一話 石暦雨流
一年?一日も待たせないよ!(ここから進むのかは不明)
新規で書いたから楽しんでいってね!
【放棄宣言】が空白の世界でアナウンスされている時、止まった時間の中で禁止道具の主は今しがた放棄された新規の世界へと訪れていた。
そこは世界と言うのにはおこがましい程小さく、辛うじて都市と呼べる程度の小さな世界だった。空は黒く光はない、建ち並ぶ建造物には室内灯すら無いのか深夜の様だ、人も居ないし異形も居ない。
ここまで杜撰な世界は中々見ないものだと感心しながら散策を始める。
周囲を見渡しながら住民を探していると止まった時間がようやく動き出す。
時間を早送りしたかの様に建造物は崩れて砂のような粒子となり空へ舞う、黒い空は昇り始める太陽に照らされ青い空へと姿を変え、あっという間に更地になった大地からは大小様々な草花が生え始める。
そして瞬きする間に草原の完成だった。
無論、空白の世界に統合されただけではこんな事はあり得ない、恐らくはここの元管理者が意図的に制限を掛けていたのだろう、でなければこんな事象は起きるはずがないからだ。
そんな考察をしながら完成した草原を見渡す、先程までより遥かに広い草原が視界を満たした。
そんな草原の中にちょこんと異物もとい人影が何やらブツブツと独り言を呟いているのが見える、黒髪のウルフヘアに着崩した学ラン、それだけ見れば中学生にも見えるが推定年齢十八、九でコスプレ感満載で顔は悪くはないが目の据わった男だった。
ゆっくりと近づきこちらに気づくまで観察しよう。そう考え距離にして五メートルほど近づいたところで舐めるような視線を感じる。
その男はニタニタとニヤけながらこちらの頭からつま先をまじまじと見つめ、最後に胸へと目を移しため息を吐いた。
それを見た瞬間に不快感が体を満たす。
(性別も感情も設定されていない筈なのに)
そんな事思いながら男を見ていると不快感が体を更に巡る。
これ以上は耐えられないと思い口を開く
「視線が気持ち悪いのだけど」
これが約三十年ぶりの言葉だった。
それはともかく眼前の男は何やら唖然としている、先程までの不愉快な視線は消え珍しいものを見るような目でこちらを伺っている。
「……そんな事を言われたのは久しぶりだな、俺が誰か知らないのか?」
暫くの静寂の後、開口一番でそんな事を言うと左手に小さな炎を纏わせてこれ見よがしに見せつける。
なるほど異能持ちだったのかと小さく納得する。数こそ多くはないがときどき異能を持ったことで増長している空白の世界への移民者が居るのだ。
大半は異能持ちが有り触れているこの世界の現実を知り丸くなるのだが、問題は知った上でそれを認めない者たちだ。
そういった者たちに禁止道具を占有されると目も当てられないほど回収が困難になるのだ。危険の芽は早めに潰してしまおう、前者であるなら見逃して後者なら監視をしなけれないけない。
「ひれ伏せ、今ならお前の顔に免じて許してやる」
その顔は酷く下卑ていて修正できないレベルに居るのではないか、と疑わずにはいられない。
しかしそれでも前者であれと思い懐に手を入れる。傍目から見ると手首から先が消えているように視えるが、これは魔法の一種で"収納術式"と言うらしい。理解さえ出来れば誰にでも使える技能だ。
自分の異能に絶対の自信を持ち、ひれ伏すのを今か今かと待ち続けるこの男には"収納術式"すらも見えないのだろう。
そんな事は無視して"収納術式"内から一冊の本を取り出す。高さ四十センチ幅二十五センチで表紙は黒く著者もタイトルもない広辞苑の様な厚みのある巨大な本である。
この本の名を"目録"という、こんな見た目でも禁止道具の一つであり回収者が使える唯一の禁止道具でもある。
「君の事は知らないし、ひれ伏す道理もないかな」
そう言うと"目録"の頁捲る。
「おいで、"森羅万象"アナタの力を貸してほしい」
そう呟くと"目録"は淡く光りを放ってコンタクトレンズの様な薄く透明な半円形の物質を出現させた。
回収者は禁止道具を直接使用できない、なぜならば回収者もまた禁止道具であるからだ。
回収者に禁止道具は使えないのは道理である、しかし例外は存在する"目録"だ。
"目録"の権能の一つに禁止道具の呼び出しがある、これは強制ではなく禁止道具の気分一つで成功か失敗か決まると言っても過言ではない。
"目録"が呼び出し禁止道具が協力して始めて発揮する能力だった。
常人にはまず扱えず"目録"が認める者も極めて少ない。
しかし自分達を守護する回収者が力を貸してほしいと願ったら――
結果は"目録"が応え"森羅万象"が力を貸しに現れたのだ。
回収者は"森羅万象"を瞳に付ける。
その瞬間に膨大な数の情報が脳を埋める。
魔剣、聖剣、なまくら、銃器、果ては河原に点在する石ころさえも…
"森羅万象"の権能は神話、幻想、現実に存在するありとあらゆる存在を認知し複製する。万物を知り万物を行使する能力であった。
〇〇
そんな一連の動作を唖然と見つめる男が居た。
俺だ、コンタクトレンズのようなものを取り出して眼に付けたかと思うと灼熱の炎の塊と言うべき剣のようで槍に見える戦鎚の様なナニかを持つ理想の女性。
《レーヴァテイン》
そう聞こえたのだがソレの本質がまるで見えない、そもそも俺以外に異能を使えるはずはないんだ。
俺は選ばれし王、死者の世界の王だった。それがどういうことだ?左手に纏わりつくちっぽけな炎は彼女にぶつけても圧倒的な熱量で押しつぶされて俺の方へと飛んで来かねない。
(俺の異能はちっぽけな異能だったんだ)
「アーハッハッハアァーー、お前も異能を使えたのだな!!相手にとって不足はないぞ!!」
そんな痩せ我慢をして相手を怒らせたら一瞬で消し炭になってしまう。
明らかに俺より高位の異能力者相手に心は萎縮していたが表面はプライドの所為か高慢な態度をとってしまう。
心では中では負けを認めているのにも関わらず言葉を続ける。
「さぁこい、力の差と言うやつを見せてやる!!」
そんな大それた事を圧倒的強者に向かって言う俺は内心ではガタガタと震えていた。
まるで昔と今を表面と内心で裏返したように真逆だった。
眼前の彼女は何かを諦めたかのように《レーヴァテイン》を発露させ俺を焼き尽くしたのだった。
…もし生き残ったならこの美しい世界を旅して、生前得られなかった、ヒトとの繋がりを得るのだと心に決めたのだっだ。
〇〇
驚いた、感情を持たない筈の回収者の素直な感想だった。
レーヴァテイン、神話の魔鳥を燃やし尽くした武器を以ってしても滅ばない存在が眠ったようにスヤスヤと寝息をたてていた。
コイツはもしかして自身と同じ概念存在ではと疑った程だ。
平和そうに眠る男を更に追撃するのは気が引けたのだ、それになんとなくだがこの男は禁庫に仇なす存在では無いと思えてしまう。
労働者を数匹付け監視の後、放置でいいだろう。
〇〇
「姉さん、見知らぬ土地に出たんですがどうしやす?」
石で出来た翼竜が誰かに問う。
「屋敷の外は全く知らん景色だぜ、姉さん」
ソレの追従するように悪魔が声を発する
屋敷ごと移動した彼らの主は静かに口を開く。
「ここが何処だろうと私達の進む先は人間を滅ぼす、ただそれだけだ。」
主の声を聞き屋敷の内部は歓声と喜びで満ち溢れていたのだった。
雨流くんは基本臆病です。
…修正しました。
城→屋敷




