13.忠告
アマエから剣を貰って2週間が過ぎた。
その間に優のランクはFランクからEランカに上がった。
いくらFランクからEランクでも2週間でランクが上がるのは異常だった。
優は討伐系クエスト以外にもみんなが受けないようなお使い系・採取系のクエストも満遍なくこなしていった。そのお陰で溜まりに溜まっていたクエストが消化されてランクが上がった。
誰も受けないクエストを進んで受けた事により冒険者ギルドは優の事を好ましく思っていたが、そのかわり一部の冒険者からは危険な事を避けてランクを上げた事であまり良い印象を持たれてなかった。
Fランクに上がった事で討伐系のクエストが多くなっていた。
(言われっぱなしも癪だし、これからは討伐系のクエストをメインでこなすか)
「これお願いします」
「分かりました。最近、バルバラ大森林ではゴブリンの上位種が奥に行かなくても出てきています。お気をつけてください」
「はい、ありがとうございます。…!」
「?どうかしましたか」
「いえ、何でもないです。では行ってきますね」
ある視線を感じた。
(まただ)
優はアイリスに登録して貰って以来、自分が誰かに見られてる事を感じていた。それも1人じゃなく、何人もの視線だ。
(まっ、何かあったら向こうからアクションを起こしてくるだろ。今はクエストに集中だ)
あまり深く考えないで、バルバラ大森林に向かう為、冒険者ギルドから出た時に後ろから声を掛けられた。
「よう。お前バルバラ大森林に行くんだってな」
声を掛けてきたのは登録した時に絡んできたブローガルだった。
何が面白いのかニヤニヤした顔でコチラを見ていた。
「そうだけど、アンタには関係ないでしょ」
「そう、怖い顔すんなよ。あん時は俺が悪かったって」
「…で、何か用?謝るだけなら俺はもう行くよ」
「待てって。さっきも行ったが、お前バルバラ大森林に行くんだろう?あそこは今ゴブリンの上位種が出て低ランクの冒険者が入るには危ないぜ」
「生憎だけど、ゴブリンの上位種程度に遅れは取らないよ」
「なら良いけどよ。せいぜい気をつけろよ、冒険者はいつ何処で死んでもねぇ、職業だ。もし誰も見てねぇ場所で死体が見つかっても、魔物の仕業って処理されるからよ、先輩冒険者からの有難い忠告だ」
「……。ご忠告どうも」
そう言ってブローガルは冒険者ギルドの中に入って行った。
(何だアイツ。本当に忠告したかっただけか?)
薄気味悪かったが、気にしないでバルバラ大森林に向かった。
今回はトレントという木に擬態する魔物を討伐するクエストだ。
トーラムに来てからバルバラ大森林には何回か入ったが、やはりゴブリンの上位種が奥まで入らなくても出てきている。
優は簡単に倒せるからこの問題を軽視していた。
(上位種って言っても所詮はゴブリンだしアイリスさんも心配しすぎたよな)
そう思いながら、出てきた魔物を斬り伏せながらトレントが出る場所まで進んだ。
「これで、終わり!!」
魔力糸で辺りを探知して次々とトレントを狩り、今日の狩り分を終えた。
最後に辺りを魔力糸で警戒したら優を囲むようにさて人が近づいてくるのを探知した。
近づいて来るのは全部で6人だった。
(コイツら盗賊か?)
優は判断できなかった為、わざと隙を作った。これで襲われたら盗賊、襲われなかったら無視すると決めた。
(俺を包囲して近づいてきてるって時点で怪しさ満点だけどな)
案の定、隙を見せたら後ろ側の奴らが襲ってきた。
連携もクソも無い攻撃で容易く避けられた。
そして、襲ってきた連中を確認すると見覚えのある奴がその中に混じっていた。
「お前…」
「よう!ガキ久しぶりだな!前はお前が不意打ちしたからよ、今度は俺が不意打ちしてやったぜ」
ソイツは以前、優が装備を奪った盗賊だった。
「甘ちゃんのお前がまだ生きてるなんて運がいいな」
「おい、お喋りはそこまでにしろ。このガキのせいでコッチは装備を全部奪われたんだぞ。舐めた真似しやがって」
あの時無力化した盗賊の2人と3人がいた。そう1人はまだ茂みに隠れていたが、魔力糸で探知出来る優にはバレバレだった。
「ガキ、俺達の装備はどうした」
「売ったよ。大したお金にもならなかったし、おじさん達よくそれで今まで盗賊なんてやってこれたね」
「あ?何だとガキが!舐めやがって!!」
(コイツらと会った場所はここから遠い…何でピンポイントで俺の居場所がわかったんだ)
「それにしてもよく俺の場所がわかったね」
聞いても無駄だと思ったが、聞いたらアッサリと答えてくれた。
「へっ、お前同じ冒険者なのに案外嫌われてんだな。お前がここに来る事を快く教えてくれた奴がいたぜ」
「それってそこに隠れてる奴の事?」
そう言って優は茂みを指差した。
「なっ」
盗賊達は驚いていたが、無視して声を掛けた。
「出て来いよ。そこにいるのは分かってるよ、ブローガル」
「よく俺だとわかったな」
「あんな話しといてバレないと思ったのかよ」
「チッ、本当にムカつくガキだな」
「で、何でこんな事する」
「決まってんだろうがッ!よくもあん時は恥かかせやがって!!」
(それだけの理由かよ…)
「それで盗賊まで組んでまでどうする気だ。言い逃れ出来ないぞ」
「は、コッチは6人だぞ。テメェ1人でどうにかなるわけねぇだろがッ!!」
「アンタ俺に忠告したよな誰にも見られなければ魔物の仕業って事で処理されるって」
「おい、ブローガル。もうコイツぶっ殺しても良いだろ!?コッチはもう我慢の限界なんだよ!」
「お前らって馬鹿だよな。殺す目的なら長々と話すなよ」
優は話してる間、魔力を練って解放した。
魔法を発動した瞬間、いくつもの太い雷が優を中心に暴れまわり、あたり一帯を雷が呑み込んだ。
魔法が終わるとそこには焦げた死体しか残ってなかった。
「ど、ど…う……じて、詠…しょうも……無しに、魔法が……」
死んだと思ってたブローガルが呻くように呟いた。
起きようとしたら炭化して手足がボロボロと崩れて起き上がれなかった。
「覚えて満足して終わってるお前と一緒にするな」
「ヂク……ショ…ウ」
「ふぅ、なんか疲れたな…今日はもう戻るか」
トーラムに戻ろうとした時、
「ハームドの時の模擬戦と言い!今の無詠唱の魔法と言い凄いね!」
と、6人の死体がある場所とは思えない明るい声が聞こえてきた。




