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【未完】空白の世界  作者: くおりあ
回収者
1/8

プロローグ

およそ一年ほど放置してしまいました。

言い訳としてはキャラや設定等をまとめずに書き出したのが最大の失敗だったと反省しています。

修正前とはだいぶ違うので修正前を読んで面白いと思って下さった皆様には大変申し訳無いと謝らせてくだい。


 薄黄色の霧が規則的に並んだ大理石の柱を霞ませる。異様に広く、地面すら無い空間にポツンと建ったパルテノン神殿に酷似したソレは回収者の巣であり、この空間は禁止道具(チートアイテム)を管理する禁庫(きんこ)そのものである。


 禁止道具(チートアイテム)とは叡智ある者がどれほど努力をしても到底手に入らない技術や特異性を持った道具のことであり、この道具の根源とは"そうあってほしい"・"それがあれば"・"そうありたい"などのありふれた願望と妄想から形を持って、時には意思さえ持つ物の総称だ。

 禁庫とはそれら道具を外界に出さないために存在する禁止道具(チートアイテム)で構成された隔離空間の事であり、内部はクラゲのように漂う生命体と無秩序に舞う禁止道具(チートアイテム)が混在し漂う特殊な空間だ。


 その空間の主は特定の姿を持たず、その多くは観測した者の記憶から無作為に選ばれた部位(パーツ)で創られた性別の分からない容姿と最も馴染み深い衣服に身を包んだ同族として現れるらしい――


 先程の世界で回収した禁庫を記した手記を眺めながら透明で艶のあるワーカーを撫でてみる。まるで見てきたように的確な特徴の数々に半ば呆れつつ辺りを見渡す。

 クラゲは労働者(ワーカー)の事を指し、この一見散らかって有るようにみえる禁止道具(チートアイテム)を舞うと書いている。さすがは"無作法者(しんりゃくしゃ)"と褒めるべきだろう。


 あの忌々しい"無作法者(しんりゃくしゃ)"を思い出すだけでも無いはずの感情が震え出す。

 禁庫の封印を部分的に破壊し同胞達(チートアイテム)を外界へ解き放った張本人だ。

 あの時は自身も含め感情や意思すら無い同胞達(チートアイテム)も怒りに我を忘れたのだ。


(決して許さない、見つけ次第八つ裂きにしてやる……)


 そう心に誓い回収者は今日も解き放たれた残り数個の同胞達(チートアイテム)を探しに空白の世界を彷徨うのだった。



 〇〇



 いつもの朝にいつもの暮らし、何の変哲もない日のはずだった。

 突如として起こった地震が陽気な朝を消し飛ばしたのだ、しかし揺れが大きいにもかかわらず辺りの物は揺れる気配もなく、落下する気配もない、更に誰一人として身動きがとれないのだ。まるで時間が止まった様な景色に皆一様に困惑する。

 その時すべての空白の世界の住人に告げられる。

 《神による世界の管理権の放棄を確認しました。》


 空白の世界の住人、つまり彼らの有している特権【放棄宣言】が発令されたのである。

【放棄宣言】とは神々が管理をしている世界を放棄した際に空白の世界にのみアナウンスされる声だ。

 この声は百年に一度あるかないかというものだ、しかし今回は異常と言う他ない事態である。


 この揺れは世界を受け入れるスペースのようなものを確保しているのだろう。ならば異常はそれではなく声そのものだ。

 《神による世界の管理権の放棄を確認しました。》


 再び鳴り響くアナウンス、こんなことは一度としてなかった。

【放棄宣言】が複数回に渡り鳴り響くなんてあり得ないのだ、百年に一度の【放棄宣言】が一日にそれも連続してアナウンスされているのだから――


 それから二十数回に渡ってアナウンスは続けられ、止まった時間が動き出したのだった。



 〇〇



 人工物のない草原で穏やかな風と微かに香る緑の匂い、草花が風で小さくサァと揺れそれを照らす太陽の中、俺こと石暦 雨流(コクレキ ウリュウ)は困惑していた。


 何の変哲もない家庭に生まれて甘やかされて育ち、あまり評判の良くない中学で三年になったある日、ガラのあまりよろしくない新一年に目を付けられたのが始まりだった。


「ねぇセンパイ、さっきからオレたちのこと見て何かようなの?」


 俺から見ても二年も下の小学生上がりなんかに舐められるわけにもいかないので少し強めの態度で言い返した。


「み、みてねぇし…」


 毅然とした態度ではっきりと答えることに成功したのだが、それを聞いた新一年は俺の方へ歩いてくると可愛らしく両手をポケットへ入れて中腰になり上目遣いで俺を見つめた。


 それに付き従うように数名の新一年達が俺を囲み始めた。

 こうなってしまえば逃げられない、逃げるつもりも無いと武者震いする体を抑えて中腰で見つめる新一年の出方を伺う。


「チューガクに入ったら目があったら即ケンカなんでしょ」


 新一年は見つめながらそんなことを言い、周りは『そうだ』なんて煽り始める。

 そんな時俺を囲んだ内の誰かが俺の足を払ったのだ。俺はそのまま前に倒れて見つめていた新一年の額に顔面をぶつけたのである。


 そこからは想像に難くない、額をぶつけた新一年は額を赤く腫らして、俺は鼻から血がボタボタと滴って蹲っている。それを見た他数名の新一年の仲間たちは一方的に俺を殴る蹴るをしていた。


 意識が遠ざかる瞬間に渾身の一撃とばかりに新一年の教科書がたっぷりと入ったカバンで後頭部を殴り付けられる。

 首の後ろが熱い、加減の知らない小学生上がりの新一年はそれが致命傷だと気づかずに尚も殴る蹴るを続けるのだった――



 目が覚めるとそこは暗い街だった、街灯はなく建物も暗い。

 空を見上げても星はなく雲もない、風も吹かず只々暗い街が目の前に広がっていたのだ。


「ど、どこだここ…」


 俺はさっきまで新一年と勇敢に戦い、接戦の末に引き分けた筈だ、そして意識を失うと…

 ここまでは良い、目覚めた先が医務室でもなく家でもなく街、人もいないし訳がわからない。


 数分の間フリーズしたが不屈の精神で探索を開始する。

 暗い街での探索には明かりが欲しい、そう思いながら体を(まさぐ)る。

 しかしそんなもの持ち合わせている訳もない。

 諦めかけたその時、右手が淡く赤く光った。

 少し熱を持ったその光は俺の意思で光っていることに気づきダメ元で操作を試みる。

 腕から煙が上がり熱量を増してメラメラと燃え立つそれは炎だった。


「ヒ、ヒィッ!!何っなにこれ!!と、止めないと!!」


 そんな凛々しい雄叫びを上げながら炎を操る俺、そんな俺の脳内に声が響く。

(「ガシッボカッ アナタは死んだ」)


 そんな誰かに怒られそうな声が脳内に響く、俺は冷静に炎を消し辺りを見渡す声の発生源は存在しなかった。

 何の気なしに頭に言葉を浮かべてみる。

(「きさま!見ているなッ!」)

 これまた怒られそうな返しをしてみる、まぁ脳内だからセーフだよね。などと考えていると(「知っていたのか、アナタに火の力を与えた」)と犯人が名乗り出たのだ。

(「なぜそんなことを?」)

 脳内なら極めて冷静で毅然とした態度の俺はそう返す。

(「この世界の主役はアナタなんだ、なら特別な力がいるだろ?」)

(「俺が主役?どういうことだ?」)

(「アナタの全てを是とする世界それがこの死後の世界だ。アナタは王になったんだよ」)

 死後の世界?なら俺は死んだのか?

 すべて理解した時、思考が飛んだ。



「ッ!う、げぇ、おえ...」


 ビチャビチャと粘液が落ちる音がした。

 自分があっけなく死んだと言う事実はあまりにも衝撃的だった。



 少し胃酸と涙が出たが冷静に受け止めることに成功した。

 そして何事もなかったように話を続ける。

(「王ってのは何をするんだ?」)

 少し間をおき、待っていたように声は話し始める。


 要約するとこうだ、俺はこの世界で王となり民衆の頂点へと立ったのだ。そして肝心の民衆は会話の途中で(「民を出そう」)と言って人が湧き出たのだ、少し驚いたが大したことではなかった。その民達は俺を見ると歓喜の声を上げ一斉に平伏するのだ。


 そして最後に声は「(私を飽きさせなければこの楽園で永久に住めるだろう)」と締めくくったのだった――






 それから数十年が経った。気に食わない民が居れば燃し、気に入った女を(あさ)った。

 そうして怠惰に過ごしても体型は変わらず見た目も十八そこそこで止まった、暴動が起きた試しはなく只々俺を是とする世界に酔っていた。


 そんなある日のことだ、(「飽きた」)という言葉とともに世界が暗転する。

 瞬間的に民は全て消え、城も風化し消え去った、時間を早めたように太陽が昇りグングンと草花が生え、一陣の風が吹きさって行った。

 俺は一人ポツンと立ちすくんで居た。そこは暗い街ではなく草原が目の前に広がっていたのだ。


「どうなってやがんだ…」


 そう言って呆然と草原を眺めて生まれて死んだ経緯を思い出す。

 死者の世界が消えて尚もここに居る存在を、つまりは俺は何という存在なんだ。

 くだらない事を考える余裕のある内はピンチではないと持論を展開し急いでくだらないことを思い浮かべ続ける事はや数分。

 眼の前に可愛い子が現れないか、もし現れたらどんな服でどんな体型で、そんな妄想をしていると眼の前の空気が少し揺らいだ気がする。


 気のせいかと思い目を凝らすと揺れた空気が少しずつヒトガタになり始める。

 それを唖然と眺めて居るとソレは完全に人の姿になっていた。


 黒く煌めく長髪が舞いこちらを向いた。その目は眠たそうにした様なおとなしい印象を受ける。ルビーのように紅い瞳は反対に強い意志を感じさせる。髪をかきあげるように左手で髪をおさえて軽く揺れる白のワンピースを意に介さずにこちらに歩み寄る。


 理想の女性がそこに居た。

 身長は平均的でワンピースの上から分かる胸の大きさこそ無いに等しいが概ね理想の女性だ。

 その女性は俺の数歩前まで来てその桜色の唇を動かす。


「視線が気持ち悪いのだけど」


 理想の女性は美しい声でそう言った。

 全てが俺を是とする世界に長く生きた俺の予想を遥かに超えたファーストコンタクトだった。


誤字脱字はかなり多いほうなので(気をつけてはいますが)見逃してもらうか感想でボロカス言ってあげてください。

メンタルが耐える限りがんばります!

そしてお待たせしましたプロローグ完成です。

修正しつつの投稿になりますので一章は少し待っていただければと(´;ω;`)

今度は一年も待たせませんのでどうか応援お願いします!

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