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月の姫と英雄たち  作者: ドラキュラ
長安編
108/155

第三十三幕:新たな臣下を紹介

今回は人物を紹介する前に袁紹と夜姫の妹の方の会話を書きました。


次話が臣下の紹介となり、数話ほどしてから戦闘シーンに入りたいと思います。

再編成された連合軍の片陣---袁術の陣に設けられた天幕では、袁術を始めとした者達が一同に集まっており、上座に座る紫と銀の髪をした娘---織星夜姫から董卓に攫われた後の事を聞いていた。


彼女は歌うような声で経緯を話しており、袁術達は黙って耳を傾けた。


そして声が止まる。


「・・・以上が経緯よ。何か質問は?」


夜姫は左手に持った扇を弄びながら尋ねると、袁術が手を上げた。


「夜姫様、その者達は・・・・痛っ」


閉じられた扇で頭を叩かれて袁術は呻く。


「私は経緯の事で質問はあるのか、と聞いたのよ?どうして彼等の事を聞くのよ」


そう言って夜姫が背後に控える者を見れば、その者達は「誠に」と相槌を打ったばかりか、孫堅たちも頷くのだから情けない。


「まだ、紹介されてないので・・・・・・・・・・・」


主人とも言える夜姫に叩かれた上に四方八方から呆れられながら袁術は頭を抑えながら反論する。


「当たり前でしょ?まだ紹介してないんだから。先ずは順を追って説明しているの。お解り?」


「はい・・・・・申し訳ありません」


主人に叱られた袁術は頭を下げて、再び質問をした。


「では、夜姫様。貴女様の妹君、ですが・・・・・その方が民達を扇動したのですね?」


「えぇ。民だけでなく呂布と王允も誑し込んだわ。昔から他人を誑し込んで、自分の駒にするのは得意なのよねぇ・・・・・・・・」


パシッ、と扇を夜姫は右の掌で叩きながら呟く。


「あの、失礼ですが、その・・・・・妹君と仲は・・・・・・・・・・・・」


「最悪よ」


袁術は聞き辛い質問をしようとしたが、最後まで言う前に夜姫が答えた。


「この際だから言うわ。私は妹が嫌いだし、妹も私が嫌いなの。だから、変に私の妹だからって優しくしたりしちゃ駄目よ?逆に殺されるから」


サラリと夜姫は言うが他の者達から言わせれば・・・・・・血を分けた者同士でも仲は悪い、と知っている。


「ご心配なく。目の前に血族だろうと仲が最悪な人物が居るので」


袁術の腹心であり、お守役である閻象が厳しい事をサラリと言ってのけた。


「ああ、そうだったわね。目の前に居たわ」


面白がるように夜姫は袁術を見て、袁術は閻象を睨むが・・・・・・・・・・


「私は本当の事を言っただけです」


と閻象は悪びれもせず言い、袁術の腸を煮え繰り返らすが誰も気にしなかった。


「まぁ良いわ。それより閻象。貴方・・・袁紹の方にも間者は放っているわよね」


夜姫が月色の双眸を向けると、閻象は真剣な顔で頷いた。


「はい。どうも袁紹様の様子が最近・・・・・変、と思いまして密かに調べさせております」


この事実に他の者達は動揺を隠せないでいたが、夜姫は冷静に閻象に再び質問する。


「何か分かった?」


「いえ。これと言って・・・・・・しかし、どうして私が間者を放った、と分かったのですか?」


「ああ、それは・・・・・・来なさい」


カー・・・・カー・・・・カー・・・・


夜だと言うのに鳥の鳴き声がした。


しかも、二羽。


そして天幕の布を擦り抜けて、群雄達の頭上を飛び夜姫の前で鳥は停止する。


漆黒の身体を持つ二羽の鴉だった。


「紹介するわ。戦場で私の眼と耳になってくれる“フギン”と“ムニン”よ」


二羽の鴉は夜姫の左右の肩に止まると、群雄達を見て小さく鳴く。


「この二羽の鴉、ですか・・・・・・確か、以前に見たような気がします」


閻象はフギンとムニンを見て言い、二羽も知っているとばかりに鳴いた。


「この子達も貴方を見た、と言っているわ。ねぇ、フギンとムニン。袁紹は私の妹に誑し込まれたんじゃない?」


カー、カー、カー!!


二羽は左右から鳴いて、夜姫は首を縦に振る。


「なるほどね。私を物にしたいなら、寝ている所を襲えと言ったの。じゃあ、皆にも分かるように映像とかを映してくれない?」


お安い御用、とばかりに二羽は双眸を光らせて、天幕の横に顔を向ける。


すると、二羽の双眸が光り・・・・・映像が映し出された。


「こ、これは・・・・・・・・!!」


「お、おぉ・・・・・・・・」


「何と・・・・・・・・・・」


「凄い・・・・・・・・・・」


群雄達は映像に驚くが、直ぐに映し出された一組の男女に眼が釘付けとなる。


「あれは・・・・・袁紹様」


「では、あの真紅の髪を持つ娘が姫様の妹君・・・・・・・・・・」


「似ておらんな。しかも、姫様に比べると冷酷な気配が全面に・・・・・・・・・・」


映像に映し出された袁紹は夜姫の妹に何かを言っている。


『私は、夜姫様を物にしたい。洛陽では、敢えて遅れたが・・・・・あの有り様だ』


『それは仕方ないわよ。まぁ、姉上から言わせれば遅参した愚将、と思うでしょうけどね』


『では、もう私は・・・・・・・・・』


映像の袁紹も先ほどと同じく情けないが、そんな事はどうでも良い。


彼は洛陽の戦で意図的に遅参した、と言った。


しかも、それが夜姫に良い所を見せる為とは・・・・・・・・・・・


「少しは買っていたけど、この分だと駄目そうね」


夜姫は理由を聞いて落胆する表情を浮かべた。


他の将も少なからず袁紹の軟弱に落胆を隠せずにいた。


中でも・・・・・・・・


「袁紹様・・・・・・・」


劉備は袁紹を見て、肩を落とし落胆するように拳を握り締める。


「嗚呼、劉備お父様は袁紹と少なからず懇意でしたね」


夜姫が言えば、劉備は小さく頷いた。


「はい。私のような者でも気を利かせて下さったので。しかし、こんな事が・・・・・・・・・・・」


「これは私のせい、でもあるでしょう」


『それは無いです』


と、夜姫が自分にも非がある事を言えば背後に控えた者たちが口を揃えて否定する。


「恐れながら姫様。貴女様は存在するだけで、確かに周囲を魅了しましょう。その点に到っては、あの小僧も、ここに居る者達も同じです。そして義勇軍の陣に降り立ったのもあるでしょうが・・・・・あくまでも・・・・・・そこから先は個人の力量と思われます」


背後に控えていた一番年長者と思われる老将が前に出て、しゃがれた声で夜姫に言った。


「仮にも袁紹は袁家の当主。当主ともあろう者が・・・・・たった一人の女に良い所を見せたい、という実に下らない理由で大将の命に背くなど言語道断。これは私が生前に犯した罪に入りましょう。故に、私から言わせれば・・・・・袁紹の力量が無いからこそ、あのような小娘の策に引っ掛かったのです」


だからこそ・・・・・・・・・・


「貴女様のせいではありません」


「・・・・・・相変わらず爺ね」


「御意にございます」


老将は頭を垂れると、劉備に声を掛けた。


「劉備玄徳。そなたは夜姫様より父と言われた身。その身ならば・・・・・・娘の前で情けない父親の姿を見せるな。見苦しいぞ」


これを言われて劉備はハッとする。


そうだ・・・・・自分は孫堅と同じく夜姫に「父」と称されたではないか。


その孫堅を見れば、憮然としており・・・・・・誠に父親と言える存在であった。


内心は不明だが・・・・・・それでも外見は父として娘に情けない姿を見せまい、としている。


「・・・・・申し訳、ございません」


非を詫びて劉備は映像を黙って見たが・・・・・・先ほどまでの様子を一切見せない。


ただ、ひたすら流れる映像を淡々と見ようとしていた。


「・・・・・・・続けて」


静かに夜姫が言うと、再び映像は流れ出した。


『どうすれば良いのだ?私は』


映像の中で袁紹は夜姫の妹に助けを求めて、妹は・・・・・・・まるで罠に引っ掛かった獲物を見つけた猟師みたいな顔を一瞬だけ見せる。


『大丈夫よ。貴方には、まだ姉上を物に出来るわ。今の状況を利用しなさい』


『今の状況を?』


『えぇ。そこは自分で考えて。でも、私も陰で支えて上げるわ。その代わり・・・・・・・私の頼みも聞いて頂戴。言わば、取り引きよ。どうかしら?』


夜姫の妹は甘言を口にして袁紹の頬を一撫でした。


『貴方は姉上を物に出来るわ。だから、自分に自信を持ちなさい。それとも・・・・・私で姉上の身体を試す?』


ご丁寧に寝台があり、既に夜となっている。


『・・・・・では』


と袁紹は娘を寝台に倒した。


そこで光が消えて映像も終わる。


「相変わらず尻が軽いわね。そんなんだから愛しい彼が見限って、私に近付いて来たのよ。馬鹿な妹様」


夜姫は薄らと笑い、群雄達に月色の瞳を向ける。


「映像は以上よ。これを見て解かったと思うけど、袁紹は・・・・・・敵みたいなものよ。信じるか、信じないかは貴方達に任せるけど、信じると言うのなら気を抜かないで。良いわね?」


『御意に。我らが姫君』


群雄達は静かに主人である夜姫に頭を垂れた事で、彼女の言葉を受け取った。


「では、袁術が質問し損ねた彼等を紹介しましょう」


ここで夜姫は背後に控えた者達を前に出して、静かに一人ずつ紹介をした・・・・・・・・・・・


それは・・・・・これからの動乱に火を点ける事を、また意味していたのだろう。


何故なら・・・・・・・・・・・・・


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