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-BLACK MARIA-  作者: 高砂イサミ
interval
15/66

to December 6 (Thu.)


 12月3日、月曜日。

 都内某所――


 とあるショッピングモールで悲鳴が上がった。

 3階まで吹き抜けになっているエントランスホール。その中央付近に、1人の壮年男性が頭から血を流して倒れていた。周囲は彼の介抱をする者やら救急車を呼ぶ者やらであわただしく、その外側には人垣ができている。

「……なあ。あのじいさん、どっから落ちてきた?」

 人垣の中で、学生風の若者がつぶやいた。横でその友人が顔を仰向けた。

 各階のバルコニーから、ここは少々離れすぎている。

「わかんね……」

「真上から来たよな?」

「やっぱそう見えたよな――って、おい。あれなんだ?」

 つられて見上げた若者も、それをみつけた。

 1枚の白紙がひらひらと落ちてくる。たまたま手近だったため、彼はひょいとそれをつかまえた。


  “HEXE”


 紙にはそれだけ印字されていた。もう1人もそれを見て、顔をしかめる。

「なんだこりゃ」

「ちょっと待て、辞書アプリで……」

「英和で出ねーじゃん。ネット検索にしてみろよ」

「あ。出た。ドイツ語だ」

「なになに……読みは、“ヘクセ”か“ヘクサ”ってとこか。意味は……」

「――“魔女”?」

 2人は目を見交わした。

「気味悪ぃな」

「どうする、これ」

「どうするったって……」

 そこへ救急と警察が到着した。わけもなくあわてた彼は、紙を丸めてゴミ箱に放り込み、そそくさとその場を後にした。



            * * * * *



 12月6日、木曜日。

 関東地方の天候は快晴。久々に日差しが暖かかった。

 が――一部で、白いものが空を舞う地域もあった。

「あれ、何? ……紙?」

 風に乗ってぱらぱらと落ちてくる紙にはすべて同じ文字があった。


  “HEXE”


 これだけならイタズラにも近い事件だ。しかし、とある大学生と主婦がネット上にコメントしたことで、話題に上り始めた。



 『2、3日前、元議員絡みの事件のときに同じもの見たんだけど……

  なんでだ?』


 『2、3日? 先週の土曜日ではないのでしょうか?』



 この時点で、マイクスタンドの事件と転落事故の両件の捜査はまったく進展していなかった。加えて、どちらも“物理的”につじつまが合わせられないということで、少しずつHEXEの名は広まっていった。


 不可能犯罪を行う“魔女”がいる、と。



            * * * * *



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