12.武器
すいません、短めです。
最初はアイリス視点からです。
―――アイリスside
「ハームドさん!待ってください!」
「アイリスか、どうした」
「彼は、どうでした」
優が冒険者ギルドから出た後、アイリスはハームドに先程の模擬戦の事を聞いた。
「お互い本気じゃなかったしな、なんとも言えんな。
ただ1つ言えるのは確実にアイツの実力はBランク以上だな。もしかするとAランクに届くやもしれん」
「…。彼は何者なんでしょうか。まだ子供なのにあの実力…。何処かのスパイ、でしょうか」
「俺は細かい事は分からんが、まぁアイツと本気で戦うとしたら、骨が折れるな。
まっ、そんときはアンタに任せるのもありかもな。Aランク冒険者のアイリスさん?」
「…やめてください。私はもう引退した身です」
「悪りぃな、軽い冗談だ。
それにしてもユウの奴、お互い本気じゃなくても折れた剣で良くあそこまで戦えたもんだ」
「!?ユウさんは折れた剣で貴方と戦ったのですか?」
「おう。俺も途中で気づいてもアイツそのまま突っ込んでくるから、止まらなかったぜ」
「だから、あの時…」
「模擬刀を貸してくれって言ったんだろうな。ユウには悪い事したな。
それじゃ、俺はそろそろバルバラ大森林の野営地に戻るぜ」
アイリスはハームドと別れた後、ユウの事を一応ギルドマスターに報告する為にギルドマスターがいる執務室に向かった。
「アイリスです。入りますよ」
「ああ、入ってくれ」
「君から報告があると聞いたが、どうした?」
「はい、実は先程のユウという冒険者が登録したのですが…」
「本当かね!?」
「はい。彼がどうしました?」
「実は先程、彼と一緒にトーラムに来た冒険者がいてね。その冒険者からの報告がバルバラ大森林でゴブリンの上位種が出たと報告があった」
「上位種が?失礼ですがゴブリンの上位種ぐらい元から確認されてた魔物ですが…」
「問題はそれがバルバラ大森林に入ってすぐだそうだ。これが少し奥に行って出たというなら報告なんて上がってこなかっただろう。入ってすぐにゴブリンの上位種が出るのはおかしい」
「それだけ判断するのは考えすぎでは…」
「まだある。そのゴブリン達は連携して冒険者を追い込んだそうだ。
普通ゴブリンの上位種程度では連携する知能はない。だか、ジェネラルやキングはその限りではない。奴らは高い知能を持ちゴブリン達に命令する事が出来る」
「しかし…」
「あくまでこれは私の考えだ。最悪の場合を考えてCランクのパーティーにバルバラ大森林の生態調査の依頼を出す。
それと今回のゴブリンの上位種の襲撃だが、そのユウという子供が苦もなく討伐したらしいがその報告か?」
「はい、先程Bランク冒険者のハームドさんに模擬戦を行い引き分けになりました。
子供ながらにしてあの実力。スパイという可能性は」
アイリスはハームドとの模擬戦の事を事細かに伝えた。
「ふぅむ、ハームドとか…
とりあえず、気にかける程度で見てくれて構わない。最優先はこのゴブリンの件だ」
「わかりました。では失礼します」
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「ここがアイリスさんのおすすめの武器屋か」
優はアイリスに教えてもらった武器屋に来ていた。宿屋の方は先に行き部屋だけ取ってすぐに武器屋に向かった。
因みに宿屋は風見鶏亭という宿屋で夫婦がやってる店だった。
(剣が無いと冒険者なんて出来ないからなぁ。俺に合う剣があれば良いんだけど)
「こんにちはー」
扉を開けてみたらそこには誰もいなかった。
「こんにちはー!!誰かいませんかー!」
「すいませーん、今行きまーす!」
さっきより大きな声で声を掛けると奥の方から返事があった。
(女の子の声?)
「お待たせしましたぁ」
奥から姿を見せたのは小さい女の子だった。
「すいません、剣を見に来たのですが、えっと…」
「あ、今父は出掛けていていません。代わりに私が店番してます」
(だよな。こんな小さい女の子が武器作ってるとこ、想像出来ねぇもん)
「そうなんだ。武器を見たいんだけど、何処なあるのかな」
辺りを見渡しても剣どころか武器の1つも置いてなかった。
「ウチはオーダー専門なんです」
「えっ、そうなの?困ったなぁ。
今使ってる剣が折れて使い物にならないんだよね…」
「なら!出したら、練習用でウチが作った剣はどうでしょう!!それなら今からでも用意できますよっ!
なんならタダでも大丈夫です!」
「え、いいの?」
「はい!ウチはまだ見習いだから自分の武器を売った事が無いんです!ウチ、自分の腕がどれほどか知りたいんです!だから、たまにでいいので使った感想を教えて下さい!!」
「なら、お言葉に甘えようかな」
「ありがとうございます!ウチ、アマエって言います!
剣持ってくるんで待ってて下さい!」
アマエはするや否や奥に戻って行った。
(あの子も武器作るんだ…人は見かけによらないな)
「お待たせしました!これを是非使ってください!」
アマエが持ってきた剣を受け取ると両刃の片手剣で振るには丁度いい長さと重さだった。
「ありがとう。でも本当にいいの?お金貰わなくて」
「はい!父から一人前になったら、客に売れって言われてるから逆に売ったら、ウチが怒られちゃいます」
あはは、と笑いながらアマエは頭をかいた。
「わかったよ、じゃあ、今度感想言いにまた来るね」
「はい!待ってます!」
こうして優は新しい剣を無事手に入れた。