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作者転生~なんか設定と違うんですけど!~  作者: 膝関節の痛み
第2章 悪役令嬢について

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おちょくるヤツ

 パトリツィアは慣れない道具に苦戦しながら、地面を掘り起こしている。

 初めての作業が新鮮なのか、鍛錬が嬉しいのか、すごく楽しそうだ。

 元気だなあ。

 私の方は、朝から石はがしをして腿と腕がけっこうきてる感じだ。


 とりあえず休憩。

 パトリツィアに疲れたら休むように言って、私は飲み物を取りに家に戻る。

 玄関の脇には護衛のお姉さんが立っていて、パトリツィアをさりげなく見守っている。

 会釈して家に入ったところで気づいた。

 どこかで見たと思ったら、妹ちゃんに拉致られたときにいたクールメイドさんだ。

 服が全然違うから分からなかったよ。

 メイドに諜報に護衛までこなすのか。ただ者じゃないな。

 そうだ。ちょっとパトリツィアをどうしたらいいか訊いてみようかな。

 客観的な意見をくれそうな気がする。


 キッチンでお茶を2人分淹れ、庭に戻る。

 護衛さんを木の下のテーブルに誘ったが、任務中だと断られた。

 お茶を勧めたけど、任務中だと断られた。

 真面目かよ!


 でも話は聞きたいので、玄関前の石段に座る。

 何この子はしたないみたいな目で見られたけど、ここは私んちですう。何やってもいいんですう。


「どう思います? パトリツィア」

「どうとは、何がでしょうか」


 お姉さんはため息をつきながら応じた。

 視線はパトリツィアから外さないままだ。


「パトリツィアのキャラクターですよ。喋り方とか。

 さすがにあの師匠、ラモナ・フラスカのマネはまずいと思うんですよ。

 学園でいじめられそうで」

「いじめられはしないでしょうね、パンツィーリ家ですから」

「そうなんですか。じゃあ、これでもいいのか……」

「まあ、陰では笑いものになるでしょうが」

「だめじゃん!」

「ええ。よろしくありませんね」

「えっと、お姉さんからそれとなく注意してもらうとかは」

「コルリです。私はナンチャッテ様の姉ではございません」

「ナンチャーラです。おちょくってます?」

「失礼致しました。『なんちゃって令嬢』と覚えたものですから」

「確かにそうかもしんないけど!」

「先ほどのご提案ですが、私はただの護衛兼メイドです。

 パトリツィア様にご忠告できる立場にはございません」

「スルーした!」


 落ち着こう。

 護衛さん、えっとコルリさんと戦っているわけじゃない。


「人をあてにする前に、まずご自分でなんとかなさるべきなのでは?

 侯爵様がおっしゃったあなたのお仕事は、そういうことではなかったのですか?」

「そのお仕事として協力をお願いしたんですが」

「左様でしたか。雑談かと思いました。お断りします」

「知ってました!」


 もう君には頼まん!

 言われなくとも、仕事として受けたからにはちゃんとやるに決まってます!

 それに、パトリツィアとは友だちになっちゃったから、仕事以上に真剣なんだからね。

 貴族として未熟で悪意に触れたことのない友だちが、悪意のターゲットになる危険性を放置するわけにはいかないじゃない。


「いいです。自分でやります」

「それは何より。

 一言付け加えさせていただくなら、侯爵様にお話は通しておいた方がよろしいかと存じます」

「あ、はい」


 うん。前世も現世も報連相は大事。

 そこはちゃんとやる。


「まあ、その前に本日のことは私がご報告するのでナンチャッ、ラ様のご意見が通るかは分かりませんが」

「ナンチャッテって言いかけたよね?!

 あと、何でそういうこと言うかな? せっかくやる気になったのに!」

「単なる情報提供でございますが、何かお気に触りました?

 申し訳ありません、生憎都会育ちなもので辺境のマナーは存じ上げないのです」

「いちいちディスるのやめて!私何かした?」

「いえ、特に。

 私の趣味でございます」

「趣味?」

「人をからかうことでございます」

「堂々と言い切りやがった!」

「お静かに願います」

「誰のせいだよ!」

「それより、パトリツィア様がお疲れのご様子ですが」

「あ」


 ごめんなさい、忘れてました。

 変人クールメイド護衛が悪い。

 私は慌ててパトリツィアに駆け寄る。


「ビアンカー、頑張りましたー」


 土で汚れた顔で、パトリツィアはにっこりと笑った。

 素に戻ってくれないかなあ。

 かわいいんだけどなあ。


 見れば、畑予定地の半分以上が掘り起こされていた。えらい!


「すごい! もうこんなに進んだんだね!

 そんなに頑張らなくてもよかったのに」

「それはダメですー。

 私が壊したところだからー、ちゃんとやらなきゃならないのですー」

「ここまでやってくれれば十分だよ!」

「でもー」


 本人は午後のマナーの勉強を回避したそうだが、そうはいかない。

 軽くお茶して、ちゃんとお昼までには帰します。


「ありがとう、パトリツィア。

 とりあえず、顔と手を洗おうか。

 私はお茶の準備するね。

 その後でちょっとお話ししよう」


 私はパトリツィアの手を引っ張って、家へ向かう。


「これからお茶にしますが、コルリさんは要らないですよね」

「え? いただきますが?」

「任務中は飲まないんじゃなかったっけ⁉」

「は?」


 付き合っていられないので家に入り、顔と手を洗い、土がついた服を着替え、私たちはテーブルに着いた。

 コルリさんが着替えを用意していたので、パトリツィアも野暮ったい作業着から貴族令嬢の姿に戻っている。


 働いた後なので、水出しのお茶を出した。


「冷えていないのですね」


 一口飲んで、コルリさんが文句を言って小さく詠唱した。

 パトリツィアのカップにポチャンと氷が落ちた。


「氷魔法!?」

「アイスキューブです。氷魔法、ご存じありませんか?」

「そのくらい知ってます」


 うそです。アイスキューブは知らなかった。

 コルリさんのドヤ顔が悔しいけど、ちょっとびっくりした。


 もちろん氷魔法自体は知ってる。

 水魔法の上位魔法だ。そう設定した。

 ただ、攻撃魔法が禁止されていない実家の領地でも、氷魔法の使い手はいなかった。

 200年前のRPGの世界では基本魔法だったアイスバレットもアイスランスも、この世界では設定していなかったから、残っているとは思わなかったけど、生活魔法のひとつとして生き残ってくれていたのか。

 生活魔法の詳細とかあんまし考えなかったのが良かったのかもしれない。

 何にせよ結果オーライだ。


 コルリさんは続いて自分のカップにも氷を落とし、軽くゆすった後美味しそうに飲んだ。


「あの、私のは?」

「え? ナンチャーラ様もご入用ですか?」

「……はい。お願いします」

「失礼しました。ご存じとのことなのでご自分でお出来になるかと思っていました」


 できねーよ! こちとらモブ中のモブだぞ!

 魔力なんかせいぜいこぶし大のファイアボール出せるくらいしかできねーんだよ!

 あ、氷ありがとうございます。冷たくて美味しいです。


 さて、あまり時間もないことだし、美味しいお茶で一息ついたところでカテキョのバイトでもしましょうか。

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