人は思い直す。


音楽に合わせて舞うのは下手でもないが、上手い訳でもない。


元から武一道で昇り積めたから、少しばかり困惑しているのだろう。


とは言え自分達から申し出たのだから・・・・・・夜姫の顔は潰せない。


と思っていたら、夜姫が舞をしながら近付いてきたではないか。


フワッ、と軽やかに宙を舞い・・・・・左手に握られた剣が二人を襲う。


嗚呼、なるほど。


二人は笑みを浮かべて文醜が剣を、顔良が扇をという形で舞に混ざる。


同時に二人は左右から剣を振い、夜姫は左右の手を器用に使いながら舞った。


傍から見れば強面の男二人が一人の娘に襲い掛かっている、と映るか?


否・・・・・舞っているのだ。


文醜も顔良も武に関しては袁紹の右腕と言えるが、夜姫は二人の攻撃を軽やかに扇と剣で捌いている。


よく見れば二人の顔は・・・・・汗ばんでいた。


『この娘・・・・強い!!』


そう思った事だろう。


何せ今二人は本気で打ち込んでいる。


それは夜姫の実力を図らんが為であり、同時に音楽に合わせた為でもあった。


最初こそ多少は手こずる、と考えていたが蓋を開けてみたら何と言う事か・・・・・・・・・


逆に自分達が踊らされている、という構図だった。


おまけに音楽は更にテンポが速くなり、合わせて舞うから一苦労である。


「どうしたの?もう汗ばんでるけど」


自分達を躍らせている、張本人---夜姫は左右に持った剣と扇を軽やかに動かして捌きながら言ってきた。


『ま、まだまだ!!』


意地となったのか、二人は汗ばんだ顔で剣を振った。


しかし、唯の一度も夜姫には掠りもせず・・・・・音楽は終わってしまった。


その時、顔良と文醜は片膝をついて剣を突き刺し荒い息をしていたが、夜姫は静かに舞を終えた決めの体勢を取ってみせる。


音楽が終わると忽ち拍手喝采が巻き起こり、夜姫は小さく手を上げて応じた。


「はい、文秀」


夜姫は文秀に剣を返して、自身は再び上座に戻った。


「どうかしら?私と舞が出来て」


『と、とても、良かったです・・・・・・・・・・・』


未だに荒い息をする二人を老将が冷ややかな眼差しを送る。


「ふんっ・・・・たかが、この程度の舞で荒い息をしおって。まったく近頃の若造共は根性も体力も足らんな」


「爺、そう言わないの。あの演奏は、私の舞でも激しくて速いんだから」


「ですが、姫様。二人は自ら進んでやりたい、と言ったのです。それを・・・・・この程度の力しかないのに大口を叩くのは頂けませんな」


「もう良いわ。二人の目的は達成されたんだから」


「御意。おい、小僧共。早く帰って袁紹に伝えて来い」


『近い日に董卓を討つ故に兵馬を養い、二度と遅れないように心掛けておけ。次は無いぞ』


「し、承知・・・・・・・・・・」


「つ、仕りました・・・・・・・」


二人は力ない声で頷いて、鉛のように重い身体を引き摺りながら天幕を出て行こうとするが、それを夜姫が呼び止める。


「ここに来なさい」


クイクイ、と扇で二人を呼び寄せる夜姫に逆らえず二人は身体を引き摺り行った。


「中々の良い舞だったわ。一杯ずつ飲んで帰りなさい。せめてもの褒美よ」


二人に酒盃を差し出し、夜姫は酒を銚子で注いだ。


それをチビチビと飲んでから二人は今度こそ天幕を後にして自陣へと戻って行った。


しかし、そのまま休む訳にはいかず袁紹の所まで行き・・・・・・経緯を説明して、老将の言葉を口にする。


「・・・・兵馬を養い、二度と遅れないようにしろだと?ふんっ、高が老将如きが」


と忌々しそうに言いながらも二人に労いの言葉を掛けた。


「まぁ良い。ご苦労だったな。ゆっくりと休め」


『ぎ、御意・・・・・・・・』


互いに肩を貸し合い二人は天幕を出て行き、それから直ぐに自分達の天幕に行き・・・・・泥のように眠ったのである。





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