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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
長安編
109/155

第三十四幕:臣下達の紹介と酒宴

更新が遅れました!!


一応、今回は軽い説明で次回から少しずつ紹介して、袁術の陣などを書きたいと思います。


夜姫は背後に控えていた者達を前に出した。


「右から先に名前と役職だけ言っておくわ。全員説明すると夜が明けちゃうから」


睡眠不足は美容に悪い、と夜姫は笑いながら言い右から紹介を始めた。


「先ずは項羽。私の近衛団の長よ」


群雄達は前漢時代の武将---項羽と言う名前に驚いたが、夜姫は説明を続けた。


「次が“李広”よ。私の爺にして近衛団の副長」


項羽の隣に居る老将は初代飛将の李広・・・・・・・・・


これにも群雄達は驚きを隠せない。


何せ二人とも・・・・・・・既に死んでいる。


その人物が、まさか眼前の人物とはと思っても仕方ない。


「驚くのは無理ないから後で証拠を見せるわ」


と夜姫は微苦笑して言い、残り二人を紹介する。


「隻眼の男はハンニバル・バルカ。カルタゴの将軍にして、私の一番弟子よ」


「夜姫様の、弟子ですか?」


群雄の一人が恐縮そうに尋ねると夜姫は頷いた。


「えぇ。ちょっと貴方達の居る世界---言わば下界に遊びに来た折に出会ったの」


「あの時は覚えておりますよ。姫様」


ハンニバル、と紹介された老将は隻眼を細めた。


「貴方様が沐浴をしており、愚かにも見入ってしまい・・・・・見つかりましたね」


「えぇ。でも、嫌な気持ちはなかったわよ。寧ろ良い男と思ったもの。勿論、戦上手になるという面もね」


「恐縮です」


ハンニバルは夜姫に目礼して、夜姫はこうも言った。


「この男は百万の敵さえ恐れない国を、たった一人で恐れさせた男よ。私の一番弟子だけあるわ」


そして最後の一人を紹介する。


「こちらはスキピオ。別名を“大スキピオ”と言い、ハンニバルとは敵同士にして師弟関係。言わば、私の孫弟子と言った所よ」


「姫様に孫弟子と言われるとは・・・・・恐悦至極に存じ上げます」


「良いのよ。結果を言えば、貴方はハンニバルを負かしたけど私の臣下になり、幾度となく助けられたわ」


「いえ・・・全てはハンニバルの真似事に過ぎません。ですが、お褒めの言葉有り難く思います」


「相変わらず素直ね。私もハンニバルも皮肉屋だから、貴方の素直さは一種の清涼剤だわ」


「はははははは。姫様の皮肉は相変わらず切れ味が鋭い」


と大スキピオは言うが、群雄達から言わせれば蚊帳の外で面白くない。


「嗚呼、ごめんなさい。まだ紹介が終わってなかったわね。では、次を紹介するわ」


夜姫が次の者を前に出す。


「この男の名は文秀。私を生命懸けで護った殿方にして、新たに近衛兵になった者よ。元は董卓の兵だけど仲良くしてね?」


「夜姫様、あの私は別に・・・・・・・・」


文秀は自分の事を自慢気に語る夜姫に少し訂正を入れようとしたが、直ぐに夜姫が口を動かして遮られた。


「貴方が私を護ったのは事実。近衛兵にしたのも事実。董卓の兵士だったのも事実。何か間違った事は言ったかしら?」


「いえ。ただ、その私は・・・・・・・・ぐげっ!!」


夜姫の言葉は尤もだが、些か恥ずかしいと言おうとした文秀は突然に首を抑えた。


その首には一匹の蛇が巻きついており、その蛇が文秀の首を絞め付けていたのだ。


「こら、ヨルムンガルド。止めなさい」


慌てるような仕草を見せながら夜姫は文秀の首から蛇を取る。


すると、蛇は縦眼を夜姫に向けて赤い舌で抗議するように動かした。


「細かい事を気にするから絞めた?お馬鹿。どうして貴方と言い、フェンリルと言い短気なの?」


クゥゥゥン、と夜姫の傍に控えていた黒狼---フェンリルは耳を伏せて悲しそうに鳴いた。


「私は事実を言っただけよ。良い?文秀は私の臣下となったの。貴方達は先輩に当たるんだから、少しは貫録を見せなさい」


フェンリルとヨルムンガルドは顔を一瞬だけ見合わせて、静かに夜姫に頭を垂れる仕草をした。


「それで良いわ。それじゃ今度は私の侍女を紹介するわ」


夜姫は最後に朱花と翆蘭を紹介する。


「私の侍女となった朱花と翆蘭よ。だから、私以外が手を出したら駄目よ?」


「姫様っ。またそのような戯れを!!」


李広が慌てて夜姫の言葉を掻き消す如く大声を出す。


「戯れ?私が何時、戯れと言ったのかしら?いえ・・・・・戯れなら一夜限りでしょう」


何とも意味深い言葉に群雄達は首を傾げるが、同時に一夜だけでも夜姫と過ごせるのならと淡い気持ちを抱く。


しかし・・・・・・・・・・・・・


「うぬ等に言っておく。もし、姫様に指の皮一枚でも触れてみろ・・・・・この李広が地獄の果てまで追い掛けてでも殺す」


クイッ、と剣の鯉口を切り恫喝すると群雄達は蛇に睨まれた蛙の如く背筋を伸ばしたが、顔を伏せて遣り過ごした。


そんな群雄達を見て夜姫は薄く笑い李こうを見た。


「爺、良いじゃない。指の皮一枚と言わず、私の胸を触った強者も居るんだから」


「な、なんですと!!」


李広は絶叫して、群雄達に血走った眼差しを向ける。


「誰だ・・・・・誰が、姫様の柔肌を触れて、胸を握りおった!出て参れ!!」


腰の剣を抜いて李広は叫ぶが、直ぐに袁術に眼をやる。


「貴様かぁ・・・・・姫様に無体な真似をしおったのは・・・・・・・・・・・・・・!!」


「い、いえっ。私は・・・・・・・・・」


何で分かった、と袁術は思いながらも否定する。


「嘘を申すな!貴様の眼を見れば・・・・・・姫様を汚したと分かる!おのれぇ!小僧が!!」


この場にて剣の錆にしてくれるわ、と李広は剣を振り上げようとした。


「爺。止めなさい」


夜姫が扇で李こうを制する。


「姫様!!」


当然の如く李広は夜姫を見るが、夜姫は袁術を庇う如く前に立った。


「李広、私の命令が聞けないの?」


「い、いえ!!」


片膝をついて、剣を背後にやり李広は夜姫に頭を垂れる。


「袁術は私を生命懸けて護ったの。これで罪滅ぼしはしたわ。それに・・・・・・・このような群雄達を率いた将を・・・・・・高が小娘の胸を触った位で殺すの?」


天下の飛将と言われて、悲劇の将となった李広よ。


「貴方は、自分で名を汚すの?」


「恐れながら・・・・・我が名は既に汚れております。今さら名を惜しむ積りは毛頭ありません」


頭を垂れながら李広は言い、更に言い続けた。


「ですが、夜姫様・・・・・・貴女様という主人を汚す者は何人だろうと赦しません。とは言え既に罪を償った、と言うのならば文句ありません」


ただし・・・・・・・・・


「もし、今後・・・・・下手な真似をすれば、この李広。爺として見過ごせません。同時に姫様も戯れは控えて下さい」


「はいはい。爺は過保護だものね?」


と夜姫は笑いながら言い、李広を立たせて袁術に顔を向ける。


「袁術、気を付けなさい。爺は言った事は必ず実行するの。だから、私と戯れるのなら・・・・・爺が寝た時にしましょうね?」


「姫様!!」


言った傍から、と李広は叫ぶが夜姫は面白くて笑いが止まらない様子だった。


「うふふふふ・・・・・・本当に爺は面白いわ。そして頼りにしているわよ?」


「まったく・・・・・・幾つになっても、貴女様は変わりませんな。ですが、それで良いのです」


「その通り」


「姫様は姫様」


「我らが主人にして、戦場を駆けて、戦場と言う名の舞台で舞う姫君」


李広に続いて項羽、ハンニバル、大スキピオが賛美の言葉を投げる。


「ありがとう。では、紹介も終わった事だし・・・・・・少し酒でも飲みましょう」


「は?酒、ですか?」


袁術は唐突の言葉に驚くが、それは群雄達も同じである。


夜姫を助けたのだから、このまま董卓を倒そうという考えだったのだろうが夜姫は酒、と言ったのだから驚くのも無理ない。


「酒よ。酒と言ったら宴。宴と言ったら舞。戦前の戦勝祈願よ。そして・・・・・・妹を挑発するの」


昔から直ぐ挑発に乗る妹だから宴を開けば必ず・・・・・・・・・・


「何かしらの手を打って来るわ。それこそ袁紹辺りを炊き付けて、間者を差し向けて私を殺す筈だもの」


これを狙っているからこそ宴をするのだ、と夜姫は言い群雄達も納得した。


何処か・・・・・そう言われると納得する雰囲気を今の夜姫は醸し出していたのだろう。


「さぁ、袁術。酒などを用意して」


「え、あ、は・・・・・・・・・」


「私を待たせるの?」


まだ理解できない様子の袁術に夜姫は呆れた眼差しを向けるが、そんな主人を横に閻象は既に動いていた。


「ただ今、酒などを用意させましたので少々お待ちを」


と閻象は何食わぬ顔で夜姫に報告した。


「分かったわ。袁術、良い部下を持ったわね?」


「え、あ、あ、は、はぁ・・・・・・・・・・」


またしても袁術は呆然とした顔で情けない返事をしたが、夜姫にとっては面白いのか小さく笑った。


それを見ながらも・・・・・・・頭の中では既に妹を、どう倒すのか考えていたのは誰も知らない。


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